10年後の不動産仲介業はどのように変化しているか

不動産テック企業がさまざまなシステム開発をおこない、ブロックチェーン技術を活用した先駆的試みも多くなってきました。

不動産業は「賃貸」と「売買」の2大領域に区分されますが、それぞれでブロックチェーン活用の可能性が高まっています。

とくに所有権の移動を伴う「売買」では、ブロックチェーンの実用化により大きな変化が生まれる可能性があります。

ここでは、その変化について想像力を大きくして、10年後の不動産売買の姿を予想してみます。

売買領域で進むブロックチェーン活用

不動産テックにおけるブロックチェーンの活用は、不動産売買においてよりドラスティックに進むのではないかと思います。

賃貸におけるブロックチェーンの活用では、登記情報は売買ほど重要視されません。

一方ブロックチェーン活用の面では登記手続きが先行しそうな動きになっています。

(*2017年にはブロックチェーンを用いた新しい不動産登記システムの可能性についての提言があります。)

ブロックチェーン活用による恩恵は売買取引でより大きくなると考えられます。

なぜならメリットがあるシステムほど技術革新が起こると考えられ、売買領域が賃貸領域よりもメリットが多くなるのではと思われるからです。

ブロックチェーンが生み出すメリット

不動産情報が共有され分散管理されるようになると、不動産情報の真正性が担保されより安全な取引が可能になります。

取引はスマートコントラクトにより自動化され、決済もより効率化された方法に変わるでしょう。

物件に関するさまざまな情報もAIにより分析され、買主の購入判断はより適切なものとなり、宅地建物取引士が担保していた物件の適切性は、ブロックチェーンを活用したシステムに置き換わる可能性が出てきます。

たとえば投資物件などはより詳しいレントロールを確認できるようになるでしょう。

たとえば過去の滞納履歴なども詳しく記録され、買主にとってはリスク要素をより明らかにすることができるようになります。

これまで取引において不透明だった部分がより透明になり、買主のリスクは大きく軽減されるのです。

売買取引のシーンが変化

重要事項説明や売買契約が電子化するその先にあるのは、売買契約がスマートコントラクトに置き換わり、重要事項説明を受けることなく買主は重要事項について十分認識できるようになることです。

取引される物件情報はブロックチェーンにより管理される公開台帳ですべて把握でき、登記情報もリアルタイムで確認可能となります。

重要事項として説明されていた専門的な情報も、電子書面で認識でき質問事項についてもAIが答えてくれ、専門家である宅地建物取引士の役割はシステムが担うようになります。

引渡しに司法書士が同席する必要もなくなり、もちろん「本人確認」を免許証のコピーでおこなうような、アナログな行動もなくなってしまいます。

所有権移転登記はブロックチェーンのシステム上でおこなわれ、実印や印鑑証明書の必要もなくなってしまうでしょう。

取引当事者が顔を合わすことも無く、代金決済は換金性のあるトークンによって完了します。

成約情報の公開と仲介業者の役割

レインズに代わる売買物件情報ネットワークが形成され、ブロックチェーンによる売買取引システムと連動し、個人情報の除かれた成約情報が共有されるようになります。

売却活動に必須であった「不動産査定」は、誰もがシステム上で可能になり、宅建業者が担ってきた査定は不要になります。

査定が不要になると宅建業者が媒介契約のキッカケとしていた入口が無くなり、不動産売却にどのように関わっていけるかが問題となってきます。

そもそも宅地建物取引業法は、不動産の取引において不誠実な行為をおこなう業者を排除するため制定された法律です。

不動産取引が仲介者の存在を必要とせず、直接取引においても公正な取引が可能であれば、免許にもとづいた宅建業者の役割は無くなっていくと言っていいでしょう。

では宅建業者および宅地建物取引士の職能とは何か、それは不動産取引および運用におけるコンサルティングに特化されるのではないでしょうか。

売買取引エージェントと不動産運用コンサルタント

不動産情報が細かな部分まで公開されるようになると、情報の非対称性は緩和され、買主は安心して売主との直接取引も可能になります。

相対取引でおこなわれる現在の取引形態は、オークション方式も可能になっていくでしょう。

ブロックチェーンにより管理されたデータベースから、すべての情報を売主・買主は取得することが可能です。

しかし得られた情報は正確なものとはいえ、評価や判断は当事者がしなければならず、取引においてはエージェントである専門家の必要性は変わらず求められると考えることができます。

また取得した不動産の運用については、アセットマネジメントの視点が重要になり、資産運用コンサルティング能力が求められると予想できるのです。

売買物件が証券化され不動産仲介業が縮小する

ブロックチェーンによる不動産情報管理が進むと、物件が売買される形態も大きく変わります。

すでに投資物件では起きていることですが、不動産所有権が証券化され仲介市場で取引されることなく、証券取引と同様の取引が増加します。

現在はある程度のボリュームのある物件に限られていますが、小規模な物件たとえば中古戸建住宅にも、証券化の波がやってくる可能性もあります。

これまで不動産仲介は現物の不動産を取引してきたわけですが、証券化された不動産の所有権や、不動産運用から生まれる収益の受益権などが売買されるようになります。

このような権利こそブロックチェーンとの相性がよいものですが、この分野は「フィンテック」として不動産テックより先行しています。

現物取引よりもトークン化された資産の流通が増大し、相対的に従来の不動産取引は減少していくと考えられるのです。

まとめ

不動産仲介業の10年後を想像してみました。

このとおりの世界になっているかどうかはまったくわかりません。

しかしインターネットがはじまった1995年、現在の姿を予想した人は少なかったと思います。

現在のブロックチェーンも同様で、まだ限られた分野での実験的活用段階ですが、大きく進化する可能性は高いと言えます。

インターネットが新しいビジネスモデルを作り出したように、まったく想像していなかったビジネスモデルがブロックチェーンから生まれるかもしれません。

その時、不動産仲介業のあり方も大きく変わっているように思います。

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