【いずれ搭載が義務化に?】いまさら聞けない太陽光発電の基礎を解説

地球温暖化防止を目的として二酸化炭素排出量を削減するのは世界的に喫緊の課題とされ、日本もその例から漏れるわけではありません。

ですが、各国における二酸化炭素排出量の削減計画に関しての具体的な取り組みや実績については、かなりの温度差が感じられます。

太陽光発電,住宅

結果を見ると国民気質も多分に影響しているかと思います。たとえば削減量が首位のイギリスは、自然を愛するといった国民性が色濃く反映されている気がします。

イギリスではさらに二酸化炭素排出量を削減するため、下記の厳しい目標を掲げています。

目標に対し世論から反論は生じておらず皆、受け入れています。

●2030年までにディーゼル車・ガソリン車の新車販売全面禁止。
●2035年までに、温室効果ガス削減1990年対比で78%削減。
●2024年9月末までに石炭火力発電は完全撤退。また、国外の化石燃料発電事業にたいする公的支援は停止。

イギリスに追随するように、フィンランドやスウェーデン、デンマークなども同等の処置を採択しています。

これらの国々に共通しているのが先ほども紹介した、高い国民意識です。

イギリスでは、目標策定まえに各地で気候変動対策強化を求め大規模なデモが多発し、それにプレッシャーを感じた政府が対策を講じるといった、民意主導型ともいえる政策決定でした。

このような国民意識の高さは具体的な数字としても紹介されており、イギリス国民の約85%が気候危機に強い関心を持っていると、ロンドンの新聞社であるイブニング・スタンダードが記事を掲載しています。

比較して、日本はどうでしょうか?

日本においては一部有識者やマスコミが、二酸化炭素排出量削減のキャンペーンを行っていますが、それほど浸透しているように見受けられません。

この動きを加速させるには私たち不動産業者が率先して知識を拡充し、顧客に提案することにより民生部門から削減量を減少させていくことが大切だと思います。

ところで、皆様は再生可能エネルギーの代表格である「太陽光発電」に関してどの程度ご存じでしょうか?

私の周りにいる不動産業者に同様の質問をすると、ほとんどの方が「希望があれば業者を紹介している程度で、詳しくは知らない」と答えました。

政府は「太陽光発電」の設置義務化も含め、搭載を促進すべく対策を練っています。

私たち不動産業者も、詳しくは知らないという回答ができない時代の到来です。

今回の記事では、最低限として理解しておきたい「太陽光発電」について解説します。

搭載義務化へと進む政府

民生部門のうち不動産に関連しての目標ですが、異例ともいえる国土交通省・経済産業省・環境省の三省合同により、6回に渡って有識者を交え議論されてきました。

その結果、令和3年8月23日に「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」における具体的な方針が、経済産業省と環境省から同時発表されています。

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発表された内容は下記の通りですが議論を重ねた割には特段、目新しいものではありません。

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●2050年には、平均でZEHやZEB以上の省エネ性能が確保されている状態となること(2030年までには全体の6割)
●創エネシステム(民生部門で言えば、太陽光発電システム)が一般的であること。

この2点です。

端的に表現すれば下記のように読み替えできます。

●ZEH性能を満たしていない住宅は建築を認めない。
●太陽光発電の搭載を義務化する。

中古などの既存住宅にたいしては一定レベルの断熱改修工事を実施すれば、補助金や税制面での優遇制度が大胆に用いられるのではないかと予測できます。

断熱改修工事を実施せず住宅性能が低い住宅は、冷暖房に要するエネルギーを垂れ流す状態になるので、税制や優遇制度ではっきりと「差」をつけ、いずれは淘汰したいというのが政府の正直な気持ちではないでしょうか?

太陽光が電気に変換されるのはなぜ?

まず光が電気に変換される理論を、解説します。

この理論については、科学者でもない私たち不動産業者が知る必要がない気もしますが、実際には「なぜ太陽光が電気に変換されるの?」と顧客から質問されることが度々あります。

「分かりません」と答えるもの気恥ずかしいので、簡単な理論だけは覚えておきましょう。

まず屋根に乗っている黒いパネルを「太陽光発電」と呼んでいる方が多いのですが、それはシステムの総称です。

不動産業者であれば「太陽電池」もしくは「ソーラーセル」と表現した方が良いでしょう。

電池と名称がついていますが、蓄電性能は持たず「光エネルギー」を電力に変換する発電機のようなものだと理解してください。

太陽光がこの太陽電池に降り注ぐと、「光電力効果(ひかりでんりょくこうか)」が生じます。

蘊蓄になりますが、この理論は様々な学者の研究を経ていますが最終的に「相対性理論」で名高いアルベルト・アインシュタインの光量子仮説により、「光と電子の相互作用」として理論づけされました。

これは太陽電池内で構成されている半導体の電子が動き回る現象を理論づけたものですが、原子核の周りを回っている電子は光が当たることにより原子核を離れて外に飛び出そうとしますが、それをシリコンなどの半導体で一定の方向に誘導し流し込むこむことにより電気を造るのが太陽電池です。

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迷子になった微量の電子を整列させ、電気とすると理解すればよいでしょう。

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このシリコンなどを雨や風で損傷しないよう保護素材で包み板状で形成したのが、ソーラーセル(1枚あたりの名称)です。

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このセルを求めたい電気量の分、連結させたパネル単位をモジュールと呼び、さらにモジュールを集合させた状態をアレイ(メガソーラーなど)と呼びます。

半導体の素材はシリコン以外にもありますが、費用対効果や発電効率の関係もあり世界で流通している太陽電池のおおよそ80%にシリコンが採用されています。

発電効率って何?

