不動産仲介業務の中には、物件探しや内覧、契約書類の準備などフェーズに応じて多岐にわたる業務がありますよね。
みなさんは日頃の営業活動において、それぞれの業務でどのようなアウトプットをしているでしょうか?
また、それぞれのアウトプットについて自分のスキルやクオリティを意識しているでしょうか?
今回の記事では【購入者目線で考える不動産購入取引】シリーズとして、不動産仲介の業界においても「ヒト」で選ばれる時代の今、求められる価値とスキルについてご紹介します。
この記事では、
・各業務で必要なスキルや知識
・不動産仲介営業パーソンの現状
・これからの不動産仲介事業で重要となる提供価値とスキル
についてまとめていきます。
不動産仲介をする上で生じる各業務について
まず、不動産仲介営業は、大きく売買仲介と賃貸仲介に分けられます。
どちらも「顧客の要望に合った物件を紹介して契約する」ということでは共通していますが、具体的な仕事の内容や必要なスキルはかなり異なります。
【売買仲介】
不動産を買いたい人に対して要望に合った物件を紹介して販売するのが基本です。
取り扱う対象は、土地や新築・中古の住宅やマンションから、ビル、工場、倉庫といった事業用物件まで広範囲にわたります。
このため、特定のジャンルに特化している会社が少なくありません。
加えて、売買仲介には不動産だけでなく金融・法律・税務といった分野の知識が必要です。
個人のほか企業、同業者、金融機関などとの交渉もあるため、臨機応変なコミュニケーション能力が求められます。
【賃貸仲介】
賃貸仲介も、物件を紹介して契約するという点は売買仲介と共通しています。
ただし、ローンや権利移転が関係する取引はないため、金融や税金、法律の知識は売買仲介に比べると求められることは少ないです。
売買仲介と賃貸仲介の大まかな違いからも分かるように、売買仲介業務には覚えるべきことがかなり膨大にあります。
売買営業の経験は賃貸営業に転身後も応用可能ですが、その逆の場合は足りない情報やスキルを補う必要があって苦労された方も多いかもしれません。
今回の記事ではより高いレベルが営業パーソンに求められる売買仲介について掘り下げていきます。
売買仲介は、厳密には「売り仲介(元付け業者)」と「買い仲介(客付け業者)」があります。それぞれの基本的な仕事の流れは以下のとおりです。
売り仲介の仕事の流れ
1.売主を探す(チラシや一括査定サイトを活用)
2.物件の査定
3.売主と媒介契約締結
4.購入希望者を探し(チラシ・Web広告など)、売買交渉
5.契約書の準備と締結
6.引き渡し
7.アフターフォロー
買い仲介の仕事の流れ
1.購入希望者の集客(チラシ・Web広告など)
2.購入希望者に対して物件を選定
3.内覧
4.売買交渉
5.ローン探しやローン事前審査等の手続き(必要な場合)
6.重要事項説明
7.契約書の準備と締結
8.引き渡し
9.アフターフォロー
上記の他にも日々の業務では以下のような作業もありますよね。
・広告用の物件撮影
・ポスティング
・案内予定の物件の下見
・撮影した物件の入力作業
・アポ取り/追客(メール、電話など)
・案内用資料の作成
・見込み客のフォロー
ざっと洗い出しただけでも、かなりの量があります。
各業務で必要なスキルや知識
では、実際に各業務で成果を出すために必要なスキルは何でしょうか?
