今日からしばらくの間、住宅営業社員の育て方について話を進めていきましょう。
地場工務店でも大手ハウスメーカーでも同じことですが、新卒中途問わず営業職として会社が採用した以上、彼らを育てる義務が生じると思います。
ところが、大小問わずほとんどの住宅会社では、未だに習うより慣れろが一般化していますし、入社時の集合研修は行うものの展示場などに配属されてからは「自分で工夫しろ」指導が多数を占めています。
確かに自ら工夫してやってもらうしかない部分も多いのですが、指導のポイントをしっかりと上司が押さえていれば、営業社員の能力を大きく伸ばすことができるのです。
特に会社の経営者に聞いていただきたいのですが、営業社員を採用して契約ができないまま1年間経ったところで退社されたら、 500万円を捨てたのとほぼ同じ事になってしまいます。
どう考えても得策ではありません。
小規模工務店のB君
私のコンサルティング先の話をさせて頂きますが、従業員10人程度の小規模工務店と思ってお聞きください。
B君が入社したのはコロナ時代に突入した2020年の4月でした。
いわゆる第二新卒のカテゴリーに入ると思われますが、前年度に入った会社が合わなくて、そこを退社した後に改めて就職先を探してやってきた人物です。
この会社は小規模ながらも自前の住宅展示場を持っており、コロナ前はお客さんの来場もそこそこにありましたし、イベントも不定期ながら開催して好調でした。
ところが皆さんご存知の通り、2020年の4月からこの手のイベントごとは全くできなくなるのと同時に、全国の展示場も閑古鳥状態になってしまったのです。
しばらくはやることもなく手持ち無沙汰のB君でした
展示場が寂しくなり現場見学会も開催できない状況下、新入社員のB君にはやる仕事がありませんでした。
毎日9時に出社してくるものの、基本的な仕事は過去に来場したお客さんの名簿を見て電話やメールをすることくらいで、その他にはネットやカタログを見ながら住宅関係の勉強を自習するだけの毎日が続きました。
B君と最近話をしたのですが「あの時はもうやめようかと思っていましたよ。だってやることがないんですから(笑)」と笑い飛ばしていましたが、私がその立場になっても同じ状態に陥るでしょう。
コロナ禍がB君を覚醒させることに
集客激減で頭を悩ませる社長が考えついたのがSNSの活用です。
この会社だけではなく全ての会社が同じことを考えたわけですが、障害となったのがSNSに関する知識が社長にほぼ皆無だったことでした。
社長がB君に話しかけたふとしたことがきっかけに
社長「B君は若いからSNSとかプライベートでもやるのだろ?」
B君「やっていますね。主にはTwitterとtiktokですけど、最近はYouTubeチャンネルも開設しました」
社長「コロナになってインスタライブとか工務店がやり始めたじゃない。うちもやろうかと思ってるんだけどさ ・・・ B君、やってみるかい?」
コロナがなければインスタライブやらYouTubeやらを始めることは絶対になかったでしょう。
しかし、周囲の状況を見て流石に焦った社長が、SNSの活用方法を考え始めた時、たまたま入社したB君が目の前にいたわけです。
渡りに船のB君
B君はB君で渡りに船。
時間を持て余し気味で嫌気がさしていたところに、知識もあるし大好きなSNS関連の仕事をさせてくれるわけですから、二つ返事で引き受けてのめり込んで行きました。
初期の頃はインスタライブ、Twitter、YouTube、tiktokと手を出しすぎて中途半端になってしまったのですが、最終的にはInstagramとYouTubeチャンネルに落ち着き、最近では内容もかなり濃くなりフォローもついてきました。
得意な分野を見つけて責任を持たせること
今回の一件は全く予期できないコロナがきっかけとなって、たまたまことがうまく運んだ事例でしたが、社員のやる気を出させて前向きに取り組ませる方法の一つは、本人の得意分野を見つけて責任を持たせることです。
B君は営業職ですから、SNSだけに集中するわけには行きません。
自らも受注を取らなくてはならないのですが、結論から言いますと今では年間6棟取るぐらいの力をつけました。
本人だけでも6棟を受注しているわけですが、SNSの効果で会社全体としても注目度があがり、実質はさらに大きな利益を会社にもたらしているわけです。
このような形で新卒中途問わず営業社員が入社した時には、得意分野を見つけて本来の営業受注活動プラスアルファで何かを任せてみなしょう。
問題が発生することもたまにはある
これも実例をご紹介しましょう。
現在進行形で関わってる会社ですが、営業として採用した新卒社員がいました。
“いました”ということはすでに退社したことを意味します。
初対面で会った時はごく普通の青年だと私も感じたのですが、会社の所帯が小規模なこともあり、新入社員にも細々とした業務をやってもらわざるを得ない状態でした。
社長からすれば雑務とはいいながらも、色々なことを経験できるので本人のためとなると考えていたのですが、新卒君は全く違った捉え方をしていたのです。
「色々とやらされるのは納得できません」
突然の 新卒君の抗議に対して社長はキョトンとしたらしいですね。
新卒で入社し会社も小規模であれば、法務局に行ってくれだの、司法書士の先生の所に言ってくれたの、色々な雑務があるのは当然でそれを社長から指示されたからといって文句をいうことは普通は考えられません。
ところが 新卒君は違いました。
自分は営業職として入社したのになぜ細々とした雑務をやらされるのかが、どうしても本人には理解できなかったらしいのです。
結局彼は退社しましたが、採用をもっと慎重にやるべきだったと深く反省していました。
たとえばこんなことを任せてみる
①SNS担当
B君の覚醒をご紹介しましたが、SNSに関する知識と習熟度合いは今の若者にはかないません。
しかも、SNSが日常になっているので、完全に生活の一部になっているケースが多いのです。
そんな彼らに対して、仕事としてSNS運用を任せることは抵抗もない上に、プライベートでのSNS活動にマンネリ化を感じてるケースもあり、とても新鮮にまた意欲的に取り組んでくれるのです。
②競合他社調査
どんな会社にも競合住宅会社があるでしょう.
たまにあたる程度ならまだしも「また〇〇工務店か」とちょくちょくあたる競合先があるかもしれません。
このようなケースにおいてあなたの会社は、この競合先の特徴などをしっかりと調査しているでしょうか。
おそらくはほとんどやっていないと思います。
私の現役時代は競合するハウスメーカーの調査を徹底的に行っていましたし、突っ込んだ話をしますと担当者別の特徴や情報すら入手していました。
皆さんにここまでやれとは言いませんが、新入社員はお客さんを抱えていないのでそんなに忙しいことはないと思います。
余った時間を活用するのと同時に、彼らに会社として利益が出ることに対する責任ある仕事を任せるのです。
私が新卒でこのような命令を社長から受ければ、真剣に取り組むことは間違いありません。
まとめ
社員教育を生業としている私としては、今回取り上げた内容は日常的に接していることです。
一番悲しいのは若くしてこの仕事を選んだものの、大した成績を残すこともなく、嫌気がさして若手社員が消えていくことに他なりません。
この事態をなんとか防ごうと日夜努力しているわけですが、今回取り上げた内容は 、現場で私が実践して手応えを感じた内容です。
是非とも皆さんも参考にされて、営業社員の士気を高め、それを営業成績に反映させ、会社の利益を上げるよう努力してください。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。