住宅営業社員の育て方・・・2【他業種からの中途社員の指導術】

なかなか厄介な課題です。

中小工務店の場合は人の採用がなかなかはかどらない現実があり、経営者は日夜頭を悩ませていることでしょう。

大手であれば新卒が一定数入ってきますし、教育もそれなりにやりやすいはずです。

しかし、教育云々の前に、まずは人を確保しなくてはならないのが中小工務店です。

人材といっても誰でも採用すればいいというわけではありませんし、大手と違って一般的に言われる2対8対2の法則は通用しません。

元々の営業社員が二人のところへ、さらに一人を採用しようとするとその営業社員の占める割合は33%となるからです。

ここで中途半端な人を採用してしまっては、 会社に大きなダメージを与えることになるのですが、今日のテーマは異業種からの中途社員の育て方について的を絞っていきます。

派遣社員から転職したHさん(25歳男性)

これはごく最近の話です。

派遣社員として工場のラインで5年ほど働いていたHさんでしたが、コロナになって仕事量が急減し収入も激減しました。

そこで一念発起してハローワークに通いつめ、年間30棟ほどをこなす地元工務店に面接にやってきたのです。

「本人の意欲を評価して採用したんだよ」

私はこの工務店にコンサルティングで入ってるわけでもなんでもありません。

たまたま知り合いだったこの社長と話をしていたところ、こんな話を直接社長から耳にしたので、その事実をここで書いていきます。

採用する側にとって、営業職や事務職として働いていなかった人間を住宅営業として雇うのは一種の賭けになります。

しかし、Hさんが若かったことに加えて、面接の際の受け答えもそつがなく、前向きな意欲も感じたので雇ってみたとのこと。

ただ、この話を聞いた段階では、入社してまだ3ヶ月なので受注実績は0棟でした。

これに関しては運やタイミングなども関係してくるので、まだ何とも言えないというのが、この時点での社長と私の共通意見。

「どんな教育方法をしているのですか?」

コンサルで関わってないとはいえ、私の最大関心事はこれです。

私 「彼の経歴はわかりましたけども、どんな教育をしているんですか?」
社長「教育といってもまだ3ヶ月なんだけど、今は展示場の接客補助を中心に、私や先輩営業が接客してるの後ろから見ているっていう感じかな」

おそらくはこのような対応をしてる会社がほとんどだと思います。

入社三ヶ月ですから何とも言えませんが、私が社長ならHさんの経歴を鑑みながら次のような教育指導をするでしょう。

社会人マナーの教育と常識力確認

ビジネスマン,お辞儀

この二つを早急にやるべきです。

Hさんは25歳と若く前向きで明るい性格とのことでしたが、仕事歴は派遣社員としての工場勤務がそのほぼ全てを占めています。

この経歴から考えると、おそらくは社会人マナーの教育を受けたことはないと考えるのが妥当です。

名刺の出し方などを始め、コテコテの営業マナーを教えるべきでしょう。

Hさんの能力の問題ではなく、経験したかどうかの話でありこの経歴を考えればおそらく経験したことはないだろうと推測できるからです。

経費をかけずに具体的にを知るにはどうしたらいいのでしょうか。

ネットを見れば社会人マナーの常識を15分程度で解説した無料動画などはいくらでも出てきます。

社長が妥当な動画を探してHさんに見させればOK。

その後で実際に名刺交換をロープレ形式でやってみるなどして学習度合いを確認すればいいのです。

こんなのは1日で終わる作業ではないでしょうか。

これをやるとやらないでは大違いであることを是非認識してください。

もう一つのポイントは常識力の有無を確認することです。

ここで私が指摘する常識力とは以下のポイントとなります。

①世の中で起こっているニュースに目を通しているか

上級国民なるパワーワードを生み出した池袋の交通事故がありましたよね。

あの交通事故があった一週間後にある住宅会社に足を運び、その当時入社2年目の大卒社員Fさんと個人面談をしていました。

このような機会に私は必ず直近であった様々なニュースを知っているかどうか確認をします。

私 「そういえば一週間前に池袋ですごい事故があったけどもあれはさすがにひどいよね」
Fさん「池袋・・・えっとー何の事故でしょうか?」
私 「今話題になってるじゃない、あの事故だよ」
Fさん「えっとですね・・・知りません」