価格も大切ですが、発電効率をおざなりにしてはいけません。

発電効率とは、太陽光のエネルギーを太陽電池から取り出し電気エネルギーに変える能力を表す尺度ですが、製造会社やセルの大きさ、形態(単結晶・多結晶など)によって異なります。

共通して地上1㎡の面積に、真上から降り注ぐ太陽光1KWあたりの変換効率がスペック表に記載されています。

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この出力はあくまでも公称最大出力ですので、天候や設置方位・角度の影響により常に得られるといった単純なものではありません。

ですが顧客が希望する総体的な発電量に必要なパネル設置枚数を検討する場合には、この公称最大出力にモジュール(枚数)を掛けて計算します。

年間発電量の計算式は

年間発電量(EP)=1日あたりの平均日射量×システム容量(P)×損失係数(K)×365÷1
●平均日射量は気象庁の公開データを利用します。
●システム容量は、搭載するパネルの公称最大出力×枚数です。

損失係数は温度変化やパワコン、配線やパネルの汚れにより一定ではないことから、一概に計算できません。
メーカーが定めている損失係数は、平均すると概ね以下のような数字に収束します。

1~5月/10~11月:15%
6~9月:20%
12~3月:10%

ただし、積雪地帯では雪がパネルを覆ってしまうことから年間発電量のうち冬季の発電を考慮せずに計算されます。

変換効率に影響をあたえるパネルの種類

太陽光発電は日本でも馴染みのある主流メーカーだけで約10社、海外の小規模メーカーまで含めると膨大な数の会社から販売されています。

メーカーごとの特徴やスペックは、比較サイトや各社のHPを参照するしかないのですが、基本的に太陽電池の価格は同一メーカーのシリコン系だと多結晶より単結晶が値段も高くなります。

太陽電池は、基本的にシリコン・単結晶・多結晶のキーワードさえ理解していれば充分です。

単結晶は純度が高く、多結晶は単結晶の製造過程で生じた切断くずなどを再利用していることから単結晶と比較すれば純度が落ちると覚えておけば良いでしょう。

●単結晶:価格が高い・変換効率が高い・同じ設置面積でも容量が大きくなる
●多結晶:価格が安い・変換効率が低い・同じ設置面積でも容量が小さくなる

ちなみにですが黒っぽい色でパネル表面がきれいに見えるのが単結晶(写真左)、青っぽい色でまだら模様に見えるのが多結晶(写真右)です。

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色による見分け方を覚えておくと、現場周辺を見回して「ああ、あれは多結晶のパネルですから、変換効率はおそらく……」といった、いかにもプロといった言い回しも可能になります。

発電をするのは太陽電池ですが、発電量は天候や時間帯で常に変化しますので、そのような不安定な電力状態では家電に使用することができません。

さらに太陽電池は直流で発電しますので、家庭用である交流に変換する必要もあります。

そのような働きをするのがパワーコンディショナー(パワコン)です。

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そのほかにもシステムを効率的に稼働させる重要な役割をもっており、システムに必ず組み込まれます。

