今回のコラムは新築を取り扱う住宅会社の経営者や幹部の方に向けて発信をさせていただきます。
皆さんは部下となる営業マンの接客シーンを見たことがあるでしょうか。
指導の一環で数回は見たことがあるという方もいらっしゃるでしょうが、全く見たことないという幹部の方が多いはずです。
固定の住宅展示場であれ、新築現場見学会であれ、初回面談が勝負となる新築住宅営業において、初見の接客能力が極めて大きな役割を果たすことはお分かりだと思います。
つまり、ここを【改善すること=会社の利益増】だと思ってほしいのです。
会社の利益増になるのですから、接客を分析し、悪いところは叩き、それを改善していけば会社が儲かるという単純な理屈になります。
今から20年以上前になりますが、2001年から営業マンの接客を見る覆面調査を私は行っています。
これまで文章にまとめたことは一度もなかったのですが、 今回初めて覆面調査の内容を簡単にまとめてみます。
新卒から3年目程度が対象
もちろん10年選手でも20年選手でも構わないのですが、キャリアのある営業だとへそを曲げる可能性もありますので、基本的には若手を対象に覆面調査を行います。
まずは、訪問日時と訪問客の人着を、展示場にいる上司に伝えます。
覆面調査当日はその時間ぴったりに展示場に訪問するのですが、他の営業が対応したらまずいので、そこは上司にうまく差配してもらいます。
こんな形で接客を開始し、だいたい60分程度の覆面調査を行うのですが、私がどんな質問をしていくのか書いていきましょう。
覆面調査で最低限確認するポイント
①「おたくはどんな会社なの?」
実はこれがとても大事なのです。
いわゆるコンセプトというものですが、お客さんに対して「弊社は〇〇を念頭において家づくりをしています」これにしっかり答えられなくてはだめ。
例えば空気環境にこだわっている住宅であれば、その旨をしっかりと伝えればいいですし、デザイン性にこだわっているのであれば堂々とデザイン性の高さを主張すればいいのです。
コンサルティング先の某社の事例
某社とさせていただきますが、 あるコンサルティング先の話です。
立派な展示場を持ってる会社なのですが、会社のコンセプトが定まっていませんでした。
私が指示したのは3分程度の紙芝居形で話をできるフリップの作成です。
会社の歴史や成り立ち、なぜその地域で強いのか、あるいは土地の情報を他社よりも的確に入手できる理由などについて説明したものです。
社員の顔写真も載せていますし、関係会社や大工さんの顔も掲載しています。
しかし、長々とこれを離しては飽きられてしまうので、とにかく3分間でしっかりと話をまとめられるような内容となっているのです。
このフリップを用意してから明らかに変わった事が一つ。
「弊社のご説明をさせて頂きたいので3分だけお時間をください」このように着座を勧めると、ほぼ100%のお客さんが座ってくれるようになったのです。
着座さえしてもらえれば3分で終わるということはまずありません。
それがきっかけとなって、長時間の折衝に持ち込むことも可能なのです。
自社のコンセプトを説明できる上に、着座折衝に持ち込むことも可能である一石二鳥の戦略なのです。
話が少しそれましたが、会社のコンセプトをしっかり話すと、お客さんの信頼を勝ち取れるということだけ覚えておいてください。
②設備仕様などを確認してみる
「床材は何ですか?」
このような感じで、 展示場に使われてる素材などをそれとなく覆面調査で聞いて行きます。
社長にご忠告したいのですが、一線の営業マンは、この答えに的確に答えているでしょうか。
試してみるとわかるのですが、若手営業マンは意外なほどに知らなかったり適当に答えたりしています。
この程度のことに答えられないのでは、お客さんの信頼は一瞬にしてなくなるでしょう。
③耐震性など構造に関する質問をする
「耐震等級はいくつですか?」
この質問は定番だと思いますが、もし耐震等級3を全件において取得する住宅会社であれば、営業マンは自信を持って答えるでしょう。
その時にすかさず「でも耐震等級3をとると間取りにかなり制約が出るんですよね」「余分にお金もかかるんでしょ?」このような切り返しをして反応を見ます。
十分想定される質問だと思うのですが、この質問にたじろぐ営業が多いんですよね。
その逆に耐震等級3を取らない、もしくは積極的に耐震等級を取らない住宅会社の場合は、素直にうろたえてしまうのです。
④雑談を振る
何でも構わないのです。接客の途中で雑談を適宜折り込んでいきます。
「学生時代とかスポーツやってたの?」
「こんな立派な展示場なんか誰が建てるのよ」
「住宅の営業って大変でしょ」
何でもいいのです。
とにかく目先を少し外したこのような雑談を振っていきます。
住宅営業の仕事は雑談力を試されるのですが、若手社員になると、このような突然の振りに対して愛想笑いを浮かべて終わってしまうケースが散見されるのです。
ですから、私のロープレ研修では、このような雑談に対するかわし方や対応方法についてもみっちり訓練をします。
きりがないのでこのぐらいでやめますが、とにかく覆面調査で潜入をした時には、事前に用意した質問に加えて、その時の流れに合わせて様々な問いかけをしていきます。
覆面調査では必ず映像を残す
20年前でしたら大変だったかもしれませんが、今は安価で高性能な小型カメラが簡単に手に入ります。
私もこれらの小型カメラを数種類手元に持っていますが、これらを駆使して接客シーンを記録に残します。
覆面調査が終わった後は、この映像を事務所のパソコンで全て解析します。
どうでもいい会話は省きますが、基本的には全ての会話を文字起こしして、レベルが高くうまい切り返しをしたものから、レベルの低いものや、 明らかに間違った答えをした内容まですべてを列挙します。
これをまとめて報告書にするのですが、さらに研修などを行う場合には、 覆面調査の対象となった営業マンも参加させてこの映像を流しながら評価をしていきます。
「うちの営業ってこんな感じなんだ」
社長や幹部には極力このビデオを見てもらうのですが、 ほとんどの方が驚かれます。
特に新卒や若手の営業に多いのですが、明らかに事実と違う内容や、虚偽の内容を本人もわかっていながら話しているようなケースも多く見受けられます。
事実と違ったり虚偽の内容は、後々大きなトラブルの元になりますし、そもそもこんな接客をしていては契約にはそうそうなりません。
社長と幹部にはこの事実を分かってもらいたいのです。
営業の実態が分からずに、ただお尻を叩いてるだけでは数字が上がるわけがありません。
Zoomによる覆面調査
コロナ前には無かったやり方ですが、Zoomなどのシステムを使って商談をするのがごく当たり前になりました。
以前は私も必ず展示場に出向いて覆面調査をしていましたが、Webシステムを使うことによって覆面調査が極めて楽になったのです。
私がお願いする経費もかなり抑えられるので、住宅会社の方にもメリットがあるわけですが、まだ皆さん慣れていないせいか Webシステムを使った商談はぎこちないケースが圧倒的に多いです。
これが実態ですが、ある全国ハウスメーカーから依頼を受けて入社3年目の男性営業とズームに初回面談を行ったことがあります。
もちろん彼は、私のことを一般のお客さんだと認識して初回面談を行ったのですが、内容が素晴らしくほぼ完璧。
資料の出し方も的確でしたし、説明の仕方もほぼパーフェクト。
私が何か質問をすると、それに対応する資料が瞬時に出てくるというスピーディーさでした。
後で支店長に聞いたのですが、 Webシステムを使った商談のロープレを会社では徹底的にやっているそうです。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。