世の中には〇〇工法なるものが無数に存在していて、お客さん側としては何が何やらさっぱりわからないというのが現実だと思います。
問題は売手側に当たる住宅会社にもあります。
昔ながらの在来軸組工法一本で勝負している工務店の社長が、新築住宅受注の減少に伴い「何かプラスアルファしたほうがアピール力が出るかな」と考えて採用するケースがあります。
また、たまたま目に止まった工法に惚れ込んで、これは素晴らしいと、その工法を取り入れるケースもあるでしょう。
ただ、いずれの場合でも、売れない時はさっぱり売れない事態に陥ります。
今日のコラムでは、工法は素晴らしいものの、販売不振に陥ってしまう理由を解説していきます。
「とりあえず採用してみよう」が失敗の典型事例
このケースが実に多いのです。
在来軸組工法だけでは目新しさがないと思っていたところへ、ネットなどで〇〇工法などと書かれた記事を目にしてしまうと、これを採用すれば一人ぐらいお客さんを引っ張れるかもしれないな、こう安易に判断してしまうわけです。
①待ちの営業で動かない
「問い合わせが1件ぐらい増えないかな」
間口を広げれば集客が増えるのではないかという安易な考えではだめです。
採用した工法を、ホームページにバナーで貼り付けておけば、そこをクリックしてくれ、そのまま問い合わせまで進むケースもあるでしょう。
しかし、基本的には自分から積極的にアピールしていかなければ、新しい工法を採用しただけでバンバンとお客さんが集まるなどということはあり得ないと思ってください。
②従来の工法と新しい工法を並列で扱っている
在来軸組工法と新しい工法を並列で扱うこと自体に問題はありません。
しかし失敗する工務店の折衝現場では、次のような会話が頻発しています。
工務店「〇〇工法もやっています」
客 「少しお高くなるのですか」
工務店「坪で2万円ほど高くなりますね」
客 「そんなに上がるんだ・・・普通の在来工法でも問題ないんですよね?」
工務店「はい、もちろん変わりません。2万円出さなくても十分だと思います」
このような会話が実に多いのです。
新たな工法をせっかく取り入れているのに、お客さんから少しでも問題点を指摘されると、簡単に折れてしまうのです。
こうなると、結果的には一般的な在来軸組工法になってしまうので、競合が入る余地を与えてしまうわけです。
本来であれば、競合に対して優位に立てる新しい工法を取り入れているはずなのに、その意味が全くなくなっているではないですか。
では、〇〇工法を取り入れたことにより、売上をがんがん伸ばしてる工務店の会話事例です。
工務店「〇〇工法もやっています」
客 「少しお高くなるのですか」
工務店「坪で2万円ほど高くなりますね」
客 「そんなに上がるんだ・・・普通の在来工法でも問題ないんですよね?」
工務店「普通の在来工法でももちろん一定の性能は出るので問題ありません。しかし私たちは〇〇工法を強くお勧めしています。その理由ですが・・・」
先ほどの会話と比べてみると最後の工務店の対応だけが違います。
新しい工法を導入しても全く売れない工務店は、 前者のようにお客さんに何か突っ込まれると、一般的な在来軸組工法で全く問題ありませんと引き下がってしまうのです。
ところが売ってる工務店は、後者のように強気に出ます。
例えばある工法を導入すると、在来軸組工法工法より坪で2万円高くなると仮定しましょうか。
お客さんに対しては30坪の家であれば60万円の高い見積もりを出すことになります。
しかし、そこを押し切れるかどうかが勝負。
もし、お客さんが「高いから今回はいいです」と断ってきたとしても、それなら仕方がないと腹をくくれるかどうかなんですよね。
500社以上の加盟を誇る住宅VCのトップ加盟店
住宅フランチャイズではありません。
フランチャイズほど強い縛りはないのですが、ボランタリーチェーン(VC)という組織があることはご存じでしょう。
全国に500社以上を抱える住宅 VC があるのですが、ここで断トツの売り上げを誇る工務店の社長を取材したことがあります。
「〇〇工法を標準で入れているから売れるんだよ」
500社以上ある会員工務店の中でダントツの売り上げを誇ってるわけを社長はその秘訣を教えてくれました。
退路を断っている。
一言で表現するとこうなるでしょう。
この会社は、もともと在来軸組工法でやっていたのですが、ある工法に社長が惚れ込み、それ以来全ての物件に対してこの工法を標準と設定したのです。
ここまで言い切るとのこと。
さすがにお客さんが引いてしまわないかと思う人もいるでしょう。
ところが、この会社ではそのような人はほぼ皆無だそうです。
社長が自信を持って押せば、お客さんはよほどのことがない限り納得するのです。
途中で競合が現れても、特殊な建築工法のアピールをすることにより、勝率が圧倒的に上がるとも話していました。
どん底営業マンが奇跡のV字回復
10年以上前になりますが、静岡県である大きな住宅会社が倒産しました。
本社ビルの屋上には、大きな社名を掲げた看板が掲げられ、走行中の新幹線からも、はっきりとそれを読み取れた記憶があります。
そんな大きな会社だったのですが、悪い噂は以前から耳にしており、やはりという感じで会社をたたむことになったのです。
倒産すると様々な問題が発生するわけですが、そこにいた社員の転職問題もその一つでしょう。
たくさんいた営業社員の一人が田舎に帰ったのですが、先程お話をした会社に営業マンとして面接に来たそうです。
倒産した会社における昨年度の販売実績は年間たったの1棟。
私が社長であれば到底採用できませんが、いろいろと大変な思いをして田舎に帰ってきた30前後の青年を見て、社長は不憫に思い採用したそうです。
ところがこの青年が、たった1年で大爆発することになりました。
倒産した会社は純然たる在来軸組工法だったそうですが、転職して新たな工法に出会った彼は、腹の底からこの工法に心酔したらしいのです。
これが彼を変えました。
お客さんへの説得力や進め方の迫力がこれまでとは全く変わったのです。
前年度1棟しか取れなかったのですが、転職した次の年には年間で10棟を受注したそうです。
「そんなことがありえるのですか?」私はすぐにこう聞きましたが、社長からの返事は「みんな同じことを言うんですよね(笑)」
特殊な工法を用いる場合にはそれと心中する
心中してはダメですが、気持ちとしてはそういうことになります。
もちろん前提として、経営者を始め販売の最前線に立つ営業マンが「この工法は素晴らしい」と腹に落とし込むことが大前提です。
安易に新しい工法を採用する工務店
安易と言うとさすがに語弊があるかもしれませんが、在来軸組工法以外の工法をラインナップに揃えれば、それだけ受注の可能性が高まるのではないか、と簡単に考えている工務店も一部にはあるようです。
取材に応じてくれた社長の話を聞けば一目瞭然ですが、なんとなく間口を広げただけでは受注は増えません。
新しい工法を採用するのであれば、本当に腹の底から惚れ込んでから採用してください。
実際にも相当数の会員を抱える工法ボランタリーチェーンを知っていますが、全会員数の半数以上はいわゆる幽霊会員と言っても過言ではない状態です。
つまり、入会金が安いのでとりあえず加盟したものの、工法のラインナップの一つとして揃えただけなので、お客さんへの説得力に乏しく、新築受注には全く寄与しないのです。
そして、年会費は数万円とわずかなので、脱退することもなくそのまま幽霊のように権利だけ保有するという状態になるわけです。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。