不動産調査において、道路の調査は最も重要な項目のひとつです。
道路の属性や幅員によって、不動産の価値は大きく異なってくるからです。道路の調査をする際に、どんなところに着目をすればいいのか、そのポイントを詳しく解説していきましょう。
道路の種類を調べる
敷地が道路に2m以上接していないと建物を建てることができません。この場合の道路とは建築基準法上の道路で、幅員が4m以上あるものを指します。このため対象の道路が、建築基準法上どのような種類に属するのかを調査する必要があります。
参考までに建築基準法上の道路の種類を並べておきましょう。
2. 開発道路、区画整理道路
3. 昭和25年以前に存在していた道路
4. 都市計画道路で2年以内に事業執行されるもの
5. 位置指定道路
6. 二項道路
これらの種類を調べるためには、役所の建築指導課を訪ねて道路地図を縦覧する必要があります。色分けによって、どの種類に該当するかを判断することになりますが、これまで一度も判定されていない道路については「道路判定願」を提出して、役所の判断を仰ぐことになります。
また公道については、道路明示課や道路管理課といった名称の公道を管理している部署で調査することになります。道路明示図において、4m以上の幅員で明示が完了していれば、建築基準法上の道路として扱えます。明示がされていない場合は、建築指導課の判断を仰ぐ必要があります。
道路形状をしているのに道路でないことがある
道路調査は、現地と役所の両面から押さえる必要があります。
特に開発道路と位置指定道路は、次の図のように、見た目は道路なのに、実は路地状敷地の専用通路部分だったということがあるので要注意です。
たとえばこの図だと、着色部分がすべて道路形状であったとしても、実際には、専用通路部分は、それぞれ宅地Aや宅地Bの私有地です。
このため破線部分に所有者がフェンスを構築しても、誰もそれを阻止することはできません。
宅地Cは、一見どこからでも出入りができるように思えますが、実際には接道箇所がわずかであるために、門扉や車庫の位置は限定的になります。また将来、敷地分割をして売却したいと思っても、それを実現することはできません。
専用通路を道路と同じ仕様で仕上げている場合、現地でそれを見分けることは困難です。また役所の道路図は2500分の1の地図を利用しているので、詳細までは分かりません。
このため開発道路については開発概要書を、位置指定道路については道路位置指定許可図を閲覧して詳細を把握する必要があります。
現地調査だけで判断すると宅地Cは他の宅地と同じ査定額になりますが、実際には減額要因があるため、他の宅地と同額で売却するのは困難だといえます。
道路幅員は容積率に影響する
道路の種類を確認してそれで調査が終了というわけにはいきません。
現地で道路幅員をしっかりと計測する必要があります。4m以上あることを確認するのはもちろんですが、道路幅員によっては容積率制限に影響することがあるからです。
容積率は都市計画決定された指定容積率の他に道路幅員によって左右されることがあります。
第1種低層住居専用地域や第1種住居地域のような住居系の用途地域では、道路幅員のメートル数に0.4を乗じた値が、指定容積率よりも小さい場合には、こちらが制限対象になります。それ以外の商業地域や準工業地域などは0.6を乗じた値です。
たとえば第1種中高層住居専用地域で容積率の指定が300%の敷地で道路幅員が5mだとしたら次のようになります。
これによりこの敷地の容積率は200%となりますから、容積率300%として売り出しをすると、購入希望者の思惑と異なる事態が生じることになります。
敷地内に都市計画道路があったらどうなる
都市計画道路とは、将来道路として整備する計画がある箇所のことです。将来と言っても、3年後なのか20年後なのかは、外部から伺い知ることができません。
こうした未確定のものを道路として扱うことは不合理であるため、自己敷地として申請面積に含めることになります。ただし都市計画道路と重複する箇所については、次のような建築の制限があります。
- 階数が3以下で、地階を有しないこと。
- 主要構造部を木造、鉄骨造、コンクリートブロック造とすること。
このように比較的解体がしやすい構造であれば、都市計画法第53条の許可を経て建物を建てることが可能になります。
しかし2年以内に事業をすることが決定した都市計画道路については、実際に存在する道路と同様の扱いとなるため、都市計画道路の箇所に建物を建てられないばかりか、申請敷地として敷地面積に加えることもできません。
2項道路のセットバックは中心からと限らない
2項道路は道路の中心からお互いに2mずつセットバックをして、将来的に4mの道路とするのが基本の形です。しかし実際の現場では、必ずしも現況幅員の中心からの後退とは限らないので注意が必要です。
基本の形と異なるセットバックをするのはどのようなケースがあるのかみていきましょう。
すでに相手方がセットバックを済ませている
調査敷地の真向いの敷地が、既にセットバックを済ませている場合は、現況の中心からの2mセットバックにはなりません。従前の中心線からのセットバックになります。
真向いの宅地が擁壁の上にある
真向いの宅地が擁壁の上にある場合は、事実上セットバックをすることが不可能なので、反対側の道路境界線から一方的に4mの位置にセットバックすることになります。真向いが崖や水路の場合も同様の措置になります。
「43条ただし書き」許可とは
中古住宅の役所調査をしていると、道路ではないことを示す赤色表示の道に接して建てられていることがあります。そうした物件が確認済証を取得していれば「43条ただし書き」の許可によって建てられている可能性があります。
「43条ただし書き」とは接道義務を免除する規定で、避難に有効な通路に接している場合になどに許可を受けることで建築が可能になります。建築をするごとに許可を要するため、以前確認済証を取得した敷地であっても、建て替えや増築の際には許可を得る必要があります。
しかも「43条ただし書き」の許可基準は、従前とは大きく異なっているために、以前建築ができた敷地であっても認められないケースがあります。このため調査対象の物件が非道路に接していた際は、建築指導課の道路担当者と入念な協議が必要になります。
まとめ
道路調査は、家が建つか建たないかの大きなカギを握っています。役所調査と現地調査を常に照らし合わせながら、齟齬がないか慎重な検証が求められます。
照合する地図や図面も各種ありますから、役所調査の際には、さまざまなスケールに対応できる三角スケールは必携です。都市計画図の多くは2500分の1で描かれているので、これに対応できる250分の1のスケールを備えているものが理想的です。
また現地調査では、最低でも5m以上の長さのスチールテープを持参しましょう。