【購入者目線で考える不動産購入取引】不動産ファミリーに見る高額不動産仲介の海外の状況

不動産仲介業務をされているみなさんは日頃の営業活動において、どのようなことを意識しているでしょうか?

この記事をお読みいただいているみなさんはきっとお客様の好みをしっかりと把握して、最適な提案をしようと心がけていらっしゃる方ではないかと思います。

今回の記事では【購入者目線で考える不動産購入取引】シリーズとして、これからの時代に必要な価値観を軸にしたお客様との関係性の築き方や提案方法について、Netflixで放映されている「不動産ファミリー」をベースにご紹介します。

この記事では、

・「不動産ファミリー」とは?
・日本とフランスの不動産仲介事業の違い
・「不動産ファミリー」に学ぶこれからの時代に必要な価値観軸での提案とは?

についてまとめていきます。

「不動産ファミリー」とは?

前回、別記事ではSELLING SUNSET(セリングサンセット)というロサンゼルスに実在する高級物件専門の不動産仲介会社を事例にアメリカの不動産業界についてご紹介しましたが、今回の不動産ファミリーの舞台はフランス、パリです。

SELLING SUNSET同様に、Netflixで配信されている高額不動産仲介をテーマにしたリアリティテレビシリーズで、フランス版のタイトルは「L'Agence(ラジャンス)」、通称「パリジャン・エージェンシー」と呼ばれています。

主人公は高級物件専門の不動産仲介会社を家族で営むクレッツ家です。

父でありCEOのオリビエと妻のサンドリーヌ、4人の息子(マルタン、ヴァレンティン、ルイ、ラファエル)と祖母のマジョ。

実際に不動産業をしているのは父と母、そして上の3人の息子達です。

学校の先生だったサンドリーヌは、「夫と一緒に何か仕事をしたい」という思いから2人とも素人だったにもかかわらず不動産事業を立ち上げ、そこに3人の息子達が加わってファミリービジネスとして不動産仲介経営をしています。

クレッツ一家が扱う物件はどれも最高級のもので、顧客も超一流です。

ここはSELLING SUNSETと同じですね。

パリの一等地のアパートメントや、地中海に面したリゾート、有名デザイナー・ガルシアが所有する豪華なお城まで取り扱っています。

SELLING SUNSET違った魅力としては家族で不動産業を営んでいるということもあり、「家族と過ごすために共に働く」という価値観を感じることができます。

シーズン1のエピソード1で母・サンドリーヌは

「私たちは高級品を扱う仕事をしていますが、本当に贅沢なことは家族と一緒に仕事をすることです」

このように話しており、とても印象的なシーンでした。

家族,シルエット

不動産ファミリーにはSELLING SUNSETのような癖の強いキャラクターや強烈なドラマはないですが、家族全員で協力して、裕福で条件の厳しい顧客に対して上品で繊細なサービスを提供している様子が伺えます。

日本とフランスの不動産仲介事業の違い

不動産ファミリーでは「不動産売買仲介のブティック」というようなサービスです。

これは日本には存在しない、海外ならではの、特にヨーロッパならではのサービスではないかと思います。

ここはSELLING SUNSET同様、個人事業主に近い類の不動産仲介会社がそれぞれのユニークなポジションを持って仲介を行っているところが日本との大きな違いです。

加えて、ヨーロッパ型のサービスの特徴として、物件自体というよりもサービスに重きがあるように思いました。

家族で経営しているので、全ての情報が共有、連携され、1人の顧客を満足させるためにチームで動いているのを感じます。

この辺りが非常に面白かったです。

報酬も家族で平等に分配するという仕組みも面白いです。

上記で「不動産売買仲介のブティック」と表ましたが、彼らの言動を見ていると、不動産をアートのように扱っているように見えるのです。

アートディーラーに近いといったイメージでしょうか。

例えば、サンドリーナが顧客との打ち合わせの際に顧客の家を訪問するシーンがありました。

今住んでいる家を見ることで、顧客のこだわりや好みを把握し、提案に繋げるためであると話しています。

そして、彼女は探している家の条件だけでなく、顧客自身のこれまでのことなど、かなり個人的で深い部分まで丁寧にヒアリングをしていました。

女性,ヒアリング

本当に顧客の価値観に合うものをオーダーメイドで探すために、時間と手間をかけていることが伺えます。

また、シーズン2では、希少価値の高いプライベートマンションが登場します。

ヴァレンヌ通りにあり、最古のマンションの一つ。

日本と異なり海外、特にヨーロッパでは建物の歴史が古く長いほど価値が上がります。

部屋,ヨーロッパ

作中で紹介された物件は、一見お城のような印象を受ける内装で手掛けたのは官邸御用達の職人、過去には首相官邸の音楽室として使用されていたこのプライベートマンションの天井は5メートルもありました。(※写真はイメージです)

そしてなんとダイニングにある扉は首相の部屋と繋がっていたというなんとも驚きの物件です。(現在は扉型の壁になっています。)

フランスでは新築よりも中古流通のマーケットの方が大きいので、個人の好みやライフスタイルの変化に合わせた提案力がブティックに求められていることだと感じます。

本当に素敵な物件だけを集めて、価値観やライフスタイルに合わせた丁寧な提案方法というのは日本ではまだまだできていない方法だと思います。

「不動産ファミリー」に学ぶこれからの時代に必要な価値観軸での提案とは?

