次世代通信ネットワーク「5G」の日本への導入が、いよいよ目前に迫ってきました。現在、2020年春~初夏の導入が決まっています。
ただ、「5Gによって一体なにが変わるのか」理解している方は少ないのではないでしょうか?
5Gは「通信」のみならず、不動産業界にも大きな影響を与えることは明白です。本記事では、5Gによって不動産業界が変わること、そして、それによって不動産会社はなにをすべきなのかについて解説します。
「5G」で不動産業界のなにが変わるの?
5Gの特徴とされていることは、次の3つです。
- 超高速
- 多数同時接続
- 超低遅延
(出典:総務省)
かみ砕いて説明すると、5Gによって大容量の情報がリアルタイムに近いスピードで通信可能になります。
このことにより、住まいや不動産流通にも大きく影響を与えると見られているのです。
”住まい”が変わる
5Gによって、パソコンやスマホなどの通信機器以外のモノにも、インターネットの搭載が可能になります。
これは、「Internet of Things=IoT(アイオーティー)」といわれるものです。わかりやすいのは、
などの呼びかけに応じるスマートスピーカー。これも、IoTの1つです。
たとえば家の中では、冷蔵庫やエアコン、電気ポットなどの家電がIoT化することで、外出先からの遠隔操作や人の声による操作が可能になります。さらにドアやカーテン、宅配ボックス、浴槽、床暖房、セキュリティなどの建具や設備機器にインターネットが搭載される「IoT住宅」が、これから飛躍的に増えていくと見られています。
IoT住宅が中古市場で流通するようになるのはまだ少し先でしょうが、「住まいの新たな”付加価値”が生まれる」「住まいに求められることが変わっていく可能性がある」というのは、今のうちから認識しておくべきでしょう。
また住まいの性能のみならず、高速通信が可能になることで、テレワークや在宅勤務がさらにメジャーになるでしょう。
「働き方改革」との相乗効果により、長期的には、”駅近”や”首都圏”の価値が下がるのではないかともみられています。
”仲介”が変わる
すでに試験導入が始まっている不動産売買の「IT重説」もまた、5Gによってよりおこないやすくなります。
病気や年齢により自宅や施設から出られない人や、外国に滞在しているような人でも、代理人を立てずに不動産売買が可能になっていくでしょう。
また、物件の内見方法も、5Gによって大きく変わるのではないかと見られていることの1つ。物件に出向かず、動画やVRによる内見もどんどん主流になっていくでしょう。
”集客方法”が変わる
5Gになることにより不動産会社がまず意識すべきなのは、「集客方法」にあると私は思います。
(出典:総務省)
というのも、5Gは2020年に導入されるとはいえ、いきなり全てのエリアで超高速通信が実現するわけではありません。
5Gの全国的な普及には5年ほどかかるといわれており、まずは需要の高いエリアから順次、基地局を展開していき、局所的に高速通信が可能となります。
つまり、2020年から急激にIoT住宅が普及したり、仲介方法がガラリと変わったりすることはないということです。
一方、比較的、早くに多くの人が「5G」を体感的に感じられるのが、スマホやパソコンの通信速度向上です。
4Gの今も、メールやSNS、ホームページなどで世界中の人と繋がることはできますが、5Gによって『動画』のダウンロードスピードが飛躍的に向上します。
数年前から、「ユーチューバー」なんかが注目されていますよね。
不動産業者の方に必ずしも「ユーチューバーになれ」とはいいませんが、『動画マーケティング』については今後、必ず考えるべきだと思います。
昨今、動画は多く見られるようになりましたが、現在、動画を見る上で多くの方が気にするのは、通信速度とデータの上限容量。
5Gになることで、「容量が大きい動画がスムーズに見られない」「たくさん動画を見たいけど、データ容量の上限や費用が気になる」ということがなくなります。そのため、音楽や映画が鑑賞しやすくなることはもちろん、今、ネット上で文章で書かれているコンテンツまでもが「動画」に変わっていくといわれているのです。