この会話を皆さん、にわかに信じられるでしょうか。

さすがの私も驚愕しましたが、こんな馬鹿なことが実際には起きているのです。

池袋の事故を知らないわけですから、普段からニュースに目を通すことをまったくしていないことが想定されます。

住宅営業において家の話はそこそこにできたとしても、世の中で起きていることを全く知らないような人間では営業の資質として大きく欠けるとは思いませんか。

②業務中の何気ない行動をチェックする

朝事務所に出社すれば「おはようございます」と皆さんに声をかけて仕事がスタートします。

全くの異業種から入ったわけですし、スーツを着て営業の仕事をした経験がないわけですから、本人は当然戸惑うことでしょう。

しかし、そうした中でも社長が指示したことに対してすぐに反応をするとか、与えられた課題を積極的に且つ合理的に解決しようとしているかなどは、横で見ていればなんとなく分かるものです。

そして最も大事なことは、質問を本人からしてくるかどうか。

「質問はしたいけども何をどう質問したらいいかわからない」

この部分は汲んであげて良いと思いますが、やはり全く質問が出てこないようではおかしいと私は思います。

Hさんの場合は派遣社員として工場での勤務経験しかないので、いきなり高いハードルを貸すのは酷かもしれません。

ですから、気になったら数回は注意をしてあげてください。

もし、数回注意をしても質問が全く出てこなければ、Hさんの性格かもしれませんし、もっと突っ込んで言うのであれば、営業的な能力がないとも判断できます。

異業種から転職を考えている人間は採用する価値あり

採用する価値ありと書きましたが、正確に表現すれば真剣に採用面接をする価値ありとなるでしょう。

特にHさんのような若い人材は、どのように化けるか見当がつきませんから。

失敗した時のリスクはありますが、大化けすることへの期待感も高いと言えるでしょう。

少し古い話だが大化けした営業マンがいた

営業マン,歩く

今から15年ほど前になってしまいますが、ある大手フランチャイズの加盟店に20代後半の異業種からの転職者が就職しました。

異業種とはいうものの、その仕事は現場の職人です 。

完全な異業種とはいえないものの、全く畑違いのホワイトカラーへの転職でした。

職人歴10年の30歳の男性でしたが、懇意にしている営業といろいろ話をしてるうちに、やればやっただけ稼げる制度に興味を示したのがきっかけで面接を受けてみようとなったようです。

面接をした社長は結果的に採用したのですが、実は相当悩み抜いての決定でした。

悩んだ理由をその当時聞いたのですが、社長曰く「住宅を売ったらどのくらい稼げるんですか、とこればっかりしつこく聞くんだよな。歩合給はそれなりに出しているから、それをモチベーションにしてやってもらうのはまったく構わないんだけども、あまりにも給料のことだけにしか興味を示さないもんだから心配になっちゃうでしょ」

社長の不安は当然のことです。

しかし、社長はしっかりとした教育プログラムを作って、このプログラムを完全にマスターするまでは試用社員で、社長が認定したら正社員にするとの約束を取り付けました。

これを条件に彼を採用したのです。

この彼がどうなったかは次号で詳細をご紹介しましょう。

まとめ

記事の分量が多くなってしまったので、最後の話題は繰り越しさせて頂きますが、結論を先にお教えしますとこの職人さんは転職大成功の事例になります。

もちろん、本人の意欲と才覚が成功をもたらした大きい要因だと思いますが、社長が設定したプログラムが功を奏したのもまた事実です。

様々なプログラムを作り、その内容も私から見ると結構高いバーを設定していると感じられるものが多くありました。

感心したのはこのプログラムに全く文句を言わずに取り組んだ本人なのです。

そのあたりを含めて次号もぜひご覧ください。

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工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」

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積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。

コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。

今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。

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