工務店に在籍する住宅営業社員の営業指導や、会社全体の仕組み作り、展示場設営などのアドバイスが私の本業です。
しかし、住宅会社以外のコンサルティングも20年間にわたって行っています。
今回のコラムで取り上げたいのは、建材会社へのコンサルティング中に起こった出来事になります。
全国各地に建材会社は存在し、工務店をはじめとし地域のパワービルダーや大手ハウスメーカーなどに建材を卸しているのですが、建材会社には工務店ごとに担当営業マンがついています。
この営業に対する営業指導を今年は複数社行っているのですが、彼らを通じて工務店の問題点などが浮かびあがってくるのです。
情報量の違いと認識に愕然としたことが
営業社員B君と零細工務店社長との会話
社長「他の会社の値段も見てからにするよ、ちょっと待って」
B 君「そうですかわかりました。ところで社長はSNSなど新しい媒体で発信をする取り組みなどしていますか?」
社長「Instagramはちょろっとやってるけどね。でも、最後に更新してから半年経っちゃったかな(笑)」
B 君「野村総合研究所の調査では10年後に着工数が50万戸を下回るとが出てますからね。何でも飛びつけばいいというものではないですけども色々とチャレンジしないと」
社長「10年後にそんなに減るんだ。そんな調査は聞いたことないな・・・」
これは実際にあった会話です。
B君との面談で彼から報告が私に上がってきました。
着目して欲しいのは野村総合研究所の調査の存在を、この社長が全く知らなかったことに尽きます。
100社の工務店が知っていて、たまたまこの社長だけが知らなかったのならば分からなくなりませんが、B君が担当する小規模零細工務店の中には、同じような反応を示す社長が他にも何社もありました。
着工数が激減するのは、ほぼ全ての研究機関や、住宅関係者が認めるところです。
この調査を知っている上で「私は異論がある」と言うのであれば問題はありません。
しかし、これだけ知れ渡った調査といいますか情報を知らないことが問題なのです。
情報を掴む努力だけは絶対に怠らない
規模の大きな会社はこれらの情報は必ず掴んでいますが、小規模で行なってる会社は、情報入手の度合いに大きな差があるのは否めません。
30年前のネットがない時代ならいざ知らず、今は自分から情報取りにいける時代です。
情報に右往左往して振り回されてはだめですが、着工数が激減するとの予測がこれだけ出ているわけですから、その調査を聞いたことがないというのは大きな問題でしょう。
① 専門誌のメルマガを購読する
これは一番のおすすめ方法です。
住宅関連の専門誌は様々なものがありますが、私はどれも購読をしていません。
しかし、複数社のメルマガに登録しています。
ある新聞社からは毎日のようにメルマガがスマホに入ってきます。
クリックして開くとその日の見出しが4、5本パッと目に入るのですが、これだけでも業界の動きがかなり分かります。
このように目を通した時「これって面白そうだな」「こんな動きが世の中にはあるんだ」などと感じたものをネットで調べると、ほぼほぼ100%その情報内容をキャッチすることが可能となるのです。
さらに突っ込んで知りたいのであれば新聞をしっかりと購読すればいいのですが、私はこれだけで十分に情報を入手できています。
皆さんにはメルマガの購読を強くお勧めします。
メルマガに登録しまくった結果、 四六時中送られてくるメールにイラついた経験は皆さんあるでしょう。
しかし、住宅業界のメルマガに限ってはそんなことはありません。
メリットのほうがはるかに大きいとお考えください。
②取引業者を情報の窓口と考える
私が工務店経営者だったと仮定します。
家族経営に近い形態でやっているので、取引業者の営業社員とも私が直接やり取りをする規模の会社としましょうか。
住宅設備機器、建材、銀行など様々な業界の担当者が営業を兼ねて接触してくるはずですが、彼らは非常に有益な情報源となります。
私の会社よりは規模が圧倒的に大きいケースが多いでしょうし、業種がそれぞれ違うので、情報の入り方もまた違うはずです。
これだけのチャンスがあるのに、それを活用しないのは実にもったいない話だとは思いませんか。
機転の利く営業担当者であれば、私に対して様々な情報を振ってくるはずですが、その辺りの嗅覚に乏しい人間だと売りたい商材の話だけして終わってしまうことになります。
営業「分かりました、ありがとうございます 」
私 「ところで他の住宅会社はどうかな。現場見学会とか積極的にやっているの。新規客がすごくたくさん集まったとかいう事例とか知らない?」
このような感じでどんどんと探りを入れていくでしょうね。
彼らも他社の動きをベラベラと喋るわけにはいかないでしょうが、全くシャットアウトすることもないはずですので、なんとなくは動向をつかむことはできるでしょう。
すごく原始的なやり方なのですが、工務店の社長から積極的に情報を取りに行く姿勢を見せる場合と、全くこちらからその手の素振りを見せない場合とでは、情報の入手量に雲泥の差が出ます。
「新規をそんなに焦って探す気はないんだよ」
別の建材会社の話ですが、これも私にとっては耳を疑うような話でした。
今度はH君としておきますが、H君と取引先の社長との会話を再現してみます。
社長「うちはいいよ。年間3棟ぐらいしかやらないし、今のところ知り合いの紹介で十分に新規が取れているから、そんなに汗をかいて新規を取る必要もないし。そもそも SNS とか毎日更新するの大変じゃない。うちじゃ手が回らないよ」
これは営業のH君から受けた報告をそのまま再現しています。
確かにこちらの社長は新規には困っていません。
田舎ということもあるし、社歴も極めて古いので地域での信頼性はしっかり担保されています。
特に営業活動をやらなくてもお客さんは集まってくるので、不安がないと言えば嘘でしょうが、社長なりの経験と勘で余分な動きをする必要はないと判断してるわけです。
しかし、これも私から言わせていただければ、そんな悠長なこと言っていて大丈夫ですか?となります。
年間に30、40棟とやっている会社は将来の新築着工数激減予想に敏感な反応をするのですが、その逆に年間2~3棟の会社は妙に安心してる節があります。
新築着工数の激減はあくまでも予想です。
コロナによって着工数がかなり減るのではないかという予想も出ていましたが、結果としてはそこまで落ち込まなかったという予想外れも現実には起こっています。
しかし、物事は悪い方に基準を合わせた方がいいでしょう。
10年後の着工数が50万戸を切るといわれているのですから、その数値になったと仮定した動きが必要です。
例えコロナ禍においても、年間2~3棟の受注を変わりなく取れたとしましょう。
ただ、この成功談にあぐらをかくのは危険なのです。
予想が的中したことを想定して、今までのように新規客がうまく集まらないと仮定し、SNSなどによる新しい新規獲得策を練るべきでしょう。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。