とりわけ重要なスキルは「コミュニケーション能力」「税金の知識」「接客や営業の経験」です。
コミュニケーション能力
仲介営業は、顧客である個人・法人のほか、他の不動産会社や金融機関、保険会社、ハウスメーカーといった、さまざまな業種や立場の人とやり取りする必要があります。
このため、状況に応じて臨機応変に対応できるコミュニケーション能力が求められます。
税金の知識
売買仲介では、顧客から税金について質問されることが多いため、不動産売買に関する税制の基礎知識を身につけておけば信頼感が高まります。
ただし、税制は頻繁に改正されることから、常に最新の内容を把握しておかなければなりません。
接客や営業の経験
不動産業界の未経験者でも、営業や接客の経験がある人は不動産の仲介営業に対応しやすいといえます。
基本的なビジネスマナーやコミュニケーション能力は身につけていると考えられるからです。
特に、「お客様の本音を引き出すのが得意」「新規顧客の獲得率が高い」といったスキルや経験は重要です。
他にも、細かい業務ごとに洗い出すと
【売主を探す/購入希望者の集客】であれば、いかにその土地を詳しいかが重要な知識となります。
近隣で取引された売買事例をよく研究したり、相場を把握、これから起こる土地開発など先読みする力も求められます。
また、人脈もとても大事です。
【物件査定】であれば、土地についてはももちろん、面積、立地条件、間取り、日当たり、周辺環境など住宅に関するあらゆる知識が必要です。
今はAIによって個人でも査定シミュレーションができるサービスが多く出ています。
プロとしてAIでは補えない部分をどう評価していくかは知識や経験が非常に重要です。
不動産鑑定評価書の作成を独占業務として認められている不動産鑑定評価のプロフェッショナルである「不動産鑑定士」の資格等があるとかなり提供価値としては高くなります。
この資格を持っていると鑑定評価を基礎にした土地有効活用などのコンサルティング業務も行えます。
【内覧】には入念な準備が必要です。
内覧はお客様が物件を理解できる最大の機会、とても重要です。
お客様から聞かれると予想される質問に対しては、リサーチを行い、即答できるようにしておくことが望ましいです。
お客様に信頼してもらえるコミュニケーション、常にお客様の要望を先回りして考え行動する細やかな気遣い、対応力など多くのスキルが求められます。
【ローン探しやローン事前審査等の手続き】にはファイナンシャルプランナーの知識があることが望ましいです。
ファイナンシャルプランナーは、税金、住宅ローン、不動産、投資、相続など、個人にまつわるお金のエキスパート。
不動産のことは不動産会社に、ローンのことは金融機関に、と考えるお客様もいますが、数少ないお客様との面談のチャンスを最大限活用するためには、営業もローンの知識を身に着けておくべきです。
お客様としても、金融機関に相談すれば、その金融機関の商品を中心に紹介されることになりますが、不動産会社の営業にローンの知識があれば、複数の金融機関からよりよいローンを選ぶことが可能になります。
【契約書の準備】には権利関係や税金、建築など広範囲の専門知識が必要で、契約までの手続きも複雑です。
不動産売却は売買代金が高額となる取引であるため、一般的に記載項目が多い傾向にあります。
不動産仲介営業パーソンの現状
さて、これだけ多くのタスクがあり、土地・金融・法律・税務など様々な専門知識が絡んでくる業務ですが、今の日本の不動産仲介業界ではこれら全てのプロセスを一貫して、1人もしくは2人レベルの人員で担当していることが一般的です。
ですがどうでしょう?
やはり完璧な人間はいないもので、強みとするスキルというものはどうしても分散してしまいます。
例えば、物件探しが得意という人もいればローン探しが得意な人もいませんか?
しかし、購入者からすると、人生で最も高額な買い物と言っても過言では無いわけで、どれだけ多くの業務があろうとそれぞれにプロフェッショナルな知識と経験が求めることは当然ですよね。
その要望に応えるために、全ての業務で100%のアウトプットができる人材を揃えることはかなり難しいことです。
現状は全てのプロセスを全部1人で担当しているので、営業パーソンのスキルにかなり偏ったアウトプットになっているケースがほとんどです。
すなわち、同じ条件・同じ予算で物件購入を依頼したのに、担当者のスキルやレベルによって物件そのものに対する満足度やローンの種類、資産形成のプランニングなど、全てが変わってくるということになります。
これからの不動産仲介事業で重要となる提供価値とスキル
多くの業務がある中で、各タスクとプロセスにきちんとバリューを発揮できているケースはかなり限られているのが不動産業界の現状です。
企業ではなく選択基準が「ヒト」に段々と変わってきている中で、不動産営業パーソンのスキルをどう評価・公開し、適切なバリュー説明ができるか、ということがこの先求められる企業としてのあり方や体制です。
不動産業界の中でも特に売買仲介のお客様は多くの場合が初めて売買する方で不動産売買の素人です。
そこに対して不動産仲介業者の料金設定、担当範囲、業務内容はかなりブラックボックス化しています。
それは、各業務の細かなタスクの可視化ができていなかったり、タスクに必要なスキルと基準が設定されていない、または曖昧であったり、どの営業パーソンがなんのタスクに強みを持っているかを把握できていないことに起因します。
今ではAIの技術が発達したことによって個人でも物件の査定やローンのシミュレーションができたり、契約書のみを2万5,000円程度で作成してくれるサービスを提供している企業もあります。
今まで1人で一貫してやってきた膨大な業務が切り出され、1つ1つの専門度を極めたサービスが出てくる中で、既存の不動産仲介会社は各プロセスで「こんなプロフェッショナルなスキルを提供できるから、我が社に任せてください!」と説明できるようにならないといけないということです。
まとめ
売買契約の場合は物件の価格によって手数料が変わってきますが、物件価格400万円を超える場合、 3%+6万円の手数料を仲介会社はもらうことになっています。
これはかなり大きな額です。
その額に見合うと思ってお客様から選ばれ続けるためにも「〇〇な価値を発揮することができるます」ということを証明できるだけのスキルと知識、そして根拠が必要です。
そのためにもまずは
・そのタスクに必要なスキルと基準の設定
・どの営業パーソンがなんのタスクに強みを持っているかをしっかりと把握する
上記3つのことから検討してみてはいかがでしょうか。