日本の場合、高額不動産エリアに関して言えば不動産ファミリーのようなエージェントサービスはニーズが高いと思います。

が、一方で時間と労力をかけて1人の顧客に対して丁寧なサービスをするには資金力がないと難しいです。

3軒提案して決まるのと、30軒で決まるのでは投資収益率が全く違うので、サービスのクオリティを維持しながら収益を上げていくのは大きな課題ですね。

また、日本の場合はフランス社会に習うべきことが多くあるように感じています。

フランスは新規物件よりも既存のストック物件(中古物件)市場。

なのでより、その物件の今までのヒストリーが自分の価値観にフィットするかが重要視されています。

例えばいつ建った家なのか、今までの取引履歴やリフォームはどうなのか、どんな人が住んでいたのか、といった点についてです。

家,はてな

エピソード内でも、顧客が家の歴史を知りたがり、それに対して次男のヴァレンティンがスマートに受け答えしているシーンがありました。

ストック社会になればなるほど物件の価値をあげるディベロッパー思想の取り組み+物件のヒストリーが重要になってきます。

今までどんな住まい手がいて、どんな思いを建物に込めてヒストリーが蓄積されてきたか、ということ。

住まい手の住まい方で価値が変わってくるのです。

価値観軸で物件を提案するためには、いわゆる築年数や広さ、階数といった機能的な情報だけでなく、物件に対する情緒的な情報もくまなく把握しておくことは非常に重要な要素です。

日本ではまだまだ一般的な提案モデルではないものの、こういったブティック型のサービスは一定規模で伸びていくと思っています。

本当の意味でそれぞれの業者、あるいは個人間の情報連携力だったり、それぞれの利益をどうレベニューシェア化していくか、という部分が重要です。

今回の「不動産ファミリー」で言うと家族という集団であるためそれらがうまく成り立っているという側面は大きいでしょう。

これが個々人の情報や利益、となるとSELLING SUNSETで見たように一匹狼になっていくなと思います。

規模感を大きくしようとしたときにはやはり限界のあるモデルではありますが、日本国内の中小規模の不動産仲介会社ではどうバランスとるかによって、うまく取り入れることが可能なポイントは多くあるのではないかと思います。

例えば実現できそうなビジネスのアイデアとしては

①出資者になる
従業員が自分の会社の株式を保有することで、その会社に貢献する理由を作る

②仲介業で得た利益で独自の商品を企画する
富裕層向けの商品として独自の高額物件を保有する。
独自商品があることで営業マンがセールスをしやすい環境を作り、営業力・効率化アップを狙う。

この辺りは、可能性としてあり得るのではないでしょうか。

金融や相続といった不動産に関連する重たい分野はなかなか個人で信頼性の担保をするのは難しく、この辺りは企業の中にいるからこそ信頼して任せてもらえる部分です。

この信頼性をうまく使うようにして、ブティック型のサービスの中に連携体制を強化できるような座組みを取り入れることで、うまくバランスを取ることが可能だと考えています。

課題はいろいろあるにせよ、確実にブティック型の不動産ビジネスは必要だと思っています。

例えば、経営者限定のヘッドハンティングサービスがあったりするように、単発の取引額で見ると規模は大きいが、年間の取引件数で見るとそんな多くはないといったようなクローズド領域であるからこそ、任せることができる安心感というのはどのビジネスにも必要なはずです。

特に富裕層にとってはそういったサービスは重宝される時代になっています。

これからの経済成長の中では、上場することが全てではありません。

「いかに個人情報を守りながら人生計画についてコンサルティングしながら伴走してくれるか」という判断軸で不動産会社が選ばれていく時代です。

爆発的にマーケット自体が大きくなるというわけではないですが、確実に今の時代の、特に富裕層から求められる提供価値になってくるでしょう。

日本での傾向としては、まずはアメリカ型のようにビジネス色が強い不動産エージェントのスキルアップが求められるフェーズが訪れ、その後にフランス型のようによりコンセプチュアルな部分や文化的要素、価値観軸での提案ができる営業パーソンが求められるようになっていくはずです。

まとめ

今回の記事では、これからの時代に必要な価値観を軸にしたお客様との関係性の築き方や提案方法について「不動産ファミリー」をベースにご紹介しました。

・不動産を通して顧客の人生計画に伴走するというスタンス
・お客様の価値観と条件を紐づけるための行動や努力を惜しまない
→例えば実際に今のお住まいを訪問するなど
・機能的な情報だけではなく、歴史など含め情緒的な価値もセットで提案する

特にこの3つを意識した営業活動を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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