人口減少、空き家問題、自然災害リスクの増加…不動産業界を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変わりました。
そして今、不動産業界にもとめられることは、転換期を迎えているように思います。
不動産会社の多くは、自分たちの”魅せ方”について悩んでいらっしゃいます。
- 親身さ
- 専門性
- 多種多様なプラン
このような発信も重要ですが、業界全体を見回し、業界自体へのニーズを把握すれば、”自社の魅せ方”のヒントが見えてくるはずです。
不動産ビジョン2030
社会資本整備審議会は2019年、国民の経済活動を支える「場」として、これからの不動産業にもとめられる中長期的なビジョンである「不動産ビジョン2030」を策定しています。
不動産業のビジョン策定は、実に四半世紀ぶりのこと。「不動産ビジョン2030」では、2030年までに重点的に検討する主な政策課題として、次の9つの項目をあげています。
- 少子高齢化・人口減少の進展
- 空き家・空き地等の遊休不動産の増加・既存ストックの老朽化
- 新技術の活用・新党
- 働き方改革の進展
- グローバル化の進展
- インフラ整備の進展による国土構造の変化
- 地球環境問題の成約
- 健康志向の高まり
- 自然災害の脅威
(出典:国土交通省)
国の考えるビジョンと顧客のニーズとが、一致するとは限りません。しかし、私の個人的見解としては、上記ビジョンは、顧客のニーズや時代の流れもうまく汲んで策定されているのではないかと思います。不動産業界の方は、一度、上記リンクからレポートを見ていただくといいでしょう。
さてここからですが、「不動産ビジョン2030」も踏まえまして、これからの不動産業界にもとめられることを以下の3つにまとめてみます。
- 自然災害リスクの開示
- 「不動産テック」にできないこと
- 「資産価値」向上や維持のための提案
筆者は、大手・中小問わず、不動産仲介業者やハウスメーカーなどの広報に携わらせていただいておりますが、その中で近年感じる「これからの業界の在り方」について以下、詳しく説明いたします。
1.自然災害リスクの開示
「不動産ビジョン2030」にも「9.自然災害の脅威」とあるように、近年、スーパー台風やかつてないほどの豪雨被害が多発しています。また、大きな震災についても、いつ、どこで起きてもおかしくありません。
2019年にはスーパー台風が立て続けに発生し、大きな被害をもたらしましたが、台風後のSNS上では、以下のような声が溢れていました。
家を買う人は、
ちゃんと選ばないと
ダメですよ。不動産業者なんて
客には他社じゃなく、自社で買ってもらう事が一番の目的だから悪い物件を気に入ったらそれで話し進めるからな。地震は知らんが雨による災害は
どんどん増えそうだから
物件よりも
良い業者と出会う事が必須。— tokyo_no1_real (@tokyono1real1) October 29, 2019
不動産投資をやる以上、災害リスクは避けては通れない道ですので、物件を購入する場合は、行政の発行するハザードマップを参考にしてください!
ハザードマップを確認するだけでもリスク管理は出来ますので必須項目です。
また、河川の近くや山の近く高台に建っている物件も地盤は要チェックです!
— こうじ@にこにこ複業 (@ko_ji11) October 29, 2019
不動産を購入する際は、箱も重要屋が、まずはその土地の周域(ハザードマップやら、この土地の災害の歴史からはじまるものすべて)を情報収集、理解の上購入すべし。河川近くは氾濫リスクなんてつきものだろが。山間部は土砂崩れ、河川氾濫、熊などの人間の脅威となるもののリスクなんてものは当たり前
— Jin.T (@pitochan1972) October 28, 2019
神戸も、昨年の豪雨では山際の住宅地で土砂崩れがあったんだけど、そこに住んでる人が災害リスクを認識しているか?というと微妙な気がする…
これはもういっそのこと、不動産売買や賃貸借において『最新版のハザードマップに基いたリスク説明』が必須なように法律を改正すべきなんじゃないかと思う。
— Sachiko_i (@Sachiko_Vo_Sop) October 26, 2019
2020年1月、国土交通省は不動産業者に対し、水害リスクの説明を義務化する方針を決めています。
国土交通省は、住宅の売却や賃貸などを扱う不動産業者に対し、大雨が降った際の水害リスクを購入・入居希望者に説明するよう義務付ける。相次ぐ豪雨被害を教訓とする対策で、赤羽一嘉国交相が27日の衆院予算委員会で明らかにした。
今、そしてこれから不動産会社にもとめられていることの1つは、間違いなく不動産の「リスクの開示」です。
現状、重要事項説明書にハザードマップの写しなどを挿入することもあるでしょうが、しっかりと説明までされている業者さんは多くないのではないでしょうか?
