二世帯住宅が建てられる敷地とはどんなものなのか

二世帯住宅が建てられる敷地を探してほしいと依頼されたときには、どんな点に注意して検索をすればいいのでしょうか。

ただ単に広いというだけでは、希望する二世帯住宅が建てられないことがあります。

この記事では、二世帯住宅が建てられる敷地を探す際には、どのような点に注意すればいいのかを解説します。

二世帯住宅には3つのタイプがある

二世帯住宅は、単に二世帯が住む住宅ということではなく、共有スペースの考え方によって。3つのタイプに分類することができます。

このため、まずはお客様が希望する二世帯住宅が、どのタイプになるのかを把握する必要があります。

1.完全分離型

完全分離型は、まったく共用部がなく、それぞれの世帯が完結した機能をもつ住宅です。一棟の家を壁で分ける長屋タイプと上下階で分ける重層長屋タイプがあります。

二世帯住宅とはいえ、それぞれの住戸に他人世帯が住むことも可能なので、建築基準法上の用途は「一戸建ての住宅」ではなく、「長屋」になります。

水道、ガス、電気はそれぞれ独立して引き込みます。

2.一部共用型

一部共用型は、内部に間仕切り壁を設けることなどで、ある程度は各世帯の独立性を保ちつつ、玄関、キッチン、トイレ、浴室、リビングなどの一部を共用として使うタイプの二世帯住宅です。

3.完全同居型

完全同居型は、各個室以外はすべて共有で使う二世帯住宅です。どのスペースも出入りが自由なため、各世帯のプライバシーはほとんど確保できません。

別棟で二世帯住宅を建てる場合は敷地分割を

ひとつの敷地で暮らすのは構わないけど、建物は独立した別棟にしてほしいという要望を出されることがあります。

そのような場合、どんな点に注意をして売地を探せばいいのでしょうか。

完全独立の住宅は敷地分割をする

ひとつの敷地に別棟でそれぞれの世帯の住宅を建てる場合は、敷地分割をする必要があります。

建築基準法に「一つの敷地に一つの用途」という原則があるためです。それぞれが独立した「一戸建ての住宅」という用途なので、一つの敷地に一棟しか建てることができません。

ただし法務局で分筆までする必要はなく、建築確認申請上の別敷地にすればいいということです。

たとえば次の図のような分割方法があります。

二世帯住宅,敷地

敷地Bのように路地状敷地になる場合は、接道要件を満たすために幅員を2m以上確保します。

そのうえで敷地A、B共に建ぺい率、容積率などの基準がクリアできるのであれば、それぞれ別敷地として建築確認申請をすることができます。

敷地境界の各コーナーに敷地境界標を打ち込めば、フェンスなどで遮る必要はなく、お互いの敷地を自由に行き来することができます。

敷地分割ができない場合は一部機能を欠く

しかし中には敷地の規模や形状の関係で、接道長さが確保できなかったり、他の基準に抵触したりするために、敷地分割が不可能なことがあります。その場合はどうすればいいでしょうか。

「一敷地一用途」の原則でいけば、全体の敷地の中に住宅が一棟しか建てられないことになります。

しかし住宅には、倉庫やカーポートのように別棟で建てるものもあります。これらは住宅の機能を補完するものであり、かつ単独では機能しないことから、付属建物として建築が認められます。

したがって、子世帯の住宅も単独では機能しない「離れ」にすれば、付属建物として建築が認められます。単独で機能しないものとして、現在の多くの自治体のでは、「キッチン」「浴室」「トイレ」のいずれかが欠けるものであれば「離れ」として扱われています。

たとえば離れには浴室を設置しないで、母屋の浴室を共用で使うということであれば、ひとつの敷地に、親子二世帯の住宅を別棟で建てることは可能です。

完全分離型の二世帯住宅は路地状敷地に注意

二世帯住宅のうち一部共用型と完全同居型は、建物の規模が大きくなるくらいで、基本的には一般の一戸建て住宅と規制内容は同じです。しかし完全分離型の二世帯住宅は、長屋として扱われるために、適用される基準が異なります。

特に路地状敷地において建築できないことがあるので注意が必要です。どのようなケースで問題が発生するのか、みていきましょう。

道路から玄関戸までを35m以内にする

完全分離型の二世帯住宅は、建築基準法上は「長屋」の扱いになります。

長屋の基準は各地方自治体の建築基準法施行条例の中で定められています。このため都市によって基準は異なりますが、ほとんどの自治体では、出入り口が道路に面していない場合は,幅員2メートル以上の通路に面するよう定められています。

さらに道路から玄関戸までの長さが35m以下とされているので、次の図のような路地状敷地の場合、道路から建物の距離が長くなると基準を満たさないことがあります。

二世帯住宅,敷地

3階建ての二世帯住宅は通路幅が4m必要

完全分離型の二世帯住宅は「長屋」として解釈されます。

長屋には一般的な「縦割り長屋」もあれば、階数別に世帯を分離した「重層長屋」があります。

もし1,2階を親世帯、3階を子ども世帯という3階建ての二世帯住宅を路地状敷地に建てるとしたら、通路幅に注意が必要です。

3階建ての建物は3階の窓に消防のはしご車が寄り付ける「非常用進入口」を設ける必要があります。

道路に面して3階の窓があれば問題はありませんが、路地状敷地の場合は、路地状の通路幅が4m以上ないと、3階建ての建物を建築することはできません。

まとめ

二世帯住宅は一般の住宅と比べて、建築面積や延べ床面積が大きくなるために、建築敷地も大きな規模のものが必要になります。親子別棟で建てたいということになると、さらに広大な敷地が必要になります。

また完全分離型の二世帯住宅は、他のタイプよりも規制が厳しくなるため、面積の広さだけで、路地状敷地などの変形敷地を仲介すると、そもそも建築ができない敷地だということにもなりかねません。

二世帯住宅を希望されるお客様から売地を探すご依頼をされた際には、条件を満たすための見落としがないか、検証を重ねながら進めていきましょう。

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