よくわかる現地調査の流れ|目的と注意点も合わせて解説

現地調査は資料だけの調査では把握できない “実際に見る” ことによる調査です。現地を確認せずにお客様に説明し、のちにトラブルが生じたときの説得力のなさはいうまでもありません。

納得のいくまで現地を見にいき、しっかりした説明ができるよう心がけましょう。ここでは4つの項目に分けて調査内容を解説します。

現地調査は物件調査のひとつであり、物件調査を補完するものです。登記簿調査と役所調査により収集した情報と総合して、物件の全体像が説明できるようになることを覚えておいてください。

現地での敷地調査

敷地調査は土地上に建物がない場合とある場合があります。どちらの場合であっても、買主の利用計画に支障がない敷地であるかを判断する重要な調査です。

法的な制限などは「役所調査」でおこないますが、 “現地” という観点から、現場でなければ把握できないことがたくさんあります。

1. 筆界(境界)の確認

最優先で確認することは境界石を探しだして筆界の確認と土地の寸法を確認することです。寸法は測量でおこなうような精密な測定は必要ありません、地積測量図に記載された寸法におよそ合致しているか、差があるのかを確認します。

境界石が見つからない場合は現況測量が必要になる可能性もあるので、売主に筆界の位置と境界石の有無を確認してみましょう。

「境界石があったはず」と売主がいう場合は、地中に埋もれていることが多く粘り強く土を掘り探しましょう。かなり深い場合は隣地側の土地も掘ることになるので、必ず隣地所有者に声をかけ承諾を得てから掘るようにします。

筆界の確認ができると境界線を越えている「越境」の確認ができます。塀や庭木、附属建物、そのた工作物が越境してる場合もあれば、隣地の所有物が越境している場合もあるので注意しましょう。

越境はトラブルになることが多いので注意が必要、別途「覚書」などを隣地所有者と取り交わし、将来的なトラブルの防止を図ります。

2. 地勢の確認

平坦地か傾斜地か? あるいは段差のある土地や道路からの高低差があるなど、測量機器の使用は必要ありませんが目視による確認をおこないます。

正確な高低差の測量が必要である場合は買主に提案すなど、臨機応変に対応してください。

瑕疵補償の範囲として協議が必要になる場合もあるので、擁壁などの傾きやひび割れなど健全性も確認しておきます。

3. 前面道路の確認

前面道路の幅員と敷地が接する長さ、道路の舗装・未舗装および歩道の有無も確認します。「接道義務」に関係することであり役所調査でも調査する項目ですが、現地での確認も大切です。

4. 門塀・庭石・庭木の確認

買主の利用計画に影響を与えることが多いので、簡単な見取図を作成しておくと物件案内時に役立ちます。

5. 電柱・止水栓・ガス栓の確認

電柱の位置や水道・ガスの引込位置も確認し、見取図に記入しておくと便利です。敷地上空や周辺にある高圧線にも注意が必要。特に上空にないと見落としがちですが、離隔距離内の高圧線は要注意です。

6. 地中埋設物や土壌汚染の可能性に注意

他人所有の水道埋設管や古い建物の基礎など、地中に埋設されたものは買主の利用計画に支障となり “瑕疵” に該当します。

地歴調査による確認が必要ですが、現地でもその可能性がないか地表面や周辺への聞き取りなど、可能なことは確認しましょう。

現地での建物調査

土地建物売買では必ず建物調査も必要です。住宅の場合は専門家による「既存住宅状況調査」を利用することもありますが、媒介業者としてもできる限りの調査をします。

1. 間取り図面の作成

新築時や増築時の設計図書がない場合があります。販売資料作成に際しても現状の図面がないと正確な資料作成ができません。現地で各室の寸法を計測し間取り図面を作成するほうがよいでしょう。

2. 建築図面や登記図面との照合

設計図書がある場合には現状と図面との照合をおこないます。また建物登記図面との照合もしなければなりません。
建物登記図面と差異がある場合は、増築あるいは減築がおこなわれたことを意味しており、状況によっては「違反建築」になっている可能性もあります。