上記、国交省の方針が、どのように施行されるか定かではありませんが、顧客がリスクを認識し、理解するような説明でないと意味はありません。
人口減少がいよいよ始まり、さらに働き方改革が進むと思われる今後は、住む場所が多様化していきます。つまり、自然災害リスクがある場所に、わざわざ住む必要はなくなっていくのです。
顧客の不動産業界を見る目は厳しい
不動産関連企業によるブログ発信やSNSなどによって、顧客側も、不動産業界の在り方や裏側などの知識がついてきています。
たとえば「囲い込み」なんて言葉は、少し前まで一般消費者は知らなかったように思いますが、今では”不動産業界の悪しき慣習”としての認知度が高くなってきています。
言い方は悪いですが、これからは小手先だけの親身さなどは顧客に通用しません。「親身さ」を魅せたいのであれば、まずは顧客目線に立ったリスクの開示など実務から変えていき、発信していく必要があるように思います。
2.「不動産テック」にできないこと
- 不動産仲介における重要事項説明のIT化(売買は現状試験段階)
- 内覧のVR化
- 不動産査定のAI化
昨今、このような「不動産テック」化が業界の一部に見られますが、今後はますます進んでいくでしょう。
ただ私は、必ずしも早急に不動産テックを取り入れるべきだとは思いません。むしろ大事にするべきなのは、「技術でまかえない不動産業」なのではないでしょうか。
「不動産仲介業は10年後にはなくなる」と言われることもありますが、不動産は機械的な作業のみで仲介できるものではありません。単純に、売りたい人と買いたい人をマッチングするだけなら可能でしょうが、”仲介”とは、顧客の人生を考えたコンサルティングの一部であるべきです。そここそ、人にしかできない部分なのです。
仲介だけに限りません。顧客と一緒に世界で一つの家を作っていくハウスメーカーや工務店、住人の意見を聞きながら集合住宅の管理方針を決めていく管理会社なども同様です。
不動産テック化によって効率化や利便性が向上する分、顧客がもとめることも、他社と差別化できることも「人間力」になっていくのだと私は思います。
3.「資産価値」向上や維持のための提案
今後、住まいの「省エネ性」の重要度は増していきます。
ご存じの通り、2020年開始予定だった「省エネ基準適合義務化」が見送られましたが、今後、住まいに求められる省エネ性水準は確実に上がっていくでしょう。さらに、新築建築時に建築士から省エネ性能の説明を義務化する法案も決まっています。
これは、新築物件だけの話ではありません。これからZEHなどの省エネ性が高い住宅が大半を占めることになれば、中古住宅の資産価値にも影響を及ぼし始めます。
省エネ性のみならず、先述した自然災害リスクや立地の将来的な見通しなどを含めた”「資産価値」への言及”もまた、これからの不動産業者にはもとめられることの1つだと思います。
社会的な不安からも、「不動産」に”住”以外のことをもとめる方が増えています。さらに、住宅ストックの維持・向上は、空き家問題が深刻化する昨今、国家的な急務ともいえるでしょう。
「不動産テック」の話にも通じるところがありますが、顧客の人生全体を見て、その不動産取引が人生のプラスとなるような提案をしていきましょう。そして集客するには、そう”魅せる”ことが大切になります。
まとめ
自社を”魅せる”発信をするには、まず業界全体にもとめられていることを知りましょう。ブランディングは、そこからです。
不動産業界を取り巻く環境は、どんどん変わっていくはずです。しかし、人は住むことをやめません。むしろ不安が大きくなる世の中になれば、不動産を選ぶ・手放す・維持することに慎重になります。顧客の”声”に耳を傾けることが、集客の基本です。