こんにちは、株式会社SHO-SANの高谷です。
今回は、工務店の組織戦略についてお伝えしていきます。
工務店のマーケティングが上手くいかないとき、皆さんはどうするでしょうか。
突き詰めていくと、組織戦略に根本的な問題があることが御座います。
マーケティング会社やコンサルティングを入れても中々上手くいかない…という工務店は、是非「組織構造」に目を向けてみることをおすすめします。
「営業>広報」の集客組織はうまくいかない!?
不動産業界の組織は工務店領域に限らず、「営業部」の力が強くなりがちです。
営業部は業績の直接の立役者となっており、重要なポジションであるということは間違いありません。
しかし、営業以外の総務や工務などその他の業務においても、営業部の発言力が強くなりすぎてはいないでしょうか?
それが特に顕著に現れるのが、広報と営業部の組織構成です。
この二つの組織の発言力の差が開くほど、集客改善がうまくいかなくなる可能性があるというのが私の意見です。
その現象に関していくつかご説明していきますが
大前提として、営業部の発言力が強いことは決して悪いことでは有りません。
あくまで、時々それが集客改善のボトルネックになっている可能性があるということを指摘しているだけだとご理解頂けると幸いです。
「営業>広報」のデメリット①集客の“PDCA”が周らない
マーケティング戦略に対して営業の発言力が強すぎると、どうなるのか。
まず、集客戦略のPDCAが回らないという事態が発生します。
・Do→実行
・Check→検証
・Action→改善
集客の成果を上げるには、計画・実行・検証・改善を繰り返すのが必須です。
集客戦略を練る上での基盤とは、その循環によるデータと経験の蓄積なのです。
しかし、企画や改善の途中で営業部からの“意見”が入ることが、営業部が強い組織で起こりがちになっています。
もちろん、日々現場で顧客と対峙している生きた営業担当者のアイデアや見解は、集客戦略において非常に重要であることは誰も否定しないでしょう。
ただ、営業担当者の“意見”に引っ張られすぎると、PDCAの円滑な循環に支障をきたす恐れがあるかもしれないのです。
営業と広報には「思考の仕方」の違いがあります。
営業職が集客を考えるときの思考は、「打ち手ベース」であることが多くなっています。
どういうことかというと、「現場での思いつき」や「これやってみたい」という発想だけで集客戦略を考えてしまう傾向が強いということです。
「オンライン見学会のほうが集客できるみたいだよ」
たとえば営業が発信した意見であると、このような発想で集客戦略が決まってしまうこともよくあります。
もちろん、営業担当者の発想は、一つの“案”として非常に重要です。
現場でしか体感できない、顧客のニーズや業界の流れのようなものはあるからです。
しかし先述通り、集客戦略で重要なのはPDCAの循環です。
この循環を円滑にするためには、「打ち手ベース」ではなく「課題ベース」による企画と検証が不可欠となります。
集客できなかった時・上手くいった時の双方のデータを集め、比較し
「集客における課題を改善する」という一連の流れを止めないこと
が集客戦略ではなにより重要になると考えています。
「営業>広報」のデメリット②コストがかかる上に成果が安定しない
営業担当者の「打ち手ベース」で集客戦略を進めていくと、ひとつの施策に集中できません。
毎回毎回違う施策を行うことで、集客コストも高くなってしまう場合があります。
加えて、各々の施策は毎回ゼロからのスタートとなるので、成果も上がりにくいといえます。
集客は「挑戦」ではなく「安定」を追求すべきです。
「これやってみよう」「今度はこっち」という打ち手ベースの集客は、言うなれば毎回が“挑戦”です。
実証データがない施策をゼロから始めるには、コストがかかるのはもちろん、成功する可能性も0か100。
私は基本的に、集客とは「70点取れる施策をいかに積み重ねていけるか」だと考えています。
それぞれの施策を一定の成果が見込めるラインまで確実に上げていく工程が集客戦略です。
0か100の施策を継続して「当たればラッキー」というものは、集客戦略とは言えません。
「0か100か」の集客を続けていては、会社も人も、精神も売上も不安定になってしまうことでしょう。
赤点の施策をなくしていくための「課題ベース」の戦略こそが、“安定”した集客の追及の足掛かりとなります。
「営業>広報」のデメリット③“負のスパイラル”へ
「営業>広報」の構図で集客戦略を進めていくと、どんどん“負のスパイラル”に陥っていきます。
「計画」「実行」「検証」「改善」の4つを循環させていくのが本来の形ですが、営業部からの「提案(計画)」と広報部署の「実行」のみしか繰り返されなくなるからです。
しかも「計画」と「実行」をする者同士には、そもそも思考の違いがあります。それにも関わらず、失敗したときに営業部からの
「こうしてみよう」
