ハウスコムの成り立ち
ハウスコム株式会社は1998年7月、関西ハウスコム株式会社として大東建託株式会社の100%出資により大阪府内にて設立しました。
賃貸仲介業をメインにクリーンサービス取次、損害保険代理店、リフォーム工事取次・引越取次と賃貸サービス業務もおこないます。
2000年には宅地建物取引業免許を国土交通大臣免許にし、2003年12月東京都港区に移転し商号をハウスコム株式会社に変更します。
東京本社移転に合わせ、(旧)ハウスコム株式会社より首都圏・中部圏62店舗の営業権を譲受します。
(旧)ハウスコム株式会社は株式会社ジューシィ情報センターと改称し、大東建託株式会社の100%子会社になっています。
その後も株式会社ジューシィ情報センターから東京都・愛知県の3店舗を譲受し2007年3月には、直営店100店舗を展開しさらに店舗網を広げ、2011年6月に大阪証券取引所JASDAQに上場しました。
2012年に130店舗、2014年に140店舗とさらに店舗網を拡大2019年7月には180店舗体制を実現します。
2019年5月にはジューシィ出版株式会社をハウスコムテクノロジーズ株式会社と社名変更し子会社化をしました。
さらに同年7月にはリフォーム事業をおこなうエスケイビル建材株式会社を100%子会社化し、M&Aによる収益源の多様化も図るようになりました。
店舗網は関東7都県、東海4県、近畿2府、四国1県、九州・沖縄2県と関東以西の主要都市に展開し、2019年8月には東京証券取引所第一部に変更となります。
上場後も大東建託株式会社の出資比率は過半数を超えていますが、大東建託管理物件はもちろん他社管理の一般仲介物件も取扱い2020年賃貸仲介件数ランキングでは、大東建託リーシングなどを合わせた大東建託グループが、仲介件数23万3,277件でナンバー1となっています。
※参考文献
https://www.housecom.co.jp/company/history.html
https://www.zenchin.com/ranking/
ハウスコム全体の売上と利益
直近3期の営業収益と営業利益は以下のとおりです。
2020期よりM&Aによる2社を子会社化し連結経営をおこなっています。
営業収益は順調に伸びていますが、2020期4Qは新型コロナウィルス感染症の拡大による影響が出はじめており、計画比ではマイナスになっています。
営業利益はハウスコムテクノロジーズの広告収入未達による減益が響き、計画比および前年比においてもマイナスで終わりました。
ハウスコムテクノロジーズは前述のとおり、2019年にM&Aにより子会社化した「不動産テック」事業を担っています。
営業収益のメインは「不動産広告」であり、4Qに業績が偏る特性があるため、新型コロナウィルス感染症の影響を大きく受けたと考えられます。
新型コロナウィルス感染症の影響は、2021期1Qにおいてもっとも影響が大きくなり、次のとおり営業利益が1Q21ではマイナスに転じました。
「ハウスコム」セグメントごとの売上
2020期までは次の3つのセグメントになっていましたが、セグメントは2021期に変更しています。
2. 仲介業務関連収入
3. その他の収入
2019年7月に子会社化したエスケイビル建材のリフォーム部門と、メインの仲介業務を区分し2021期は2つのセグメントに分けています。
2020期までの仲介手数料収入、仲介関連収入、その他の収入を一本化して「不動産関連事業」とし、新たに「施工関連事業」を加えています。
ハウスコムの短期的な戦略
2021期1Qは新型コロナウィルス感染症の影響を受けましたが、5月には底を打ちすでに回復プロセスに入っています。
ハウスコムの収益は、就職・転勤に伴う人の移動が源泉であり、決算月の3月が業績のピークを迎える特性となっていました。
M&Aによる2社の連結化は年間をとおして、次のような事業により業績を平準化させる効果を生む可能性があります。
1. ハウスコムテクノロジーズのサービス外販事業
2. エスケイビル建材とのリフォーム部門におけるシナジー効果
さらにオンライン接客、オンライン内見、IT重説、オンライン更新への対応が強化され、業務の効率化が進んだことにより、需要抑制期の効率的な事業運営が可能になりました。
また新規出店・新規商品の導入などに経営リソースを集中させることにより、新たな効果が生まれる期待が持てるとも考えられます。
新型コロナウィルス感染拡大第3波が懸念されるなか、2021年3月期における業績が大いに注目されるところです。
ハウスコムの長期的な戦略
賃貸仲介が主要な事業である以上、店舗数の拡大が成長への基本的なセオリーです。
ハウスコムは2022年までに208店舗体制を目差しています。
2022年10月現在、FC店1店舗を含め187店舗を展開していますが、今後は北関東での店舗網の充実と四国への進出を念頭に、全国10万人以上の地方都市への店舗展開を企画しているようです。
これまでも年間10店舗程度の増設実績があり、2022年208店舗の可能性は高いといえるでしょう。
店舗網の拡大とともに課題となるのが、オンライン業務を中心とした不動産テックの充実、そして不動産テックの外部提供による収益性の多様化です。
不動産テックはフィンテック同様、今後はオープンAPIにすすんでいく可能性があります。
ハウスコムが開発・普及させるテクノロジーがオープン性を保有できるかどうかが、2022年までのもうひとつの課題といえるでしょう。