オープンハウスの強みとは⁉成長要因とビジネスモデルを徹底分析

不動産業界に風穴を開ける勢いで成長を続けるオープンハウス。

「東京に、家を持とう」というキャッチフレーズで広く知れ渡った同社は、不動産業界では売上高ランキング7位(2020年)に位置しています。

創業以来常に右肩上がりの成長を続けてきたオープンハウスはなぜここまでの成功を収めることが出来たのか、そしてオープンハウスのこれからの展望について説明していきたいと思います。

オープンハウスとは?

「株式会社アプローズ」として1996年11月に創業し、1997年現在の商号に変更したオープンハウスは、新築戸建て分譲事業を中心に手掛けてきた不動産企業です。「東京に、家を持とう。」という当社のキャッチフレーズからもわかるように、都心の狭小な土地を買い上げ、複雑な形でも快適に過ごせる設計により家を建て、主に家族層に向けて販売しています。

2013年に東証1部への上場を遂げて依頼、右肩上がりの成長を続けてきました。2023年には、連結売上1兆円到達へ向けて躍進しています。

事業内容

同社が2021年9月に公表した決算資料に基けば、

  • 「戸建関連事業」
  • 「マンション事業」
  • 「収益不動産事業」
  • 「その他事業」

の4つのセグメントによってポートフォリオが構成されています。各事業はオープンハウスの連結子会社が担っている部分もあるので若干複雑ですが、各セグメントの図式化とともに表にもまとめているので、ご参照ください。

それでは、オープンハウスの事業内容をセグメントごとに具体的に見ていきましょう。

戸建関連事業

利便性の高い都心部でリーズナブルな価格の戸建て住宅を供給する事業です。その中で「仲介」「戸建」「建築請負」「ホーク・ワン」の4つに細分化されており、用地の取得から施行、販売までを一気通貫で行っていることが同社の最大の特徴です。2021年の連結決算においては、売上高全体の55.1%を占めており、売上高前年比+17.7%、営業利益前年比+53.1%と同社の成長を牽引する最大の柱となっています。

「仲介」は「(株)オープンハウス」による事業で、連結子会社の「オープンハウスデベロップメント」が所有し販売している新築一戸建住宅(建物)及び住宅用地(土地)の売買仲介を行います。2021年11月現在、東京・神奈川などを中心とした7都府県に61の店舗を構えています。

「戸建」はオープンハウスデベロップメントによる事業で、建物と土地を販売するほか、顧客が同社で購入した土地において注文住宅の建築などを行います。

「建築請負」は連結子会社の「オープンハウスアーキテクト」による事業で、首都圏の建売事業者などに対してオープンハウスグループのノウハウを活かした建築・設計の請負を行います。

「ホーク・ワン」も同じく連結子会社で、2018年に280億円で買収されました。年間約2,000棟の竣工実績がある同社が、オープンハウスのノウハウや知名度を活用しながら住宅の適正価格での提供を行います。

オープンハウス ビジネスモデル

マンション事業

マンション事業も、オープンハウスデベロップメントによる事業です。同社が仕入れた土地に新築のマンションの開発と分譲を行っており、戸建関連事業と同様、都心部などの利便性の高い土地にファミリータイプを中心とした分譲住宅を供給します。全体における売上構成比では5.8%となっています。

2019年に首都圏の用地価格が上昇し、当事業のセグメント別売上高は右肩下がりの傾向となっています。2021年度も売上高前年比-18.9%、営業利益前年比-32.3%となっています。いびつな形状をした格安用地に住戸を建てるオープンハウスのビジネスモデルが対応しきれていない領域であり、同社のさらなるシェア拡大に向けて改善が必要なセグメントといえるでしょう。

しかしながら事業基盤を名古屋に拡大する他、首都圏の仕入れも回復しており、2022年9月期以降の再成長を目指しています。

収益不動産事業

主に連結子会社の「オープンハウスリアルエステート・マネジメント」による事業で、国内における収益不動産の取得・運用・販売を行っています。日本国内では投資用不動産に対する需要が高まっており、都市部における投資用不動産市場が拡大しています。同社がグループ間で持つ圧倒的な情報量を活用し、2021年度の売上高が前年比+9.7%となりました。

メイン事業の軸を据えている、東京・神奈川などの都心部を中心に展開し、用途もマンションなどの住宅を中心に取り扱っています。

前年と比べ単価が下がっているものの、営業利益は0.6pt上昇していることなどから、メイン事業で培ってきた「低価格で土地を仕入れる」ノウハウが存分に発揮され、有効なシナジーが生まれている事がうかがえます。

その他事業

このセグメントは主にアメリカにおける不動産事業を示します。

具体的な事業は2つに大別され、①アメリカにおける中小法人及び個人富裕層向けの不動産販売、②アメリカの投資用不動産販売となっています。

2020年9月期はコロナ禍の景気不安により前年と比べ減収減益となりましたが、今期は73.5%の増収となり、現地での物件管理等の豊富な実績によって他社との差別化に成功しつつあるといえます。

