設計士でないにしても、不動産を取り扱う営業マンにとって設計図書をある程度読めるようになることは、必要不可欠なスキルと言えます。
しかし、普段見かけない記号や専門用語がたくさん出てくるため難しいと感じる方も多いでしょう。
そこで今回は最低限営業マンとして覚えておきたい設計図書の見るべきポイントを解説していきます。
平面図〈まずは寸法を理解する〉
詳細な間取りが見ることができる平面(詳細)図ですが、まずみなさんが勘違いしやすいポイントとして「寸法」があります。
平面図に限った事ではないですが、寸法は設計図書全般で基本的に壁や柱の中心線からもう片方の壁や柱の中心線までの長さを表す「心々(しんしん)寸法」(または芯々)で記載されています。
一方実際に住んだ時に利用できる範囲である、壁や柱の内側からもう片方の壁や柱の内側までの長さを表す長さを「内法(うちのり)寸法」(または内々)と呼びます。
ありがちな失敗例として心々にも関わらず「平面図の寸法でこの洋室の北側の壁の長さは○○mmだから○○mmのベッドはギリギリ置けますよ!」などと説明したとしましょう。
しかし、実際の居住空間は内法ですのでイメージしていたより短くなってしまい、ベッドが入らずクレームになるといったことが考えられますので注意が必要です。
母屋下がり
次に確認しておきたいのが『母屋下がり』です。
一種低層住居専用地域や二種低層住居専用地域などに位置する住宅でよく見られることが多く、2階の北側部分辺りに母屋下がりと分かるように線が引かれているかと思います。
母屋下がりは北側斜線制限などから、北側の土地に日照を確保するため天井の一部を斜めになって下げることを言います。
完成している物件では一度現地を見ているので、トラブルになることはあまりないですが、未完成物件の場合母屋下がりの影響で想像以上に圧迫感があるケースや、高さがある家具を配置できなかったり、収納の上部がほぼ使用できないといったことがありますので確認しておきましょう。
階段と収納位置
さらに収納面では階段の近くにある収納が影響を受けている場合があります。
1階部分では収納上部が(階段下収納など)、2階では収納下部が階段の影響でほぼ利用できない場合がありますので、説明の際には注意が必要です。
3つの柱と筋交い
最後にご紹介したいのが日本において圧倒的なシェアを誇る「木造軸組工法」の「通し柱」「管柱」「間柱」の3つの柱と筋交いについてです。
通し柱とは2階建て以上の木造建築物において、土台から軒まで1本で通した継ぎ目のない柱のことを言います。
図面上では主に建物全体の四隅付近にあり、〇の中に□があり、さらに□の中に×印で表現されています。
通常の柱よりも太く長く出来ており、1階2階を構造的に一体化させる為のとても重要な柱の為、この柱を抜くことは出来ません。
管柱(くだばしら)とは梁などで中断され、1階と2階それぞれに分かれている柱のことを言います。
図面上では□の中に×印で表現されています。
1階2階部分ともに上に掛かる荷重を支える柱となりますので、管柱も原則的には抜くことができません。
間柱(まばしら)とは壁を支えるための柱のことを言います。
図面上では長方形の□の中に斜め線1本で表現されています。
構造に影響を与えない柱ですので、間柱は抜くことができます。
筋交い(すじかい)とは柱と柱の間に斜めに入れる補強材のことを言います。
図面上では一般的には⊿のような印で表現されています。
水平方向からの衝撃への耐久性を高めるために取り付けていますので基本的に抜くことはできません。
この3つの柱と筋交いを押さえておくことで、将来的な間取り変更やリフォームの提案を行う際に「この壁を壊せば(管柱があるのに)見通しの良い大きな1つのリビングにできますよ!」などと間違った説明することもなく、大きな失敗を避けることができます。
立面図
外観のイメージが分かる図面となりますので、平面図などと照らし合わせながらチェックを行ってください。
特に窓やバルコニーの位置や高さ、大きさなどが分かりますので確認しておきましょう。
配置図(&外構図)
配置図は建物の配置やカースペースがしっかり取られているかといった確認ももちろんですが、特に役に立つ部分が隣地についてです。
隣地との関係においては境界線と建物間にどれだけスペースが確保されているか、境界線にはブロックやフェンスを積むのかといった確認もできます。
接する道路の種別や幅員などの概要も分かりますので一緒にチェックしておきましょう。
また、敷地内外の高低差を表すGL(地盤面の高さ)、FH(計画している高さ)といった数値を把握することにより、頭の中で高低差を想像しておくことも非常に大切です。
さらに、外構図が作成されているようであれば、合わせて確認することによりイメージをつかみやすくなります。
まとめ
いくつか営業マンが設計図書を読むときに押さえておくべきポイントをご紹介しました。
やはり大切なのが平面図・立面図・配置図の3枚、そしてお客様や設計士と一番向き合う時間が長くなる平面図に関しては詳細まで読み込むことが出来るようになることが重要です。