住宅営業社員の育て方・・・2-1【他業種からの中途社員の指導術】

前号で書ききれなかった 話の続きです。

現場職人から住宅営業に転身して成功したAさんの話です。

Aさんは現場に出入りする営業マンと話をするうちに「住宅営業はかなり稼げそうだな」との思いに至り、営業が勤務する会社の社長に面談を要求し入社にこぎつけました。

歩合給のことしか聞かないAさんに不安を持った社長でしたが、社長が組んだプログラムをすべて消化したら正社員に昇格させるとの条件を彼に飲ませ、そして採用へと至ったのです。

もちろん、Aさん自身に営業のセンスがあったのは言うまでもありませんが、社長の作ったプログラムが極めてよくできていたことに加えて、このプログラムを完遂させることを約束させた力量がAさんを成功へと導いたのです。

まずは見た目から直させた

社長はいろいろなプログラムを課したのですが、その第一項目にあったのが身なりの徹底でした。

この工務店の社長は、大学の建築学科を卒業して大手ゼネコンに就職した後に、工務店を自ら起こした経歴を持っています。

性格は基本的に真面目で、極めて細かいことにもよく気が付くのが特徴で、私から見ていてもちょっと細すぎるのではないかなという部分が多々ある方です。

職人時代の見た目は確かに眉を顰めるかも

今の職人さんはスマートな雰囲気の方も増えましたし、そのまま営業をやれば成功するんじゃないかというぐらい理路整然と意見を述べ、かつ知識がすごく豊富な方が目立ちます。

今から2年前ですが千葉県で取材をした大工さんがまさにその典型事例で、あまりによくできた大工さんという噂を聞きつけて、営業研修の素材とすべく取材をお願いしたほどでした。

ただ 、Aさんが現場で職人をやっていた時代の写真をみたのですが、正直言うと「ヤンキー臭が漂うな」というのが私の感想でした。

それは本人も認めるところで「確かに昔はやんちゃもしていた時代があったので、この時は少しイメージが悪いかもしれませんね、ははは(笑)」

Aさんに対しては社長も気になっていたようで、親方に当たる人間に対して、服装や外見をもう少しピリッとしてもらうよう指導してくれないかということは言っていたようです。

それが頭にあったので、面談を求めてきたAさんに対して当初は非常に否定的だったのが正直なところでした。

しかし、非常に前向き、前のめりといっているほどの勢いに考え方が変わってきた社長は、条件を出してそれを飲めば採用すると伝えたのです。

社長が採用時の話をしてくれたのですが、驚いたのは仮採用の翌日には床屋に行って頭をさっぱりとさせ、ビシッと決まったスーツでAさんは事務所にやってきたそうです。

社長はもちろんですが他の社員も「全く別人じゃんね、どうしたのA君」と囃し立てるほどの変わりよう。

外観に関しては社長の課題を1日でクリアしたわけです。

二日間のマナー研修会の出席

研修,ビジネス

殊更に説明する必要はありません。

外部で行なっているマナー研修に、1泊2日の予定で参加させました。

これについても文句ひとつ言わずに出席して、翌々日には会社にAさんは出社しました。

たった二日間の研修ですが、お辞儀の仕方や名刺の出し方に始まり、車に乗るときの上座はどこかなどを含めた様々なマナー研修をAさんはこなしてきました。

Aさんに直接私は話を聞いたのですが、この手の研修は初めて受けたとのことで「めちゃくちゃ新鮮でしたし、衝撃的な内容が多かったです。とにかく面白かったでした」と言うのです。

中途半端に研修慣れしているホワイトカラーの連中と比べると、新鮮で衝撃度合いが違うので、Aさんは大きく成長したのです。

研修は何でも同じですが、10人が研修に参加するとその中の1人か2人はその研修がはまって大きく変わるものです。

Aさんはまさにこの人に該当したと言っていいでしょう。

「お金を払ってマナー研修なんかに行かせてもな意味ないよ」

こう話す社長もいますが、それは誤解だと考えてください。

もちろん、研修の当たり外れはありますので、事前に情報はしっかり入手して欲しいのですが、若い人たちにとってはマナー研修というのは初耳な事が多く新鮮なのです。

徹底したロールプレイング

実際に行なったロールプレイングのシートを社長に全て見させてもらいましたが、住宅展示場の玄関先での挨拶の仕方、来場アンケートに違和感なく記入してもらうやり方など トークが並んでおり、それらを一つ一つ潰していくロールプレイングを行なったのです。