太陽光発電の基本セットは

① 太陽光発電モジュール(太陽電池)
② パワーコンディショナー
③ 管理モニター

だと覚えておきましょう。

そのほか屋根形状により異なりますが架台などの設置金物や、配線に必要な接続箱、売電する際に必要な電力量計などが付帯設備となります。

プロとしてのアドバイス内容

これまでの解説は、太陽光発電の基本ですので覚えておきましょう。

この項では顧客から太陽発電搭載にかんして相談を受けた場合に、アドバイスすると喜ばれる内容を解説しておきます。

1.耐久性を確認する。

変換効率が高くても、故障してしまえば発電をしません。

海に近い、積雪があるなど設置地域によりことなる条件で、架台も含め積雪対策や塩害対策などが施されているパネルを選択することが大切です。

初期費用を抑えることも重要ですが、結果的には余計な修理やメンテナンスを必要とせずに少しでも長く発電を続けることがメリットにつながります。

2.保障期間と内容

太陽光発電メーカーの多くはシステム保証・出力保証・自然災害保障の3つを標準としています。

●システム保証

パネル本体や周辺機器の故障を保証します。メーカーによりことなりますが10年~15年が一般的です。

●出力保証

経年変化による発電量の低下が、一定以上を上回った場合に保障されます。

基本的には無料での修理もしくは交換とされていますが、実際には交換対応です。

発電量低下の目安ですが10年間までは10%、それ以降は20%を下回ると対象になります。

出力保証の期間はメーカーによりことなりますが、おおむね10~20年の間で定められています。

●自然災害保障

台風や積雪など自然災害による故障に対応している保証ですが、メーカーにより無償もしくはオプションとして有償になっている場合もあります。

自然災害の多い地域では、加入しておくことを勧めましょう。

3.住宅に対する影響

屋根形状やメーカーにより、太陽光パネルの設置に使用する架台や金物の耐久性や施工方法がことなります。

新築住宅の場合に予め太陽光発電の設置が決まっている場合には野地板の裏板補強などを実施しておくこともできますが、中古住宅の場合には主に垂木止めに打ち込むことにより強度を保ちます。

筆者の経験上ですが、あきらかに垂木を外して金物が設置されているケースも見受けられ、そのような施工では必要な強度を保つことができず台風などで破損する危険性が高まります(実際に強風で吹っ飛んだこともあります)

また屋根にビスなどを打ち込んだ時点で、保険期間内であってもJIOなどの瑕疵補償保険における屋根・壁を含む雨水侵入等にかんして対象外とされますので、万が一の雨水侵入等においても責任をもって対応してくれる業者選びが重要です。

現時点で“モト”はとれない

太陽光発電がブームとして民間での搭載件数を増加した理由は、世界的な売電価格からみて異常ともいえる10Kw未満で42円/kwhという高値の売電価格がありました。

太陽光発電の売電価格は、電力会社が買い取る電気価格を保証した「固定買い取り制度(FIT法)」により定められますが、売電価格は年々下がり、2021年は10Kw未満で19円/kwhです。

現在、流れている情報によると今後も買い取り金額は段階的に引き下げられ、最終的に10Kw未満で11円/kwh程度に落ち着くのではないかと予測されています。

買い取り価格は申請時点の価格が10年間、FIT法により保証されますが、それ以降は新電力会社も含め安値(10Kw未満1~8円/kwh)で買いたたかれます。

機械寿命や初期費用、設置補助金などを勘案してもモトはとれません。

安値で売電し続けやっと損益分岐点を通過して、「さあこれから利益が出るぞ」と思った頃にはパワコンや架台が寿命となり交換を余儀なくされるなど、イタチごっこが発生するからです。

ですから「太陽光発電はお得です」なんて営業トークは、嘘になります。

善良な不動産業者の皆様は、顧客に誤解を与えて不要なトラブルをまねかないよう注意が必要です。

あくまでも地球温暖化を防止するために協力するといった崇高な志か、電気料金が引き上げられた場合における自己消費、もしくは震災などにより停電した場合にも電気を使用することができるのがメリットです。

このうち自己消費についてですが、一般家庭の日中電気消費量では発電した電気を持て余すことになります。

売電している場合には余剰電力を売っていますので問題はありませんが、売電期間が終了した場合において自己消費するためには家庭用蓄電池が必須となります。

太陽光発電システムと同じく、家庭用の蓄電池も技術革新により値段が下がりつつありますが未だに高値です。

また蓄電池は、携帯電話の電池と同じく充放電により劣化していきますから寿命自体がそれほど長くありません。

国が再生可能エネルギーを義務化とする場合には、予算組をして補助金などの引き上げを行ってくるでしょから、そのタイミングを狙うのが得策かもしれません。

まとめ

今回は太陽光発電義務化の可能性を視野に入れ、基本について解説しました。

基本の理解は大切ですが、専門的な話は信頼のできる業者に一任するほうが良いかも知れません。

ただし業者を紹介する場合には、業者選びを慎重におこなってください。

業者が「太陽光発電を搭載すると、これだけのメリットがある!!」として作成するシミュレーションはかなりの部分、都合よく作成されている可能性があります。

そのようなメリット・デメリットを見極め、正しい選択肢を顧客に提案できるようになることを目的として、今回の解説記事を作成しています。

筆者は某メーカーの太陽光発電システム施工IDを有しており、実際に架台の組み立てや施工管理のほか、発電シミュレーションも作成することができます。

またNEDO(国立研究開発法人_新エネルギー・産業技術総合開発機構)における「太陽熱利用による冷暖房費削減」に関しての研究員を経験しておりますのでシステム理論についての知見も有しておりますが、顧客はそのような小難しい話を求めていません。

●初期費用が安く搭載できる
●それなりに発電できる
●故障もなく、万が一の保証も充実している
●長く発電して利用できる

これにつきます。

専門的な部分については信頼できる業者に任せることが肝要ですが、そもそも私たち不動産業者が基本的なことを理解していなければ業者が信頼できるかどうかの判断ができません。

太陽光発電にかんして深く学ぼうと思えば、インターネットで検索すれば必要とされる情報を簡単に入手できますが、運営会社による偏りが見受けられます。

今回の記事を参考に基本を理解していただき、自ら学び顧客の要望に応えることができる程度の知識を身に着けることが肝要です。

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