
オーナーとの関係づくりを考えた場合「一般媒介」からスタートする方法があります。
管理会社や仲介会社がオーナーにコンタクトをとるには「お部屋を紹介させてください」と提案するのはごく自然のことであり断るオーナーはいません。
媒介させてもらうことになっても入居者を決められなければ仲介業者の1社でしかなく、賃貸管理までの話に進むことはあり得ません。
媒介により入居者を決め仲介業者としての力を認めてもらったところで、賃貸管理の話を進めていくのです。
そのためには少なくとも3件に1件は決める実績づくりが重要です。
これからご紹介するのは3件に1件、あわよくば2件に1件は決められる3割以上の媒介スキームです。
ポイントは4つあります。
空室対策の提案
一般媒介で物件を預かったとしても現在の賃貸条件や、物件の現状を把握し “再査定” を実施しなければなりません。
そして「2か月以内で決まる条件」を提案します。
オーナーにとっては、賃貸条件を変更し費用のかかる方法の提案は、抵抗感があるかもしれません。
比較的ハードルの低いのは次のような提案です。
・賃料以外の募集条件を緩和する
ハードルの高い提案としては次のようなものもあります。
・プチリフォームを行う
・フルリノベーションを実施する
どの方法を選択するかはオーナーの考え方によりますが、どの提案を採用してくれるにしても「2か月で決めます!」と言い切ってください。
「2か月で決められるだろうか?」と不安になるかもしれませんが、ここは言い切ることが重要です。
そうしないとオーナーは決断できません。
そのためにはこれまでの経験から「2か月以内で決まる条件」を査定してほしいのです。
真剣に考え抜いて条件を絞り出してください。
オーナーにとっても厳しい条件になるかもしれませんが「2か月で決める!」との、強い言葉に心を動かすことでしょう。
そのあとは一所懸命に募集活動に励むことです。
そしてその姿をオーナーにも見てもらいましょう。
結果的には決まらなかったとしても、一所懸命に動いた事実を評価してくれるオーナーは多いはずですし、その行動の結果が社内にノウハウとして蓄積することでしょう。
ノウハウはこのような背水の陣を敷いて取り組むことから蓄積されるものです。
プチリフォームの提案
空室対策の1つとして提案するプチリフォームは「3割以上の媒介実績」を残せる有力な方法です。
空室対策の基本は募集賃料(プライス)と物件の価値(バリュー)のバランスが取れていることです。
もし募集する賃料が重い(高い)ため傾いてしまうなら、バランスを取り物件価値(バリュー)を重く(価値を高く)するか、募集賃料(プライス)を低くしなければなりません。
物件価値(バリュー)を重くする方法としては次のような方法が考えられます。
・リフォームにより生活空間を豊かにする
などがありますができるだけ費用をかけない「プチリフォームの提案」が、オーナーにとっては費用が軽減でき受け入れやすく感じるものです。
具体的な例をあげてみますがどれも内見するお客さまが「オヤ!」と目を引くものですし、あまり費用はかからないものばかりです。
・玄関にコート掛けを設置する
・洗たくパンの上やトイレに棚を設置する
・ドアノブ、水栓金具を新しいものに交換する
お客さまは最初の数秒で判断すると言われます。
安い費用で目を引くアイテムはまだまだたくさんありそうです。
費用の目安は3~4万円を目標にして、アイデアを絞りだしましょう。
そしてプチリフォームの提案をすると同時に「2か月間の専任媒介」をオーナーに掛けあい承諾を得るようにします。
ちなみにこのプチリフォームは現在管理している物件にも使える空室対策であり、原状回復の時に併せて行うことがお勧めです。
フルリノベーションの提案
「リノベーション」という言葉が賃貸業界でも使われるようになりました。
リノベーションは造語であり正式な定義はありませんが、一般的には間取りの変更や設備の交換を含めた “大規模なリフォーム工事” をリノベーションと言っています。