5G時代の不動産業界動画マーケティング戦略
『不動産業界×動画』といえば、物件紹介動画がパッと思い浮かぶかもしれません。
もちろん物件紹介動画もいいのですが、マーケティングの観点からいえば、今ホームページで公開している文章コンテンツを動画に置き換えることも効果的です。その理由は、動画にすることで以下のようなことがメリットとして考えられるからです。
- 情報量が増える
- クリック率が高くなる
- 拡散されやすくなる
とはいえ動画制作・動画編集はコストがかかりますし、慣れないうちはとくに労力が負担ともなりえます。そのためまずは、局所的に動画を導入してみるといいでしょう。
物件紹介
取り掛かりやすい動画制作は、やはり物件紹介でしょう。
物件紹介動画は、コメントやテロップが無くても成立するため、制作が容易です。不動産ポータルサイトでも、すでに物件情報ページに動画を掲載していますよね。SUUMOでは、仲介業者向けの無料アプリから、スマホで撮影した物件動画を簡単にアップできる仕組みを構築しています。
同じように、自社ホームページにおいても動画を張り付けて物件を紹介することで、より伝わりやすい物件紹介ページを作ることができます。
企業紹介
企業紹介としても、動画は適しています。ホームページのヘッダー部分に張り付ければ、多くの方に閲覧してもらえるはずです。
ストーリー調にしてみたり、漫画にしてみたり…企業紹介動画は自社のブランディングを兼ねていますので、少し予算を割いて作る価値はあるでしょう。文章では伝えられない安心感や抽象的な表現も、動画なら伝わりやすいといえます。
担当者紹介
不動産業者の動画マーケティングの中でもとくにおすすめなのは、営業担当者の紹介を動画にすることです。ただ現状、「営業担当者の紹介ページ(文章)すらない」という不動産業者さんも多いのではないでしょうか?
不動産担当者のブランディング事業「イイタン」を展開するヒトワークス㈱によれば、不動産売買経験者の70%以上の方が「担当者紹介ページを閲覧した」という統計があります。
「不動産会社」ではなく個人の「営業担当者」を重視するという売主・買主の意識は、近年高まりつつあります。そのため、5G時代の到来とともに動画による担当者紹介を配信することで、集客に直接的に結びつく可能性が高いといえるのです。
不動産売買の解説
現状、自社ホームページやオウンドメディア(ホームページ以外に所有するメディア)で「不動産のお役立ち情報」を配信している不動産業者も多いと思います。SEOを狙った記事や、売買の流れをわかりやすく解説したような記事ですね。このようなコンテンツも動画で解説すれば、視聴者の理解が深まります。
実は昨今、コンテンツSEOは厳しい局面を迎えています。その理由は、Googleのアルゴリズムの変化により、中小企業によるコンテンツが検索上位に表示されにくくなっているからです。コンテンツSEOはレッドオーシャン化しているので、「不動産 売却」「不動産 購入」などのキーワードで上位を取ることがかなり難しくなっているんですね。
一方、動画は、まだまだブルーオーシャンな市場。とくに、不動産業界で動画に力を入れている企業は少ないので、5Gが全国的に広がる前の今、「不動産×動画」のシェアを取ることができれば、動画からの集客が見込める状況にあるのです。
まとめ
これまで「3G」「4G」などの変遷は意識されてこなかったかもしれませんが、不動産業界は、通信ネットワークの発展とともに変化を遂げてきました。レインズの登場や不動産ポータルサイトの台頭もまた、通信ネットワークの発展によるものです。
5Gの通信速度は、4Gの100倍ともいわれています。5Gによって、不動産業界のみならず、私たちの生活が大きく変化することは明白です。通信系、Web系に弱い不動産会社は多いですが、だからこそ、今このときに他社との差別化を図っていきましょう。