最上階のバルコニーを眺めた営業マンは〇〇に着目し契約を取った

お客さん取材が3度の飯よりも好きな私ですが、今回のコラムでもある興味深い顧客取材の事例をご紹介します。

つい最近の取材事例なのですが、4社と競合した上であるハウスメーカーが受注した案件です。

強豪に勝って受注した要因は複数あるわけですが、今回ご紹介したいのはお客さんのお宅に伺って50平方メートルもある広いベランダにありました。

4社の営業マン全てを自宅に招いたので、4人の営業マン全てがこの状況を目にしたはずなのですが、契約をした営業マン(H君)だけがそのポイントに着目し、 しっかりとした提案を行いました。

その結果二世帯の大型案件を受注できたのです。

広いベランダにどんな秘密があったのか。

そこにあったヒントに、なぜH君だけが気づいたのか。

その辺りを探っていきましょう。

4社競合勝ち抜いた20代の若手営業H君

ハウスメーカーに入社して5年目のH君。

入社時から私は彼のことを知っていますが、会うたびに気になるのが彼の風貌です。

「もう少し太った方がいいよ」

線が細いというか本当に痩せてるんですよね。

彼の健康が心配で心配で仕方がない私ですが、コラムの本論に戻りましょう。

数字に対する異様な執念

新卒時には気がつきませんでしたがH君は数字に対して異常とも思える執念を持っています。

歩合給をたくさん欲しいという住宅営業であればごく当たり前の考えが根底にあるわけですが、それにも増して競合では絶対負けたくないとの性格が大きく影響しているようです。

入社当初はブルドーザー式の営業でガンガンやっていましたが、地頭がいいんでしょうね、すぐに提案型営業に転換しました。

提案型営業をするには高いヒアリング能力が必要

ポイントはここにあります。

提案型営業とよく言われますが、レベルの高い提案をするには細心の注意でお客さんの生活スタイルの要望を細かく把握して見抜く能力が要求されるのです。

H君は比較的早めにこの能力をつけたと私は分析しているのですが、とにかくお客さんを観察するというか凝視するというか何かを見抜く力があります。

もちろん、お客さんの頭のてっぺんからつま先までじろじろ見るわけではありません。

出で立ちはそれなりにチェックするわけですが、乗っている車であるとか鞄や持ち物もさりげなく見ていますし、お客さんのお宅に訪問した時は、かなり細かくチェックすると本人が話していました。

折衝客が住んでいたのは15階賃貸マンションの最上階

マンション自体は古いものの、15階建て最上階部分にあるお宅にお客様が住んでいました。

しかもルーフバルコニーだけど50㎡の広さがあり、これと同条件の物件はなかなかないであろうという代物。

お客さんも実に住みごごちがいいと話していたようで、その快適さが賃貸暮らしを長引かせてたようです。

ルーフバルコニーはほぼ畑状態

初回面談は展示場で行ったそうですが、 2回目の折衝はH君からお客さんに対して「次回は是非お客さんのお宅に伺いたいのですが」と言って訪問したこと。

お宅に伺うとまずはリビングに通されてあれやこれやと話をするわけですが、そのリビングからは50㎡のルーフバルコニーがよく見えたとのこと。

お宅を訪問しリビングの椅子に腰掛けてすぐにこんな会話があったそうです。

H 君「バルコニーすごいですね!家庭菜園だと思いますけどほとんど畑じゃないですか(笑)」
奥様「このマンションのルーフバルコニーが凄く広くて気に入って借りたのですけども、気が付いたらキュウリやナスやゴーヤやらでもう畑になっちゃってますよ」
H 君「一戸建てを建てたらお庭でガンガンできますね」
奥様「もちろんですよ。直植えと鉢植えでは野菜の育ち方も全然違いますからね。今からそれはワクワクしてますよ」

結論からお話ししますと、この時の会話で他の競合3社より1歩も2歩もリードしたのです。

お客さんは一戸建てを建てるわけですが、建物の中と同様にお庭も大事なポイントだったのです。

家を建てるとなると普通は、どんなキッチンにしようかクロスをどうしようか外壁はかっこいいのがいいな、などとワクワクするわけですが、このお客さんは室内と同程度にお庭を楽しみにしていたのです。

そこにH君が言及したことが大きな加点材料となりました。

ガーデニングの知識はなくても大丈夫

訪問してからしばらくの間は家庭菜園の話でもちきりだったそうですが、しばらくしたら奥さんと旦那さんの手招きでバルコニーに来るようにH君は呼ばれ、そのままバルコニーにでて後は野菜の育て方のレクチャーをされるシチュエーションになりました。

これでいいのです。

ちなみにH君はガーデニングのことなどは全く知識がありません。

もちろん家庭菜園の知識もないので、ナスの育て方のコツやいかに大きなゴーヤを育てるかなどということは知るよしもありません。

でも、知らないからこそ聞き役に徹することができるわけです。

相手は家庭菜園のプロ、一方のH君は全く知らない素人の青年です。

40代の奥さんからすれば息子に近いような年齢の若者に、自分が大好きな話を滔々とできるまたとないチャンスなのです。

あなた自身に置き換えてください。

あなたが高校時代に甲子園に出場したと仮定しましょうか。

当然のことながら野球が大好きなわけですが、あなたの自宅にやってきた20代の住宅営業マンが「野球がお好きなんですね」と話を振ってくれば野球の話を嬉々として話すのではないでしょうか。

しかも相手は興味をもって前のめりに話を聞いてくれるのです。

力が入るのも当然ですよね。

そして何よりも話をしていて楽しいはずです。

早い段階でお客さんの自宅に伺う

H君の行動は私がコンサルティングで営業マンに伝えていることと全く同じで安心しました。

コロナという特殊な事情は考慮せざるを得ませんが、初回面談は仕方がないものの、2回目以降のなるべく早い段階で、顧客宅に出向いて折衝するのは住宅営業にとってとても重要なノウハウだとお考えください。

展示場で接客をする時はお客さんの話を聞くことは可能ですが、お客さんの生活は全く見えません。

お客さんの自己申告を延々と聞くしかないのです。

しかしながら、顧客宅に出向いて話をすれば、2次情報ともいえる自己申告に加えて、あなたが直接目で見た1次情報の入手が可能となるのです。

殊更私がご説明するまでもないとは思いますが、この2つには天と地ほどの差が生じるとお考えください。

プレゼンテーションに庭の計画も入れた

これが大きなポイントでした。

お客さんに対して図面提案を皆さんもすると思いますが、その時に庭の提案も行なっている営業の方はどのくらいいるでしょうか。

ある程度は手が上がるような気がしますが、問題はその中身とレベルにあります。

建物だけでは寂しいので、なんとなく庭の絵も書いて出す人はいると思いますが、それは飾りで書いただけであって、本気で受注しようとは思っていないでしょう。

しかし、今回のお客さんは庭も真剣に考えていたので、親身になって庭の希望をヒアリングした上で、現実味のあるプランと見積りを提案したのです。

結論としては庭の受注も400万円程度の内容で取ることができました。

建物プラスアルファの売り上げを得たわけですが、それはあくまでも結果としての副産物です。

庭に対する関心度は極めて大きく、そして重要であることを見抜いたH君の力量が光った案件でした。

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