古家付きの土地を売却する際、建物のある現況のまま売却する場合と、建物を解体して更地にしてから売却する場合が考えられます。建物解体は業者に依頼する手間や費用がかかりますが、購入希望者層を広げることに繋がる可能性があります。
そこで今回は、建物解体時に確認しておきたい項目について解説しましょう。建物の解体を検討している場合は、ぜひ参考にしてみてください。
建物解体前の調査が重要
建物を解体して「土地」として売却する場合、購入希望者は「新築する」という目的を持つ人が多いと想定されるでしょう。
仮に対象地が再建築不可の土地である場合、現在の建物を解体してしまうと新たに建築することができないため、購入希望者層がかなり限定されてしまいます。
結果的に、売却が難しくなってしまうでしょう。ですから、建物解体を検討する前に、必ず建築に関する調査を行うことが大切です。
再建築不可の例
建築基準法が制定されてから現在に至るまで、何度も改正が行われています。そのため、当時の建築基準法では問題なく建築されていても、現在の建築基準法では建築できる条件を満たさない土地というのが存在しているのです。
例えば、接道義務。基本的に、建築基準法上の道路に2m以上接道していなければ建築ができないとされているのです。したがって、2m以上接道されていない土地や、建築基準法上の道路に接していない土地の場合、再建築はできないとされてしまう可能性があります。ここで注意して頂きたいのは、「建築基準法上の道路」という点。「道路」のように見える道でも、建築基準法上の道路にはあたらず「通路」として扱われていることがあるからです。
再建築するためには、隣地を購入して接道部分を広げる、セットバックを行うなどが考えられます。そのほか、再建築するための細かい条件は自治体によって異なりますので、確認しておきましょう。
固定資産税・都市計画税
毎年1月1日時点での土地・建物の所有者に対して、固定資産税が課せられています。市街化区域内に所在していれば、都市計画税も課税されているでしょう。
土地の上に住宅用の家屋が建築されている「住宅用地」である場合、一定の要件を満たすと固定資産税が軽減される特例があります。そのため、住宅用地の特例措置を受けていた場合、更地にしてしまうと固定資産税の軽減がなくなるので負担が増える可能性があるのです。ただし、更地になると固定資産税の負担が増えるというのは「土地」の話。更地にすれば建物分の固定資産税はなくなります。
なお、都市計画税にも住宅用地の特例制度があります。税金などの維持費が変動することも踏まえて、建物解体の提案をするとよいでしょう。
建物解体時に確認しておきたい項目
ここでは、建物解体時に確認しておきたい項目について解説します。建物の解体を提案するときには、注意してください。
解体の範囲を確認する
建物の解体を検討する際、解体業者に見積もりを依頼するところから始めるでしょう。一口に「建物解体」といっても、見積もりの依頼の仕方などによって工事の範囲が異なります。例えば、解体後に出てくる土の処分をどこまでするのか、道路と敷地に段差がある場合は段差を崩すのかなど。解体業者に見積もりを依頼する場合や、売主が解体を依頼している場合は、工事の範囲について確認しておくとよいでしょう。
解体業者に見積もりを依頼する場合は、必ず書面で受け取りましょう。見積もりの際、口頭で金額を伝えられるのみでは後々高額な追加料金が発生してしまう可能性があるからです。また、書面で受け取る場合でも「解体費用一括」という名目だけではなく、内容ごとに内訳を記載してもらうことをおすすめします。
自治体によっては補助金が出る場合も
自治体によっては、条件を満たすと解体費用の補助金が出る場合があります。例えば東京都足立区では、不燃化特区内の条件を満たす老朽建築物の解体をする場合、最大210万円が助成されます(令和2年度まで)。補助金の制度は、国や県という単位ではなく市区町村が独自に行っていることが多いので、解体工事を検討する際に、該当する自治体に最新の情報を確認しておくとよいでしょう。
地中埋設物に注意
売主負担で解体後更地渡しを行う場合、建物を解体して「更地」の状態で買主に引き渡すことになります。引き渡し後に地中埋設物が見つかった場合、瑕疵担保責任により地中埋設物の撤去を求められることがあります。解体業者の中には、ゴミや廃棄物などを地中に埋めてしまう悪質な業者もいるようです。時間のあるときに工事の様子を確認したり、きちんと業者と契約を取り交わしたりすることが大切でしょう。また、廃棄物を適切に処分している業者を選ぶことも重要です。
建物解体を目的として土地を取得した場合、不動産取得税が不課税となる場合も
この項目で解説する内容は、古家付き土地のまま現況渡しで購入した買主のために、覚えておきたい知識です。通常、不動産を取得してから一定期間後に「不動産取得税」という税金が課されます。古家付き土地の場合は、取得した土地・建物に税金が課せられることになりますが、建物解体を目的として取得した場合は家屋部分が不課税となることがあるのです。
・家屋を取得後使用していない場合
・家屋を取得後、直ちに取り壊した場合
以上の条件すべてを満たしている場合、不動産ではなく「動産」を取得したという扱いになり、不動産取得税が不課税になるという仕組みです。
なお、この制度を利用するためには建物解体証明のできるものなど必要書類を準備し、申告が必要です。申請期限や必要書類などの詳細は都道府県によって異なりますので、該当する県税事務所に事前に確認しておくとよいでしょう。
注意点を理解して建物解体を提案しよう!
現況のまま古家付き土地として売却するか、解体更地渡しとして売却するか、物件により判断が異なるところです。いずれにしても、物件調査をしっかりと行った上で売却方法を提案することが大切でしょう。
建物の解体を提案するときには、ぜひ今回解説した内容も踏まえて提案してみてください。