
収益物件の調査方法について第2回目は、建物の調査結果を重要事項として説明するさいに、どのような説明をし重要事項説明書にどのように反映させるかについて解説します。
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設計変更と変更工事
収益物件に限らず住宅系の物件であっても、新築時に当初の設計どおりに工事が行われず、工事内容を変更することがあります。
設計変更は微々な変更から大きな変更までさまざまですが、建築確認制度における「軽微な変更」や「計画変更」に該当しない変更については、設計図に反映されることは少なくなります。
また住宅系の建物では、工事が完了し引渡時に提出を受ける「竣工図」そのものがない物件も少なくなく、設計図と実際の建物に異なる部分が存在することはよくあることです。
収益物件は規模が大きくなり設計や施工体制が公共工事に近くなり、名の通ったゼネコンやサブコンが施工し、設計・工事監理もしっかり行われるケースが多くなります。
そのような場合は竣工図を含めた工事記録が整備されているケースが多いと思われます。
しかし工事プロセスでは問題がなくとも、引き渡し後に敷地が変更になり「既存不適格」状態になったケースなどもあり、設計図や竣工図と実際の建物との照合は必要なことです。
既存不適格と建築基準法違反
既存建築物の売買で必ずあると言ってよい「建築関連法規違反」の存在です。
身近なところでは「住宅用火災警報器」の非設置です。
消防法により規定されており現在は「既存住宅を含めすべての住宅に設置義務」があります。
しかし設置義務はありますが既存住宅では設置届は不要になっており、実際に設置されていない物件は多くあります。
このように現行の建築関連法規に違反する事項は意外と多くあります。
・24時間換気
・駐車場附置義務
・敷地内通路
・消防設備
など建築関連法規に詳しい担当者であれば、気づくことの多い「建築関連法規不適合」の部位は少なくありません。
これらの不適合部位は「既存不適格」として認識され、是正義務を認識する所有者はいません。
また売買取引においてこれらを理由に取引を中止する事例も少ないものと言えるでしょう。
しかし「既存不適格」については、ひとたび災害などにより大きな被害が生じると、所有者など管理者が「不法行為」を問われる可能性があります。
そのため把握できる範囲になりますが、物件の現状が現行法規に適合しない部分については、重要事項説明書に内容を明示し買主の理解を得て取引する必要があります。
建築確認済証と検査済証
収益物件は特殊建築物であることが多く、一戸建て住宅とは異なり建築確認制度においては所定のプロセスを厳正に経なければなりません。
一戸建て住宅では省略してしまうことが少なくない完了検査ですが、特殊建築物において完了検査を受けていない物件は使用制限を受けます。
にもかかわらず完了検査を受けずに使用されていた収益物件には、建築関連法に抵触する事項があると疑わなければなりません。
疑いがありながら所有者・管理者として是正することなく使用をつづけ、万が一事故などにより人命にかかわる被害を生じさせた場合、不法行為を問われる可能性があります。
建築関連法に抵触する事項を明確にするか、その恐れについては重要事項説明書にて「容認事項」として明記し、買主の理解を得る必要があります。
なお「検査済証」に関しては建築物だけではなく、消防設備やエレベーター・建築設備の検査についても確認しなければなりません。
定期点検と報告書の確認
特殊建築物は新築工事の完了検査に加えて、その後の定期検査が義務づけされています。
主な検査対象は以下のようなものです。
・建築設備定期検査
・エレベーター定期検査
・消防用設備定期点検
・簡易専用水道検査
・専用水道定期水質検査
・自家用電気設備定期点検
これらの調査や点検・検査が行われているか確認し、点検の結果により改善事項の有無や実施状況を確認し説明しなければなりません。
定期調査・検査などは法律で定められていることであり、実施されていない場合には罰則などがあり所有者・管理者責任を問われることになります。
重要事項説明ではこれらの実施状況を明記し、不明な場合は「容認事項」として買主の承諾を得るようにしなければなりません。
また定期調査・検査などの費用については、調査業務委託先別にリスト化し説明することが望ましいでしょう。
修繕履歴の確認
収益物件は適切な時期にメンテナンスを実施していることが望まれます。
・衛生環境を維持するための排水管定期清掃
・給湯・暖房などでオーナー負担の設備更新
メンテナンス状況のよくない物件は購入後に予定外の修繕費用の発生など、収益性を悪化させる原因になります。
修繕履歴からその後の必要とされる修繕箇所を予見できることは、事業を継承する新オーナーにとっては大切なことです。
媒介する立場からは、できるだけ賃貸経営に対する適切なサジェッションができると、媒介業務の質もあがり顧客満足度が高くなります。
収益物件の取引は一度きりの付き合いということは少なく、将来にわたって複数の物件を取得するオーナーは多いものです。
媒介業務に満足を感じてもらえると、引きつづき物件をお世話する機会も訪れることでしょう。
耐震基準と安全性
アパートやマンションは多数の人が暮らす生活空間を提供する建物であり、地震の多い日本においては高い耐震性能が望まれます。
建物の売買では1981年6月1日から施行された「新耐震基準」にもとづき建てられた建物か、それ以前の「旧耐震基準」で建てられた建物に区分し重要事項説明をしています。
しかしながら木造建築については2000年にも建築基準法の改正があり、耐震基準が見直されています。
つまり木造アパートは2000年6月1日を境に異なった耐震基準が適用されています。
「新耐震基準」の木造アパートには1981年基準の建物と2000年基準の建物があり、2000年基準の建物のほうがより高い耐震性能を持つことになります。
重要事項説明においては1981年基準であれば、耐震診断に関することは説明を省くことが多くなっています。
「新耐震基準」であっても、2000年基準前の木造アパートの耐震性能については安全性を保証するものではないこと、また2000年基準であっても必ずしも安全とは言えないことが、2016年の熊本地震で明らかになっています。
一般に「新耐震基準なら安全」という認識が広まっていますが、耐震基準は今後も見直しが求められる可能性が高いものであることを、知識として買主に伝えることは重要でしょう。
まとめ
建物の調査は有資格者である「建築士」と同様の知識が必要になる部分もありますが、宅地建物取引士はある程度の建築関連法規の知見を有しており、専門的な情報が収集しやすい今日ではそれほど難しいことではありません。
書類と現地との照合や新築時の法的な適合性を確認し、必要とされる法的な調査・点検の実施状況や適切なメンテナンスの実施状況や現況の確認を行います。
資産としての価値を維持させるには今後の建物管理によるところも大きいですが、耐震性能などの基本的な性能グレードも把握し、買主に正確に伝えることが大切です。
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