
この記事からは賃貸管理を受託するために行う、オーナーに対するマーケティングがテーマです。
賃貸管理事業を行なっている会社には、マーケティングを意識して実践しているケースは意外と少なく、オーナーとの信頼関係を構築できると、長期で安定したビジネスにしていくことが可能です。
ここでは賃貸管理のマーケティング戦略をお伝えします。
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継続して賃貸管理を増やす誰もやっていない“マーケティング“
管理物件を増やそうとするのはどこの管理会社でも同じです。
どこの会社でもやっているからとくにゴールも決めず、戦略も持たずにただただオーナー訪問を繰り返してはいませんでしょうか。
賃貸管理を増やすならまずゴールを設定すること、そして戦略を立てておかなければ、やみくもな訪問のくり返しに疲れてしまい、管理を増やそうという目標をあきらめてしまいます。
管理物件を増やすことは目的でなく手段でしかありません。
何のために管理物件を増やしたいのか?その目的によって賃貸管理を増やす戦略は変わります。
目的は何か?をまず考えていきましょう。
最終ゴールが賃貸管理か、それとも資産活用提案か
賃貸経営をおこなうオーナーの目的を考えたことがあるでしょうか?
オーナーは賃貸経営をやりたくてやっているというケースは少なく、目的はほかにあることが多いのです。
・将来の相続税対策として
・土地活用の方法の1つとしてアパートを建てた
・親からの相続による土地であり資産として残す目的で土地活用している
・資産形成の一環でありいつまでもアパート経営をするつもりはない
などこれらはオーナーが考えている目的の例ですが、けっして賃貸事業の経営者として今後もやっていきたいと考えているわけではありません。
そのようなオーナーに対して提案することが賃貸管理だけであれば、たとえば土地を売却したいと考えている場合、賃貸中の物件を売却し代替不動産を求めている場合など、オーナーが実現したいと考えている要望に気付かずに終わってしまいます。
賃貸管理会社は賃貸管理をオーナーから受託するばかりがビジネスではなく、オーナーの資産管理・資産形成まで踏み込むことが必要なことであり、相続対策や資産活用提案といった分野が最終ゴールと考えなければならないのです。
オーナー様の生涯価値
ライフタイムバリュー(LTV)という考え方があります。
オーナーとのお付き合いによりオーナーから、全期間にわたってどのくらいの売上収益をあげさせていただけるのかという考え方です。
売上収益をあげさせていただくとは、オーナーに対して管理会社から「価値を提供させていただく」という意味にもなります。
管理会社がオーナーに対してできる価値の提供とは「管理業務の代行」だけではありません。
管理業務だけであれば売上収益は管理料だけになってしまいます。
管理会社が提供できる価値に対する報酬は、仲介手数料・広告料・事務更新手数料・リフォーム工事の粗利益などがすぐ思い浮かびます。
さらに大規模修繕工事の粗利益や不動産売買の仲介手数料、新築工事の紹介料なども考えられます。
これらを平均して「一人当たりオーナーの全期間売上」を計算します、その結果を「オーナーの生涯価値(LTV)」というのです。
単に賃貸管理の受託だけを考えていては、オーナーの生涯価値は過小なものと言えるでしょう。
視野を広げてオーナーの目的を意識することにより、マーケティング戦略が大きく変わることに気づくのではないでしょうか。
たとえば1,000戸に増やすというゴール
「管理戸数を1,000戸にしたい」といった目標を語る賃貸管理会社の経営者は多くいます。
1,000戸を目標としても達成が1年後なのか5年後の話なのかにより戦略は大きく異なり、ゴール設定では時間軸をはっきりと決めなければ戦略を立てることはできません。
1,000戸という目標を立てたとしても達成できずに終わる原因は、ゴールの期限が決まっておらず目標ではなく単なる願望に終わっているからです。
このようなことでは管理戸数が増えるはずはありません。
ゴールを明確に決めること、そしてその次に重要なことは「なぜ!1,000戸なのか?」をつき詰めることです。
1,000戸になった時、会社の業績や経営資源にどのような変化が生じるのでしょうか。
・営業利益、経常利益はどのように変化するか
・他の事業とのシナジー効果は
・人員計画や人材教育の計画はどのように考えなければならないか
これらの変化を見とおすことにより「投資できる限界」を知ることができます。
必要な資金や投ずべき人材と時間など、管理戸数の増加のために投ずる資源のすべてが明らかになります。
ただし『オーナー様の生涯価値』で前述したように「LTVの数字」によって投資できる限界は変わります。
1,000戸管理が願望だけではなく明確な目標となり、会社全体が「達成すべきゴール」を意識する必要があるでしょう。
共に成長できる事業スタイルを目標に
管理戸数の増大は事業規模の増大と同義です。
管理戸数を増やすために重要なことは「ゴールの明確な設定」でした。
そしてそのために投じる経営資源は「オーナー様の生涯価値」から生まれることも理解できました。
そしてオーナーには賃貸経営を行なう本来的な目的があり、その目的に沿った提案をしなければ賃貸管理会社は成り立たないことも理解しました。
つまりオーナーと管理会社はそれぞれの目的に向かっていく「運命共同体」とも言えるのです。
オーナーも管理会社も共に発展し成長することが望ましく、どちらかの負担により一方が成り立つといった事業スタイルでは長つづきしません。
・互いのリスクを軽減する
・持続可能性を重視する
このような考えを自社だけではなく、オーナーの立場にもなって深く追求する姿勢が大切なことです。
委託者と受託者
管理会社はオーナーと「運命共同体」です。
しかしこのような関係性を作るには、管理委託契約における「委託者」と「受託者」という捉え方では限界があります。
委託者と受託者は言い方を変えると「発注者」と「受注者」となり、あたかも上下関係があるかのような意識になりがちです。
しかしそのような意識のままでは「運命共同体」とは言えず、前述したように「どちらかの負担により一方が成り立つといった事業スタイル」になりかねません。
上下関係ではなくパラレルな関係をオーナーと作れるかが重要なポイントです。
そのためには「仕事をいただいている」という意識ではなく、オーナーに対して「価値を提供している」といった意識が必要であり、そう言えるだけのクオリティの高い業務成果が求められることを忘れてはなりません。