当事業のビジネスモデルはワンストップサービスとなっており、「物件の確定」→「資金調達」→「購入手続き」→「物件管理(将来の売却等)」という不動産の利用体験における一連のフロー全てをカバーするサービスを整えています。これは今後国内で展開するであろう金融機関と連携した垂直統合型サービスのプロトタイプともとらえられ、海外での成功事例を国内でも展開する予定であると考えられます(以下「オープンハウスの未来予想」参照)

 

まとめ

以下に事業全体と各セグメントごとの売上高および営業利益の前年比をまとめてみました。

まだ基盤が整っていない中で用地価格が上昇したマンション事業以外、すべてのセグメントで大幅に収益・利益ともに増加しています。

売上高前年比 営業利益前年比
全体 40.7% 62.7%
戸建関連事業 17.7% 53.1%
マンション事業 -18.9% -32.3%
収益不動産事業 9.7% 17.2%
その他事業 73.5% 126.1%

オープンハウスはどれくらいすごい?

オープンハウスの事業について理解が深まったところで、同社の売上推移や今期の実績などを分析していきましょう。不動産業界に旋風を巻き起こすオープンハウスがどれほど凄まじい勢いを持っているのかがわかるはずです。

売上推移(他社比較)

売上規模が同程度の不動産デベロッパー(用地の取得から企画・販売までを社内に包括する企業)の2012年から2022年(予想)までの売上推移を図式化してみました。なお野村不動産以外は全て不動産デベロッパーの中でも住宅の供給に主な事業ドメインを置く会社になります。この10年間において常に右肩上がりでの成長を続けるのはオープンハウスだけであり、年平均成長率はなんと33.1%にまで上ります。

オープンハウス 成長

オープンハウスのキャッシュフロー(他社比較)

では、オープンハウスが今期示したキャッシュを生み出す能力について前述と同じ同業他社と比較しながら見ていきましょう。

当期利益について

まずは企業が決算期間に稼いだ最終的な利益を表す当期利益の売上における割合についてです。以下に6社の2021年9月期の当期利益率を図式化しました。一般的にオープンハウスのように施工業務を内包している会社では利益率が低く出がちです。しかしながら以下のグラフを見てわかるように、同社の当期利益率は全社の中で最も高い8.58%となっています。これは戸建関連事業の堅実な成長に加え、収益不動産事業などの利益率が比較的高い事業の売り上げ増加が起因した結果とみられます。利益率が低いものの売りやすい事業に頼ることなく、効率的にシナジーを生み出せる他分野への投資も積極的に行い、また同時にその分野でも着実に収益も挙げている点が投資家による同社への高評価につながっているのではないでしょうか。

オープンハウス利益

ROEについて

続いて、自己資本(株式発行などにより調達した返済する必要がない資金)からどれだけの利益を上げたかを示す「ROE」を見ていきましょう。業績が落ち込んだレオパレス21以外の5社についてまとめてみました。ROEは高ければ高いほど効率的にキャッシュを生み出す能力に長けていると考えられます。日本企業の場合平均ROEは5%とされ、一般的に10%を超える企業を優良な企業と判断する投資家が多いです。その中でオープンハウスはタマホームに次ぐ26.39%となっており、他社が参入しづらい特殊形状の用地取得や、ニーズを的確にとらえアウトプットに反映させる能力によって着実に利益を生み出しています。こうした能力は他社でも取り入れられている垂直統合型のビジネスモデルをより強固な収益基盤としていることがわかります。

オープンハウスROE

オープンハウスは何がすごい?ビジネスモデルを分析

オープンハウスの収益化能力が分かったところで、同社のどのような要素が他社を凌駕するキャッシュフローを可能にしているのかを解説していきたいと思います。まずはビジネスモデルについて図を用いて解説し、続いて他社との最大の差別化要素となる「商品力」「営業力」「新規事業創出力」という3つのリソースについて見ていきましょう。

ビジネスモデル

オープンハウスが収益を生み出す柱としているビジネスモデルを紹介します。同社では、「土地を仕入れ、仕入れた土地に何を作るのかを考え、考えたものを作り、作ったものを売る」という一連の流れを、前述のとおり「オープンハウスデベロップメント」や「オープンハウスアーキテクト」などの連結子会社を含めた社内で全て完結しています。

このような垂直統合型ビジネスモデルが生み出すメリットを、以下の3つのリソースによって存分に生かしている点が同社の強みになります。このような垂直統合型のモデルを実践している代表格として、ビルや商業施設などを手掛ける大手デベロッパーが挙げられますが、戸建て住宅についてはプロジェクト単位が細かくなってしまうため手を付けることができませんでした。そのため大手企業であればあるほど参入障壁が高いという点も、オープンハウスが独り勝ちしている一因です。

商品力(仕入)

ここでいう商品とは、オープンハウスが仕入れた土地及びそこに建築した建物(主に戸建て住宅)のことです。これらの最大の特徴は、都心の好立地でありながら低価格で提供されることです。さらに、狭小な土地であっても快適に暮らすことができる設計もまた魅力の1つといえます。

