
賃貸管理を受託し「高い稼働率を維持する」ことができると、オーナーに対してはもっとも高い貢献をしていると言えます。
高い稼働率とは地域によって異なりますが、95%以上を維持していると「高い稼働率」と評価していいのではないでしょうか。
ではこのコンセプトをオーナーにどのように訴えるのがよいのでしょう?具体的な目標として提案することが望ましい次の2つを掲げてみます。
2.空室を早く埋める
賃貸管理で95%の稼働率を維持する2つの方法
退去を防ぐ
稼働率を高く維持するには「退去を防ぐ」ことがまず考えられる目標です。
新築時に満室になった物件がその後も退去がまったくなければ、稼働率は100%になり目標達成することは簡単です。
「退去を防ぐ」には賃貸管理の日常業務において、その「退去を防ぐ」意思を込めて業務を組み立て実践できるかが重要です。
もし退去を防ごうとする意志にもとづいた管理メニューが構成されていると、その意思をオーナーに理解されるような表現にするべきであり、その表現をする方法を「コンセプトメイク」と言います。
入居審査のコンセプト
たとえば「入居募集」の中にある入居審査では、退去を防ぐ意思を込めるとどのような入居審査になるでしょう。
『ルールが守れずほかの入居者に迷惑をかけると予想される場合は入居を認めません。』これが入居審査の1つの基準とします。
一般的には保証会社を利用するケースが多く、家賃の支払い能力だけで入居を認めています。
しかし「共同生活のルールが守れるか」といった視点で審査をしないでいると、ルールを守らない人が原因となって、ルールを守る善良な入居者が退去してしまうといった現象が起きます。
入居審査をきびしくすることにより「退去を防ぐ」という意思を、日常の業務プロセスに込めることができるのです。
滞納管理のコンセプト
「滞納管理」にも退去を防ぐ意思を込めることが可能です。
やむを得ない事情で家賃を滞納するケースがなかにはあります。
しかし滞納督促を保証会社に委託している場合は特殊な事情に配慮することはありません。
ときには行き過ぎた督促行為になってしまい、ほかの入居者に不快感や恐怖感を与える恐れがあります。
督促を自社でおこなっている場合は、特殊事情のある入居者には適切な対応が可能であり、行き過ぎた督促行為が及ぼすほかの入居者への影響を少なくすることが可能です。
このことは不安感や恐怖感を感じる入居者が、将来的な「退去予備軍」になってしまうことを防ぐ効果を生むのです。
これも「防げる退去を起こさせない」というコンセプトが働いていると言えるでしょう。
契約更新のコンセプト
契約終了時の「合意更新」にも退去を防ごうとする意志を込めることができます。
2年に1度の更新契約を郵便だけにしないで、入居者をもてなすイベントとして捉えます。
更新手続きにおいて不満や要望を入居者からしっかり聞く機会を設けます。
そして更新契約に反映させることにより、退去動機を減らし住みやすい環境をつくっていく可能性が高まるのです。
事務的に終わらせてしまうことの多い更新手続きは、入居者との人間関係を維持し長期入居につなげる絶好の機会と捉えましょう。
トラブル・クレーム対応のコンセプト
トラブルやクレームの発生は管理会社にとってもオーナーにとっても頭の痛いことです。
無難に済ませたいという意識になりがちで、対応が悪くなってしまうと逆にトラブルが増幅し、入居者の退去にまで発展することもあります。
トラブルやクレームの原因をしっかりと探り、トラブルのおきない居住環境をつくれるようにフィードバックさせ、ハード面・ソフト面での改善点を見いだします。
トラブル・クレームの発生は「ピンチはチャンス」と捉え、前向きな姿勢で対応するよう努めることも退去を防止する効果につながるでしょう。
解約処理のコンセプト
入居者からの契約解約・退去通知は単に受け取るだけでなく、必ず解約の理由を確認しましよう。
もしも建物設備の不備やほかの入居者に原因があるなら、その原因を解消し退去を取りやめるよう説得します。
説得ができないとしても同じようなことが原因で、ほかにも退去者を生んでしまうようなことがあってはいけません。
退去理由はあいまいにせず、真実を把握するように努める必要があるのです。
建物・設備メンテナンスのコンセプト
建物や設備のメンテナンスは「必要になったらやる」というスタンスでいることが多いですが、たとえば建物周囲の清掃は週に1回以上実施することが望ましいです。
定期的に清掃し常に綺麗な状態を維持することが、良好な住環境を維持するために必要なことです。
設備のメンテナンスは定期点検を必ず実施し、トラブルを未然に防ぐスタンスでいることが重要です。
万が一設備の故障により、入居者がわずかな時間でも不便な生活を強いられることは、将来の退去動機につながってしまう恐れもあります。
空室を早く埋める
稼働率を高く維持する2つ目の目標が「空室を早く埋める」つまり空室対策の提案と実践力です。
空室対策にはたくさんのテーマがありますが、ここでは『賃貸管理の付加価値を劇的に高めるコンセプトメイク』で紹介しましたマインドマップから、1つのノウハウを取りあげて説明します。
それはマインドマップにある「解約処理」と「入居募集」の関係です。
空室を一日も早く埋める
空室をできるだけ早く埋めるためには、入居者からの「解約・退去通知」を受取ったら、同時に入居募集を開始します。
やるべき業務フローは次のような流れになります。
・オーナーに解約の報告をし「2か月以内に決める募集案」を説明し了承を得る
・インターネットに情報を登録し募集図面を作成し客付け仲介業者に募集情報を発信
・退去立会いののちにリフォーム業者に原状回復工事を発注し工事期限を指定する
ポイントは解約受付から原状回復工事完了までの日数を最短になるよう管理することです。
こうすることにより「2か月以内に決める募集案」が実践でき、成果はまちがいなく出るはずです。
退去を防ぎ・空室を早く埋める、この2つの目標設定により、オーナーに高い稼働率を提供できる賃貸管理メニューであることが理解されるでしょう。
入居審査のスキルを磨く
入居審査は基本的に「申し込み順」になっています。
空室を早く埋めるために審査をできるだけ早くするのも重要です。
しかしここに問題が実はあります。
審査の内容が十分ではなく、入居してから問題のある入居者であったとしても、賃貸借契約を解約することはできません。
トラブルにより善良な入居者が退去してしまうようでは、早く空室を埋めた意味がなくなってしまいます。
たとえば2番手の入居申込者のほうが属性もよく、人間性としても良好だったということはあり得ることです。
入居審査を厳密におこない、トラブルになりそうな申し込みは断ることも重要であり、早く空室埋めなければならないというプレッシャーのなかで、断ることはかなり難しいことでしょう。
しかし審査のスキルを磨くことにより、断りを決断できるのは「退去を防止する」ことにつながります。
早く決める!を重視せず、早く正しく決める!ことが大切です。