
「収納不足に悩んでいませんか?」と展示場でお客さんに聞けば、100%に近い人が「そうなんだよね~」と力強く答えるはずです。
こちらもその回答を期待して聞くわけですが、そんな会話をするからにはその先の展開をしっかり考えておく必要があります。
ただ、それを口頭で伝えるのは至難の業。展示場を持っていなければ仕方がありませんが、会社に展示場があるのならば、まずはしっかりとした戦略的な収納設計をしなくてはなりません。
大手のハウスメーカーに行っても、収納の提案が雑で実につまらないケースをよく見かけます。主寝室のWICを覗くと、ワンピースやパジャマなどが3~4着ハンガーに吊り下げられているだけといった感じです。
これでは見る人もがっかりです。どうせやるならしっかりと作りこみをしましょう。
玄関脇収納の説明をしっかりと
この展示場の玄関脇収納はいろいろと物が詰まっていますね。展示場開設当初は何も置いていなかったのですが、徐々に備品を揃えてここまで持ってきた経緯があります。
靴は良いのですが、そのほかにも非常持ち出し袋、傘、長靴、脚立とすべては何気ないものなのですが【一戸建てを購入したら買いそう】【置き場に困る】ものです。
賃貸マンションに住んでいる人が脚立を持っている比率は低いと推測されます。しかし、一戸建てを購入すると脚立が必要な場面が増えるので「脚立でも買うか?」となり、その結果として置き場に困ることになるでしょう。
だからこそ、この玄関脇収納の説明はお客さんにとって重要なのですが、営業マンはもちろんのことお客さんもあっさりと通過してしまう場所になっているのが現実です。
他社と差別化を図るならば、ここをもっと力を入れて説明すべきでしょう。是非チャレンジして下さい。
主寝室のWICも設計と説明をしっかり
帽子を趣味にしている人も多いでしょう。お年寄りになると防寒対策で帽子を被る人も多いです。ところが、その帽子の保管場所をしっかり確保している人がどれだけいるかと言えば、実に怪しいものとなるはずです。
眼鏡も同じく。年齢が高めになればなるほど老眼鏡も含めて多数の眼鏡を持っている可能性が高くなります。若年層でもサングラスなどを含めれば多数の眼鏡を持っているかもしれません。
実際もこの展示場への来場者が、この場所で眼鏡のディスプレイの前を通りかかる時、営業マンには次のように話すように指示を出しています。
「眼鏡をかけていらっしゃいますが、何本かお持ちですか?」
1本だけという人はほぼいないのですが、ここでこのように聞くとこんな反応が返ってくることがよくあります。
「眼鏡はサングラスや老眼鏡も含めて7~8本あるんだけど、置き場に困るのよ。うちも適当にあちらこちらにおいてある感じで不便なんだよね」
割合でいくと眼鏡をかけている来場者の8人に一人程度でしょうか。この程度の割合で大きな賛同を示す人がいるのです。この人にとっては、今見学している展示場が自分が困っていることを、解決した結果を提示しているわけです。これが満足度向上につながり、受注に近づくのです。
この写真には写っていませんが、ネクタイやベルトなども同じような理屈が当てはまります。ネクタイに対する反応もいいですね。若くてもたくさん持っている人は多いですから、その置き場に困っていると考えられるからです。
また、ネクタイだけではありませんが、収納の極意は【しまいやすくて出しやすい】に尽きるのです。しまうだけならば、ただ大きなスペースを取ればいいだけのこと。しかし、そんなことをしたら、今度は物を出すに一苦労します。
新築営業の方だけではなく不動産営業の方にもお話ししたいのですが、中古住宅販売の時に大事なスキルになるのが収納の話です。あまりにも古い住宅は解体するのが前提ですが、そのまま住む物件の場合は、不動産営業マンが「この物件は収納が実によく考えられているのですよね。たとえば○○は・・・」とやるのです。
スーツケースはどうでしょうか?これは新築したら購入するというものではありませんが、やはり置き場に困る典型事例だと私は思います。接客の際に「スーツケースの置き場に困っていませんか?」「いくつ持っていますか?」と話を振るだけで深い会話になるのです。
筆者宅にもスーツケースが4つあるのですが、置き場所には困っていません。もちろんかなりのスペースを取ってしまうのでもったいない感があるのですが、見た目にもすっきりしますし、実はスーツケースの中には普段ほとんど使わないようなものを入れてあるので収納も兼ねています。
コロナ問題で海外旅行に行く目途がたたない状況ですから、この空間を収納として使うのもありだと考えます。
姿見の説明はこうする
左に姿見があるのがわかりますか?撮影している私の半身も写っていますが、姿見は新築時にこのような感じで壁付にすべきだと思います。家を買ってから自立式の姿見を買う人が多いのですが、そのうちに「邪魔だな~」となるのが目に見えています。
実際にもこの案を展示場で説明すると、現状で姿見の置き場に困っている人からは必ず賛同を得られます。
「この会社はこんな細かいことに気づくんだ。設計力や発想レベルが高いのかも」
こう思ってもらうことが肝要。ちょっとしたことですが、展示場に姿見をこうして設置することを私はお勧めします。
この話を私のtwitterに上げたところ、思いのほか反響がありました。あるハウスメーカーで建築中の女性からは「あー! もう少し早く知りたかった~ たしかにあれって邪魔なんですよね!」と熱いレスをいただきました。
このほかにも、姿見に関しては同意を得られることが多かったですね。私も意外でしたが、皆さんこういうところに困っていたことがわかってよかったです。
まとめ
いかがですか。細かいものの説明をしたらきりがないのですが、収納一つとってもいろいろな説明ができるのと同時に、初回面談においてお客さんからの信頼を得ることに多少なりとも寄与するのです。
これまで収納の説明を「たくさん収納を取ってあります」程度のことしか言わない営業マンがいれば、今後はもっと深く突っ込んで話をしてみましょう。
また、不動産営業マンの方へのアドバイスなのです。3年ほど前になりますが、新築住宅か中古住宅かで迷い最終的に別の場所で土地を買って新築を建築した方を取材しました。
「中古をやめたのはなぜですか?」と聞くと奥さんが「新築会社の設計士の収納提案が素晴らしかった」と話すのです。それに対して中古物件を扱っていた不動産営業マンに対しては「収納が多くて魅力だったのですが“収納がたくさんあります”と言うだけでいまいちだな・・・と感じたのですよね(笑)」
これは筆者がこの耳で聞いた話ですよ。つまり、不動産営業マンとして求められるスキルとして、中古物件の間取りを見て収納の使い勝手の良さをプレゼンテーションする腕が必須といえるのです。