都心部にて低価格な土地を提供できる理由は、仕入れの過程にあります。オープンハウスでは他社が高額で仕入れる整った土地ではなく、三角形の土地や線路沿いの土地など、値段が付きにくい土地に目を付けます。多少いびつな形であっても、長年の対応によって培ったノウハウから設計の最適解を導き出します。そのため「好立地」「低価格」「快適」の3つの合理的な顧客の二ーズを叶えることが出来るのです。

ではいかにして低価格な立地を仕入れているのでしょう。他社では用地営業はベテランの営業マンが行うことが多いのですが、オープンハウスでは運動量豊富な若手営業マンに担当させ、顧客や仲介会社との接触時間を長くとることで信頼関係を構築します。他の会社では事業化が難しくても、オープンハウスならできるということを認識してもらうことで立地の譲渡に繋げているのです。

営業力(販売)

オープンハウスでは、営業の仕組み以上に営業マンのモチベーション管理に力を入れています。不動産のように高額な商品を購入する際に顧客は慎重な判断に迫られるため、多くの情報を得て検討しようと考えます。その際に営業サイドに必要なのは顧客との接触量であり、電話や訪問などによる顧客との接点を増やすためには営業マンのモチベーションを向上させることが最重要課題となるのです。

具体的に他社が行っていない施策としては、昇進・昇給制度が挙げられるでしょう。四半期ごとに人事評価が下され、成績によっては年次を問わずにランクを上げることが出来ます。情報システム部門や財務部門などにも営業出身のメンバーが多く占める他、役員にも多くの営業出身者がおり、実績によってその座をつかみ取っています。

また同社では営業マンに最も必要な資質を「信頼性」であるとしており、安くて売れる商品を信頼できる営業マンが売るという、長年かけて全社的に培った一連の流れが爆発的な成長を支えています。

新規事業創出力

最後は新規事業を生み出す力についてです。不動産仲介業から始まったオープンハウスですが、用地取得から販売までの垂直統合を行って以降、事業ドメインの幅を不動産業界において拡大させてきました。投資用不動産の販売に加え、建築請負事業、海外進出などはその成功事例と言えます。また、垂直統合のモデルをユーザー体験の一連の流れに沿ってさらに拡張するため、金融サービスへの参入も発表しています(後述)。

新規事業の成功や、参入するエネルギーを支えているのは、同社の収益基盤です。前述したとおり毎年高い効率性で不動産業界の平均を上回る規模の利益を生み出しているため、その分を新規事業の投資に回すことが出来ます。

その他にも、不動産を仕入れてから建築し、売るという全体的なフローによって大量の情報が蓄積されるため、これらを存分に活用しながら盤石に事業を展開していくことが出来るのも成功理由の1つでしょう。

オープンハウスの未来予想

オープンハウスは中期経営計画に「行こうぜ1兆!2023」を掲げており、不動産企業として5番目となる売上高1兆円到達を見据えています。上位には三大財閥系の総合デベロッパーや、同じく戸建分譲事業を手掛けながらマンション事業を伸ばしている飯田グループホールディングスなどが位置しています。飯田HDは規模の拡大に合わせて他分野への事業展開も押し図っており、保険事業やリゾート事業などにポートフォリオを広げてきました。

商品の単価が高い総合デベロッパーであればともかく、こうした戸建分譲を軸とする企業が売上を伸ばすためには事業のポートフォリオを広げる必要があると考えます。オープンハウスがこれまで展開してきた新規事業のいくつかは確実に成長を遂げており、今後も新たな施策が生まれてくると考えます。

その中でも飯田HDなどの先行企業がまだ取り組んでおらず、オープンハウスが進めている事業の1つが、「エンベデッド・ファイナンス」です。エンベデッド・ファイナンスとは「埋め込み型金融」と訳され、自らのサービスにITを活用した金融サービスを埋め込むことを指します。同社では今年8月に電気やガス料金などを一括で引き落とせる「おうちバンク」が設立されました。建物を売ったその後も継続的に顧客との接点を持ち続けることが出来るようにローンチされたサービスです。

今後不動産業界では新築戸建ての供給量が減少し、リフォームなどの需要が増加すると考えられています。そのためオープンハウスでは、現在の仕入れから販売までのフェーズに加え、リフォームというステップもサポートできるようエコシステムを整えているのです。

オープンハウスビジネスモデル

このように、オープンハウスは金融と不動産を組み合わせることで顧客が家の消費において体験するあらゆるシーンの課題を解決できる総合企業になるポテンシャルを秘めていると考えられます。

そうなれば、1兆円規模に到達した後も継続的に成長を続け、消費者にとってなくてはならない企業になるのではないでしょうか。

まとめ

いかがだったでしょう。今回はオープンハウスの事業やビジネスモデルについて図とともに詳しく解説していきました。

また、今後の事業展開についても予測し、同社が創り上げる新しい不動産業界の未来についても期待が高まったのではないでしょうか。

今後もオープンハウスのさらなる成長に目が離せません。

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