社長が合格を出すまで徹底的に

ポイントはここなんでしょうね。

玄関先でアンケートを取るシーンのロールプレイングシートがあったのですが、そこにはお客さんがアンケートを書くのを嫌がったり、あるいは電話番号は書かないなど様々な設定が準備されていました。

Aさんが営業で社長がお客さん役となり、いろいろなシーンのロープレをを毎日みっちりこなしたそうです。

そして全てではないのですが、ロープレのシーンを他の社員にビデオで撮らせて後で検証までしたとのこと。

何回もやり社長がOKを出したらそこの単元は卒業になり、 次のシーンへと移っていくのです。

こんな塩梅で進めていくので、このロープレを全て終えるまでにほぼ50日間を費やしたそうです。

朝から晩までロープレをやってるわけではありませんが、最低でも1日1時間、場合によっては3時間程度のロープレをこなしていきました。

これを実際にあなたがこなしていくと想像してみてください。

かなりの根気がないと、とてもではないですが続かない訓練だと私は思います。

50日間のロープレの後にもメニューがあった

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ほぼ50日間に渡るロールプレイングメニューを消化した A さんでしたが、社長がその次に課したメニューは電話でした。

会社のコンピューターに入っている過去名簿に対して、その後の状況を聞いていく徹底したローラー作戦です。

お客さんと面と向かって話をするのに比べて、相手の顔が見えない電話は工夫が必要になります。

社長としてはリアルの接客と電話の接客の両方を A さんに会得してもらいたいとの思いで、この電話も徹底的にやらせたそうです。

しばらくしてからリアルの接客をさせた

入社してから70日程度経過したところで、初めて展示場や現場見学会の接客にAさんを立たせました。

最初の5組10組はなかなか上手くいかなかったのですが、 そこから先はベテラン営業マンに匹敵するような饒舌ぶりを発揮し、先輩社員並みにアポイントをとれるまでに成長したのです。

ロープレと同じシーンが出てくる

私「入社して2ヶ月ぐらい経ってから初めて接客に出たと社長から聞いたけども、すごく場慣れしていて旨かったらしいよね」
Aさん「うまいかどうか分かりませんけども、ロープレで徹底して行ったシーンと同じような場面が実際の接客で出てくるんですよ。だからあまり迷うこともありませんでしたし、お客さんから何かを聞かれても結構答えることができましたね」

ロールプレイングが実践に役立った典型的な成功事例と言えるでしょう。

話を突き詰めていけば、実際に起こるであろうシーンを想定してロールプレーンで全て押さえていけば、お客さんとの会話が中断することもなく、よどみなく会話を続けていけるのです。

現実的にはロープレと全く同じシーンが全て現実の接客で再現されることはあり得ないわけですが、そこはAさんの頭の回転の良さに加え、普段からの話好きが功を奏したのでしょう。

基本的なトークを習得していれば、後はそこにプラスマイナスをしていけばなんとかお客さんと会話できるものです。

ただどうしても自分の知らないことを質問されたら「それは分かりませんので調べてきます」などと言えばいいだけのこと。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回登場してもらったAさんは、フィールドに出て程なくするといきなり売り始め、成績が落ちることなく今に至っています。

本人の素質が高かったのが大きな要因だとは私も分析していますが、 社長が行った現場を意識した細やかな徹底したロープレがAさんの基礎になっているのは間違いありません。

これはAさん自身が強く主張していましたし、文中にも書いたように「ロープレでやった内容がそのまま現場で発生する」という事象が現場で発生しているのがその証左です。

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積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。

コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。

今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。

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