
収益物件の調査は「収益物件と住宅系物件の調査方法とその違い」で述べたように、資産譲渡と事業譲渡の2つの性格を踏まえたうえで正確な調査を心がける必要があります。
事業譲渡に関しては宅地建物取引業の範囲を超えた事項も含まれますが、収益物件の売買では調査が不可欠なものです。
この記事では「事業譲渡」の性格が強い賃貸借契約に関わる調査について、重要なポイントや確認事項を解説します。
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賃貸借契約に関わる確認ポイント
収益物件の調査では賃貸借契約書だけでなく、売主からのヒアリングを含めさまざまな資料の提出も依頼しなければなりません。
媒介契約締結前後の早い時期に準備をしてもらうようお願いすることが大切です。
正確なレントロール
レントロールは賃貸事業を行っている物件ごとに、入居者情報・賃貸条件・家賃収納状況などを一覧表にまとめたもので、レントロールを見ることによって売買対象である賃貸物件の経営状態を判断できる重要な資料です。
とくに入居者の属性や滞納状況などは安定経営に関わるポイントです。
契約始期からは長期入居が多い物件か、入居期間が短く入退去が頻繁な物件かの判断もできます。
他にも次のような情報がレントロールから把握できない場合は、別途情報提供を求め買主に説明できる準備をしなければなりません。
・家賃保証利用者や利用保証会社名と立替払いの有無
・家賃および共益費などの支払いに関し入居者と取り交わした覚書など
水道や電力などの経費や修繕費などの未払経費の確認
水道が各戸契約ではなくオーナーが検針し清算する場合や、共用電気料・共用水道料金などの未払経費がある場合の清算期日を確認し、清算金を確定する必要があります。
原状回復工事代金やその他の修繕費で、工事業者に対し未払いになっている費用がある場合や工事に瑕疵があって支払いが保留されているなど、工事代金が未精算になっている内容について経緯と状況を確認し買主に説明する必要もあるでしょう。
事業に供する物件には債権・債務の関係者が複数おり、物件の引き渡し時にすべてが清算されることはありません。
未収金・未払金などの処理については当事者双方が確認できるよう調査し報告する必要があります。
設備リース契約の引継ぎ
暖房・給湯・調理器などのリース契約がある場合は、名義変更や契約更新などの手続きが必要です。
供給会社またはサービス提供会社を変更する場合は、契約解約に伴う違約金や清算金の確認もしなければなりません。
リース料金の確認や支払者の確認も必要です。
ガス器具などのリース契約は使用料金にリース料が含まれる場合もあり、大家さんが支払うのか入居者の支払いになるのかなど違いもあります。
また機器の更新がリース契約に含まれるケースもあります。
この場合は長期の修繕計画に機器更新費用は不要になるので、押さえておきたいポイントです。
家賃債務保証契約の引継ぎ
家賃債務保証を利用している場合には、賃貸人の名義変更が必要になります。
立替金などの入金口座が管理会社になっている場合もあり、名義変更は管理会社も含めて確認しなければなりません。
保証プランによっては保証会社が集金代行を行っている場合、当月末支払い家賃は翌月振り込みになるケースが多いです。
その場合売主である旧賃貸人または管理会社に振り込まれるのか、買主である新賃貸人または管理会社の口座に振り込まれるのかも確認する必要があります。
また旧賃貸人または管理会社に振り込まれる場合は、清算金額の確定と清算方法を定めておかなければなりません。
損害保険契約の解約と契約
賃貸物件は損害保険や施設賠償保険を契約することがほとんどであり、契約者は所有者になるのが一般的です。
そのため従前の損害保険契約は引渡し日に終了し、引渡し日からは新しい所有者との間で損害保険契約を締結する必要があります。
保険会社が変わると保険内容も変わります。従前の契約内容にとらわれることなく、必要な保険オプション・不要なオプションを改めて検討し適切な保険内容にします。
最近の自然災害の多発と甚大化に伴い保険料が上がっています。不要な経費支出は収益性を悪化させますので入念な検討を行うようにしたいですし、必要なオプションが抜けている場合は付加するよう再確認をします。
リフォーム・大規模修繕履歴
原状回復工事・リフォーム工事・大規模修繕工事などの工事履歴は、省略されておらずなおかつ詳しいほど建物の耐久性や、今後の修繕計画に関わる情報を知ることができます。
屋根や外壁の外部メンテナンス、設備機器の交換や修繕、各室の内装劣化状態など現状を正確に把握し、今後10年間~20年間の修繕計画を立て資金計画をあらかじめ策定しておきます。
積立金の計画や将来借入が必要な場合には、借入条件をクリアできるよう準備も必要です。
借入希望時の担保余力は現時点の返済額とも関係があり、場合によっては現時点の返済方法を変更する必要がでてくるかもしれません。
これまでの耐久性に関係する工事の履歴と現在の築年数とを考慮すると、経済的残存年数をある程度予測することも可能であり、出口戦略を立てるうえで重要な情報となります。
賃貸事業継承のために必要な検討事項
レントロールは売買取引時点の現況を表したものですが、売主から管理会社に依頼してもらい過去の「家賃月次管理表」のコピーを入手できると、引渡し後にスタートする賃貸事業を確実に継承することが可能になります。
過去の「家賃月次管理表」から得られるデータは、次のような経営上重要なデータとして加工することができます。
・設定家賃の変動推移
・家賃設定と入居率の関係
・住戸ごとの入居期間推移
・季節別の退去から入居までの空室期間
・月別新規入居と退去の頻度
これらのデータが視覚化されると、物件のエリア特性や適性家賃の水準、空室対策を立てる場合の戦略や手法のヒントがみつかるはずです。
一般に収益物件の売買で過去のデータまで要求する買主はほとんどいませんし、準備をする売主もいませんが、事業譲渡という視点では必要な資料と言えます。
ただし購入決断の材料にするわけではなく、引き渡し後の事業運営を順調にすすめることが目的です。
買主が上記のようなデータを加工して、必要データを作成することが難しい場合もあります。
実務的にはExcelで比較的簡単に作成できる程度のものですが、買主が自らできない場合は、媒介業者が作成することにより1回きりのお付き合いではなく、今後も物件探しを任せてもらえるビジネスパートナーとして認識してもらえる可能性が高くなります。
まとめ
収益物件の調査として行う「賃貸借契約」関係の資料調査は、不動産取引よりも事業継承媒介といった側面が強く、経営コンサルティングの範疇に近い業務と言えます。
不動産の専門家でありながら事業経営にも明るいとなると、収益物件売買の担当者として大家さんからは一定の評価を受け、ビジネスパートナーとして長いお付き合いに発展する可能性があります。
収益物件を購入する大家さんがもっとも望むのは安定した満室経営です。
現在も順調な経営状態であれば継続させることが大切、空室が目立つ赤字物件であれば経営戦略の転換を図り一転黒字化を目指すなど、大家さんが目指す目標を共有できる売買エージェントでありたいものです。
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