いまや飛ぶ鳥を落とす勢いのオープンハウス。
コロナ禍の影響で他の業界業種が軒並み計画を下方修正する中、昨年比でしっかり増収をするなど、さすがの一言です。
今回は現在不動産業界で注目度ナンバー1のオープンハウスについてまとめてみました。
オープンハウスの成り立ち
オープンハウスは1997年9月不動産仲介会社として東京都渋谷区に創業しました。同年10月には「株式会社センチュリー21・ジャパン」とフランチャイズ契約を締結し、典型的な仲介業者としてのスタートを切っています。
その後の方向性を決めたのが2001年、創建ビルド有限会社(現在の株式会社オープンハウス・ディベロップメント)を子会社化、新築一戸建て住宅の販売を開始したことです。
同年および翌年には一級建築士事務所登録と建設業者免許取得により、不動産仲介+新築戸建分譲を事業とする総合不動産会社の基礎を固めます。
2006年には宅地建物取引業の大臣免許を取得し、翌年神奈川県川崎市に進出、さらに2008年には株式会社オープンハウス・ディベロップメントがマンション販売も開始します。
2010年にはアメリカと中国に進出し、海外事業もスタートさせました。
2013年には過去最高売上高969億円を達成、前年の減収減益からV字回復を果たし東証一部に上場します。その後2019年9月期までの6年間を、平均上昇率34%という驚異的な成長をみせるのでした。
2015年からは大阪、愛知、そして福岡と首都圏以外への進出も果たし、2018年には首都圏中心に戸建分譲事業をおこなう株式会社ホーク・ワンを完全子会社化し業容を拡大、1兆円企業を視野に現在も成長をつづけています。
※参考文献
https://openhouse-group.co.jp/company/history.html
オープンハウス全体の売上と利益
直近の四半期業績は下のごとくです。
毎年4Qに売上が大幅に伸びるのは不動産業界では共通する特徴で、オープンハウスの事業には4つのセグメントがあります。
・マンション事業(11.3%)
・収益不動産事業(20.1%)
・その他(アメリカ不動産等)(5.7%)
( )内のパーセンテージは2019期の構成比であり、戸建関連事業が牽引役になっていることがわかります。
直近四半期毎の営業利益を示したのが下のグラフです。
毎年4Qの利益も順調に伸びていることが読みとれますが、利益率の推移に落ち込みがあります。通期の営業利益推移を見てみましょう。
利益額は順調に伸びていますが、利益率の落ち込みがやはり明確となりました。この原因は2019期に長期在庫物件処分を政策的におこなったことを、2019年9月期決算説明会資料にて明らかにしています。
「オープンハウス」セグメントごとの売上
セグメントは上記のとおり4セグメントに分かれますが、海外事業の構成比はわずかでありここでは割愛し、3セグメントについて売上および利益をみてみましょう。
2018年完全子会社化した株式会社ホーク・ワンの売上が反映し、2019期の戸建関連事業の伸びが目立ちます。
構成比が63%と、メイン事業である戸建関連事業の四半期ごとの業績推移にも着目してみましょう。
順調に伸びている状況がみられますが、注目したいのが、各年4Qにおける戸建事業以外の伸びです。メインの戸建関連事業は当然ですが、戸建以外の事業の成長がみられます。
2020期の4Q業績が発表されるのは11月末、是非注目したいセグメントです。
オープンハウスの短期的な戦略
2020期は売上6,000億円を予想して2019年10月に今期をスタートさせましたが、コロナ禍における業況不透明な中、3Qの昨年同期比で4.6%アップというまずますの成績を残しています。
2020年8月14日発表の「2020年9月期第3四半期(2019/10-2020/6)決算説明資料」では、売上予想を5,700億円と下方修正し、実現性の高い戦略としました。
また同資料においてコロナ禍の影響については、「新しい生活様式の下で戸建販売が好調」と捉えています。
・テレワークの増加により、戸建への関心が高まっている
・利便性や生活様式と医療・教育といったファクターにより、都心部から郊外への移動は限定的
と、その背景を分析しており、うなずけることです。
2019年10月に43営業センターを展開し仲介事業も拡大させてきましたが、2020年9月には7営業センターを出店し49営業センターとなります。
・神奈川県:12
・愛知県:5→7
・埼玉県:4
・福岡県:1→3
・千葉県:1→2
以上のように首都圏の営業体制強化と愛知県・福岡県の充実も図る予定です。
さらに2018年完全子会社となった株式会社ホーク・ワンの仕入れ基準を見直し、2020期3Qでは利益率が1.9P上昇しました。2020期の利益率改善が期待できそうです。
オープンハウスの長期的な戦略
オープンハウスは2020年4月6日、関西の投資用ワンルームマンションデベロッパー「プレサンスコーポレーション」の株式を31.6%取得し筆頭株主となり、同社を持ち分法適用会社としました。
株式取得の目的は事業面における補完関係を構築することとしています。
東海から中京そして近畿圏において強みを持ち、戸建主体のオープンハウスとは逆にマンション主体のプレサンス社、この資本業務提携によるシナジー効果を検証できるのは来期(2021期)以降のことです。
売上1兆円を目差すオープンハウスにとっては、M&Aも重要な戦略といえるでしょう。
・2018年の株式会社ホーク・ワンの完全子会社化
につづくM&A戦略にも目が離せません。
また戸建分譲・注文住宅はひきつづきメインの事業となっていくでしょう。
仲介会社の立場からみると、住宅用地の仕入面においては、仲介不動産業者の協力体制は欠かせないことであり、すでに取引のある業者にとって同社の成長は大きな関心事です。
新規参入を検討するなら、営業センターの新規開設のタイミングが絶好かと思います。