というアドバイス提案を受け、それをそのまま実行していくとなれば、もはやこれは「戦略」とはいえません。
集客戦略が、単に営業部の打ち手ベースの発案をそのまま実行している「単独の施策」の繰り返しになってしまうのです。
これは例え話ですが、有能な料理研究家(=広報)がいると仮定しましょう。
料理研究家は、発想と研究を繰り返すことで「おいしい料理が出来上がる」という成果が得られるはずです。
それにも関わらず、料理を待っているお客様(=営業部)が「リンゴ食べたい」「チャーハン作って」と突発的な要望を繰り返していると、料理研究家は試行錯誤の時間を得られず、その手腕も宝の持ち腐れになってしまう恐れがあります。
料理研究家は、研究してこそ本領を発揮できるものです。
広報部署もまた、集客を研究してこそ本領が発揮されます。
「これおいしい!」
という提案や感想は、研究を進めるためのひとつの大切なエッセンスにもなりますが、周りからの意見にばかり引っ張られていては、目的である“おいしい料理”は生まれないのです。
集客戦効果を最大化させるための組織構造
私は決して「営業は広報に口出しするな」「双方が関わるな」ということを言いたいのではありません。
何度も申し上げている通り、現場の声は集客戦略を進めていくにあたり非常に重要です。
リアルの声やリアルな反響を聞けるのは、営業だけ。
この情報は必ず集客戦略に活かさなければなりません。
しかし、広報部署が営業の声をそのまま“鵜呑み”にしなければならない組織の構造が、集客戦略を進める上では良くないのです。
広報と営業を分離すべきではない
ここまで説明してきた「良くない組織構造」は、下記図の左で示しています。
広報と営業の重なるところだけで“営業色”の強いマーケティングをしていては、成果は中々あがりません。
工務店に求められるのは、「営業の要望は絶対」ではなく、広報部署は独自でPDCAの循環を回しつつ、営業の声を適切に集客戦略に取り込む構造です。
そのために不可欠なのは、営業のニーズを理解してうまく集客戦略に落とし込む「仲介者」の存在です。
仲介者は、上記右の図のように広報と営業、両者に跨いで配置します。
そして、広報は広報で独自でPDCAを回す施策を行い、営業の要望や提案は仲介者=マーケティング責任者に上げてもらいます。
そこから広報に下ろすことで、営業の言葉を鵜呑みにしない集客戦略が可能となるのです。
「トップ」の役割
マーケティングを先導する仲介者に適任な存在。
それは、営業経験者かつマーケティング知識を要している人でしょう。
とはいえ、「そんな人材いないよ!」という工務店さんのほうが圧倒的に多いことと思います。
そこで私がオススメする施策は、社長が営業と広報の間に入ることです。
工務店の社長の多くは営業経験者、あるいは現役で営業している人であり、集客の重要性も理解しているものです。
「営業経験」というのは、工務店の集客には不可欠な要素です。
たとえば、「建て替え層を集客したい」と営業側が要望を出したとき、営業経験がない人はせいぜい「建て替え宅の見学会をする」くらいの案しか思い浮かばないでしょう。
しかし、
「なぜ営業側が建て替え層の集客をしたいのか」
と経験則から考えることができれば、
建て替え層=「上物だけに予算をかけられる人」「予算が潤沢な人」だと推測できる場合もあります。
その結果、
「販促物のデザインに高級感を出してみよう」
「高所得者が集客できれば、建て替えにこだわらなくてもいいのでは?」
といった考えにまで至ることが出来る可能性があります。
つまり、広報側に営業経験があれば、営業が出した「打ち手ベースの提案」を聞いた時点ですでに課題が見えるということです。
さらにトップならば、今の集客戦略の状況を把握しているため「今やるべき施策なのか」の判断も可能です。
営業と広報の分離ではなく、両者のことがわかる仲介者をただ一人配置するだけで、双方の潤滑油となり、営業側の意見を集客戦略に最大限活かせる構造ができるのです。
まとめ:営業とマーケティングの「連携」を深めるために組織構造を見直すべき
営業の言葉をただ鵜呑みにするのではなく、背景にある細かいニーズを広報側が察知できれば、ますます両者の連携は図られていき、集客効果も高まります。
そもそも営業とマーケティングは、連携を強固にすべき。
営業からマーケティングを切り離すのではなく、営業の要望や提案をうまく集客戦略に取り込むために、「広報より営業が強い」という構造を見直す必要があります。
改善策は、営業のニーズを集客戦略に落とし込む責任者のポジションを設けることです。
中小工務店では、このポジションに最適なのは社長になるでしょう。
組織の構造だけでビジネスチャンスを逃している工務店は、決して少なくありません。
予算を割いてコンサルやマーケティングを依頼する前に、今一度、組織構造を見直されてみてはいかがでしょうか。
それでは、工務店領域のマーケティング機能発展を祈って。
株式会社SHO-SAN
代表取締役社長 高谷一起