街角モデルハウスを建築するには土地の選定はもちろんですが、当然のことながら初期費用として大きな金額もかかります。
ですから、思いつきで始めるわけにはいきませんし、半年なら半年、11年なら1年をどのように運用するかというのは、ある程度スケジューリングしてから取り掛からなくてはいけません。
今回のコラムは、このスケジューリングなどについてお話をしていきましょう。
ただ、スケジューリングというか季節を考えると言った方が近いかもしれません。
色々なやり方がありますが、今から5年前に私が実際に企画をほぼ立案して建ててもらった街角モデルハウスの事例を取り上げていきたいと思います。
モデルハウス設置期間には理由がありました
6月上旬オープン➡翌年3月中旬まで
概ね9ヶ月を街角モデルハウスの運営期間としました。
9ヶ月というのは特に意味はありません。
ただスタートの6月と終わりの3月というのにはしっかりと意味があったのです。
①6月上旬・・・梅雨が始まる
北海道は違いますが本州の多くの地域が梅雨に入ってきます。
梅雨というのは湿度が高くなり、じめじめとして最も不快な時期として認識されているでしょう。
この時期に住宅を見学するお客さんは、実生活の中で「また嫌な梅雨が来たね」と間違いなく思っているはずなのです。
家をこれから買おうという人もしくは建て替えようという人は、梅雨の湿気を凌ぐような高性能な住宅に住んでいる確率は極めて低いといえるでしょう。
例えば少し古めの県営住宅に住んでいると仮定しましょう。
この場合梅雨の時期ともなれば室内はジメジメしますし、物件によっては押入れの中がカビ臭くなるようなこともあるでしょう。
やむを得ずエアコンをドライ設定にして回し始めるという時期になるかと思います。
「梅雨時でもジメジメしない家をぜひご見学ください」
私が関わったこの会社をS工務店としましょう。
S工務店は室内の湿度を40%から60%に保つシステムを採用していました。
基本的にはこれを標準採用としていたので、この会社の街かどモデルハウスに来るお客さんは、皆さんが口を揃えて「なんでこんなに快適なの?」と聞くのです。
モデルハウスに来ると皆さんそう思うわけですが、集客に関してS工務店としてはこれが有力なキャッチコピーとなったわけです。
集客数の実際を話します
この時は街かどモデルハウスのオープンということもありましたので、梅雨時でもジメジメしない家とのコンセプトがどれだけの人を集めたのかは正確には測れません。
6月初旬の土日にオープンイベントを開催したのですが、来場数は36組でした。
地場小規模工務店にしては十二分な数字だといえます。
オープンイベントはこの二日間だけで、その後は土日だけ営業マンもしくは事務の女性が張り付くという形で営業をしていました。
その結果、6月だけの1か月間で新規の来場数はオープンイベントを除いて8組ありました。
つまり、オープンイベントとその後の新規来場を合わせると6月だけで44組のお客さんの名簿を得たことになります。
この数字を総合展示場に出店しているハウスメーカーに見せれば「けっこう人が来たね~」となる数字です。
総合展示場に出店すれば、毎月の出店料が100万円を超える場所も珍しくありません。
それと比べれば、極めて安い費用で展示場を維持してることになります。
②梅雨明けから9月いっぱい
この時期はまさに猛暑でしょう。
ジメジメとした梅雨は終わりましたが、その次にやってくるのは最高気温が40℃にもなるような酷暑です。
「真夏なのにエアコン1台で家全体が涼しい展示場」
今度はこんなキャッチフレーズで攻めていきました。
質の悪い住宅なら別ですが、ある一定の技術を持ってちゃんとした家を作ればエアコン1台で家全体を涼しくするのは難しくありません。
実際にもこのモデルハウスは40坪近くの建坪がありながら、たった1台のエアコンで全館を冷やしていたのです。
もちろんそれには強力な断熱性というのもあったのですが、社長の工夫でひとつのエアコンから出る冷気を全館に回すような(一種のエアサイクル)システムを構築していたのです。
私はもちろん現場に行きましたが、これが驚くほどによくできた家で本当に涼しいのです。
しかも、その涼しい原理が住宅の素人であっても、一目でわかる仕組みになっていて、ものすごい説得力を伴っていました。
このような形で9月いっぱいまでの2ヶ月間ほどは、梅雨時とは違ったキャッチフレーズをつけて集客を図ったのです。
③10月から11月
爽やかな秋の季節が到来しました。
この時期にどんなキャッチフレーズをつけたか・・・となるわけですが、残念ながらこの時期は何も思い浮かばず(笑)特にイベントをすることもなく通常の営業を続けました。
④12月から2月上旬
いわゆる厳冬期ですね。
12月の頭ぐらいはまださほどでもないのですが、正月も近づきそして1月中旬下旬となるにつれてどんどんと寒くなってくる季節です。
「40坪の家が暖房ひとつでぽかぽかに」
細かいキャッチフレーズは覚えていませんが、ニュアンスとしてはこのような感じでした。
年末年始そして最も寒いといわれる1月末あたりには、このような文言のチラシを撒いて集客を図りました。
ちなみに1月末に行ったイベントは、土日の新規来場組数は10組でした。
さすがにオープン時のような集客はできませんでしたが、地場の工務店としては完全に及第点といえるでしょう。
そして、イベント以外の土日は全部で8組の集客がありましたので、1月だけで18組の名簿を手に入れましたことになりました。
⑤2月中旬から3月中旬
展示場の売却が3月の下旬と決まっていたので、残りはあと1か月の勝負です。
この時のキャッチフレーズにしたのは花粉でした。
「花粉症の方必見!花粉を除去する家」
やはり細かい表現まで覚えていませんが、だいたいこのような感じのキャッチフレーズで残りの1か月を攻めたのです。
1か月の間に1度だけ土日を使ってイベントを実施しましたが、この時の新規集客は15組でした。
花粉症を含めたアレルギー症状を持っている人はおびただしい数にのぼります。
私も重度のすぎアレルギーなので、もしこのようなキャッチフレーズを見れば、この展示場に足を運ぶ可能性は十分にあります。
仮に地場の工務店ではやらずにハウスメーカーで絶対にやると決めていたとしても「とりあえずこのイベントには行ってみようかな」と考えても不思議ではありません。
あなたの工務店でも対応できるはず
いかがでしょうか。
S工務店は何か特別な仕様を持っている工務店というわけではありません。
通常のレベルよりは高いものがありますが、基本的には皆さんの会社でも標準施工で行なってるものがほとんどだと思います。
しかし、大事なのは見せ方です。
しっかりした断熱仕様の家であれば、最小限の暖房機器で家の中はかなり温まるでしょう。
「うちの家だってそんな感じだよ」という声も聞こえてきそうですが、普通に行なっていることを大きな声でアピールするのです。
これが営業のコツといってもいいでしょう。
S工務店で、しいて特殊な仕様といえば、湿度を40%から60%に保つシステムです。
これについては100万円を超える機器が導入されていますので特殊といえば特殊かもしれません。
しかしそれ以外のことは皆さんの会社でも十分に通用する内容だと私は思います。
花粉についてもそうでしょう。
しっかりとした室内換気システムが働き、それにプラスして玄関でコートを脱ぎ、それを掛ける場所を作るなど生活スタイルを考えた間取りを提案して花粉防御の提案をするのです。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
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