図面との差異がある場合は現状の間取りを作成し、法的なチェックも必要になるので注意が必要です。

3. 用途や利用状況の確認

建築確認済証を売主が保管している場合、確認済証に記載された「用途」と実際の用途に変更がないかを確認します。建物内部に加え外部についても駐車場や避難通路など、利用状況の確認が必要です。

確認済証が保管されていない場合は、役所調査で取得した「建築証明」との照合をおこなうことが望ましいでしょう。

第三者の占有についても賃貸借か使用貸借かの区別を含めて確認しておきます。

4. 劣化・損耗状態の確認

建物と付属設備の劣化や損耗状態を確認します。売買契約時に売主から買主に提出する「付帯設備表と物件状況等報告書」に記載された項目について、媒介業者の目からも確認しておくことが大切です。

「既存住宅状況調査」を利用するかしないかの判断材料にもなるのではないでしょうか。

5. マンション共用部の確認

マンションの場合は、共用部の確認も必要です。管理形態や駐車場・駐輪場・トランクルーム・専用庭などの有無と使用料や空き状況も確認します。

現地での道路

都市計画区域・準都市計画区域内において、建物の敷地は接道義務を満たしていなければ、建物の再建築はできません。接道する道路の種類によっては “接道義務” に該当しない場合もあります。また特例として建築審査会の同意により許可されたケースがあるので、あわせて状況を確認してください。

⚠️注意したい道路

1. 幅員が4メートル未満の道路

建物の敷地は幅員が4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければなりません。4メートル未満の場合は「42条2項道路」に認められている場合は、道路中心から2メートルセットバックして建物を建てることにより、4メートル道路として扱われます。 

2. 前面道路が私道しかない場合

前面道路がひとつ、あるいは複数あってもすべてが「私道」の場合、建築基準法により道路と認められる場合以外は、建物の建築はできません。(都市計画区域・準都市計画区域内に限る)

私道であっても建築が認められている道路には「位置指定道路」と「現況道路」があります。しかし所有権はあくまでも “私人” なので、通行権にかかわる決めごとや利用制限・利用料金などがある可能性もあり、所有者と権利関係について調査が必要でしょう。

周辺環境

周辺環境には、引渡し後に紛争が生じる恐れのある原因が隠れていることがあります。最悪の場合は契約解除や損害賠償請求へと発展することもあり、できるだけ範囲を広げて確認しておく必要があるのです。

1. 現在ある嫌悪施設と将来の計画の確認

臭い・騒音・などの発生源となる施設について調査し、将来の計画についても知りうる範囲で確認をします。

2. 日照や通風など生活環境に影響を与える建物の確認

隣接敷地や前面道路の反対側で計画されている建物について、知りうる範囲で調査し確認をすることが望ましいでしょう。

3. 土砂災害や河川の氾濫などの恐れについて確認

災害の恐れがある周辺状況を確認したうえで、市町村にて整備されている「ハザードマップ」を取得し、危険性への理解を高めるよう説明することも大切です。

4. 心理的社会的な影響を及ぼす施設などの確認

反社会的勢力の事務所・火葬場・葬儀場・墓地・刑務所など、一般感覚として避けたい施設が周辺にないかの確認をします。説明しなかったためにトラブルになる可能性もあるでしょう。

5. 建築制限を及ぼす高圧線や災害時の危険性が認知された施設などの確認

高圧線の付近は建築制限を受ける場合がありますが、ほかにも強風による倒壊が報道された「鉄塔」や「ゴルフ練習場」など、危険性があると思われる施設の確認をし説明する必要性があります。

まとめ

現地調査について説明しましたが、重要事項説明における説明内容について「説明義務違反」を問われる事例が多くあります。

売主からの情報が不足していたことが原因であったり、媒介業者の調査不足が原因という場合もあります。

媒介業者は免許を得て業務をおこなう “許可業者” です。善管注意義務違反や不法行為をいつでも問われる立場にあることを忘れてはなりません。自身が買主になったつもりで、入念な調査をおこなうようにしましょう。

わかりやすい役所調査マニュアル公開しました

本マニュアルにおいては、調査項目を8つに分類して解説していきます。また、入門編では各項目の大まかな考え方、概要のみを解説します。それぞれの詳細や具体的な調査方法については、実践編で解説をしますので、まずは全体像を何となく掴んで頂ければと思います。

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