一般媒介で物件を預かりやがて管理受託へとつなげていこうという戦略の中で、必ずしもリノベーションが必要ということではありません。
あくまでもオーナーの意思によるところであり、多額な費用をかけて物件を再生させる必要性がある場合に提案すると考えてください。
まず提案にあたってオーナーの意思を確認しましょう。
・入居を決められる確率
・リノベ投資を回収するための期間
これらについて想定される効果と収益性に期待が持てる場合は、フルリノベーションのプランニングをして提案をします。
その場合、入居者の絞り込み(ターゲッティング)や採算性そして永続性についての評価や検討が大切です。
入居者の絞り込みは、年齢、性別、職業、趣味といった属性を設定し、ターゲットを絞り込むと「自分のために作ったような部屋」により近づき、対象とした入居者には魅力ある物件になります。
しかしそもそも需要が本当にあるのかを考察する必要はあります。
エリアの賃貸需要をよく分析しターゲットを明確に絞れるか検討してください。
採算性については予算設定の考え方として、入居者が負担する賃料の2~3年分の工事費が目安です。
たとえば7万円の賃料が想定できる物件であれば、リノベーション費用は160万円~250万円が望ましい範囲です。
永続性についてはリノベーションの効果が何年持続するか?ですが、4~5年経っても効果があると見込めるのが望ましいです。
サブリースを提案する
管理物件を増やすにはオーナーに対して「付加価値を与える」ことが重要です。
付加価値としてもっとも評価してもらえるのは「高い稼働率」です。
つまり高い入居率を継続させ安定経営が可能になることです。
オーナーとしては計画よりも結果を求めます。
サブリースは結果を約束する方法なので、満室に近い入居率を継続させる自信がある場合には、提案する価値があります。
将来の話として「満室に近い状態にするよう頑張ります」ではなく、来月から「満室時家賃の○○%を空室であっても支払います」と約束するほうが、オーナーに対しては説得力がありシンプルな提案です。
たとえば満室時家賃の80%をオーナーに対して毎月支払い、稼働率が95%であれば差額の15%が管理会社の利益になります。
稼働率が85%に下がったとすると5%は利益であり管理委託の管理料と同等です。
稼働率が80%を割った場合でもオーナーには80%の家賃を支払うため、オーナーは安定経営が可能です。
空室が多くなり80%前後の入居率で波がある状態よりも、安定収入が見込めるサブリースはオーナーにとっての「付加価値」と言えるのです。
この方法は「コインパーキング」や「ストレージ(コンテナ)貸し」等でも使われるスキームで、オーナーのニーズと管理会社の利益を共に実現できるウィンウィンの方法です。
一方サブリースには「運命共存型サブリース」というスキームもあります。
オーナーに支払う家賃と管理会社が入居者から受け取る家賃の差が、家賃の10%を超えた場合には超えた分をオーナーに還元する方法です。
たとえばオーナーには満室家賃の80%の設定であり、稼働率が95%になると差益は15%あるので5%をオーナーに還元します。
逆に稼働率が85%を割り差益が5%に満たない場合は、翌年の借上条件を下げるという方法です。
稼働率を上げることがオーナーにとっても管理会社にとっても、望ましい経営状態をつづけることが可能です。
逆に努力しても稼働率が伸びない時は、互いに辛抱しながら稼働率の改善に努めようとする動機が生まれます。
運命共同体のような関係になるのです。
サブリースは報道などで不信感を持つオーナーがいるかもしれません。
2020年にはサブリース新法が施行され、サブリースが抱えていた問題点がある程度解消できるようになりました。
そのうえで「運命共存型サブリース」の提案は、よりオーナーの信頼を得やすい方法と言えるでしょう。
ただしサブリースの提案では注意喚起しておきたいことがあります。
・空室発生時の免責期間
・原状回復費用の負担
・賃貸経営上必要な費用負担
などについては曖昧にせず明確に定め、オーナーの理解をしっかりいただくことが重要です。