住宅営業社員の育て方・・・3-1【女性営業の育て方と問題点】

前回の続きを書き進めていきたいと思います。

住宅業界において女性営業の育成は、非常に大きな課題のひとつであることは皆さんも異論がないところだと思います。

【女性営業の育て方と問題点】と題して、前回は問題点についてだけ取り上げた記事を書きました。

今回はその後半にあたる育て方に的を絞って記事を書いていきます。

年間2,000棟超えの住宅会社、小規模では従業員9人の工務店の実例などをあげて、女性住宅営業マンの育て方を取り上げていきましょう。

成功事例はもちろんですが、失敗事例もしっかりお伝えします。

「話を聞きたい!」と私にねじ込んできたある女子大生

育て方の話をする前に、ある女子大生の話をしたいと思います。

2021年の10月ですが、関西地方に存在するある大学の女子大生から、ツイッターのDM(ダイレクトメッセージ)を通じて私に連絡がありました。

直球の質問が来た

「〇〇大学4年の〇〇 と申します。住宅営業を強く希望しているのですが、△△ ホームについての勤務実態や様々なことについて知りたいと考えております。つきましてはZOOMでお話を伺うことは可能でしょうか?」

さすがに驚きましたが、断る理由もないので彼女にDMで返信し、さっそく話を聞きました。

彼女は関西では知名度の高い大学の建築学科に在籍する4年生で、体育会系クラブのキャプテンも務めているとのこと。

「△△ホームの営業にどうしてもなりたいので、面接を受ける前に社風やその他の情報を是非知りたいと思い、お忙しいところ恐縮ですが、森さんにお願いした次第です」

こんな感じで、熱く彼女は私に語りかけるのです。

大げさな表現ではなく本当に熱い女性でした。

夜の10時から11時頃まで一時間程たっぷりと話をしたのですが、 住宅営業になりたいという、強い意志を感じました。

この世界は厳しいことをよくわかっていると話していましたし、 帰宅時間が遅くなることも重々理解していました。

「建築学科出身だから設計で入社するという気持ちはないわけ?」

ところどころでこう確認したのですが、彼女は設計に進む気は全くなく、住宅営業まっしぐらだったのです。

その後の報告はないので、彼女がこの会社に入ったかどうかは定かではありませんが、第二志望以下の住宅メーカーも聞いていたので、いずれにしても、どこかのハウスメーカーなり住宅会社に入ったことは確実です。

ある大手企業の失敗事例

かなりの大手企業である住宅会社の話をしましょう。

丁度この時期は、女性営業を積極的に採用する方針を会社が打ち出し、面接の結果、数多くの女性営業が入社しました。

住宅展示場数もかなりあるので、新卒入社の社員はばらけるように通常は配置をします。

ところが、当時の営業部長の判断で、女性営業は一人にすることなく最低二人を同じ場所に勤務させた方がいいのではないか、との話になり、A展示場には新卒の女性を二人、B展示場にも新卒女性を二人、といった配属を行ったのです。

結論としてはこれが失敗でした。

その年の入社女性営業の半数近くが、ものの半年で退社してしまったのです。

真の原因はどこまでいってもわからないのですが、社長を含めた幹部の分析では、ライバルでもありかつ良き仲間としてうまく機能するであろうと思っていたのに、現実には全く違った事態が起こってしまったとのこと。

① よきライバルではなく お互いに相手を蹴落とそうとする状態になった
② 「私よりも〇〇さんを評価する理由がわからない」と同期の女性営業への評価を退社理由として店長に告げた

この二つの理由は、実際の現場から上がってきた分析結果です。

中には女性の店長もいたのですが、彼女もこの二つの理由を、うまくいかなかった大きな原因としてあげていました。

翌年からは女性採用基準を一気に変えた

この企業は翌年から女性採用基準を変えると同時に、配属においても、同期の女性営業が必ずバラバラになるような配属をするようになりました。

問題はその後ですね。

新卒女性営業の採用数もだんだんと減っていき、毎年一定数の女性営業は採用するものの、成績もパッとせず、すべてにおいてが暗中模索状態になっています。

女性住宅営業の育成に成功した小規模工務店

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今度は成功例をご紹介しましょう。

東海地方にある小規模工務店の話です。

彼女は大学の建築学科を卒業したのち、設計を希望して就職活動をしていました。

古民家住宅に強い関心を抱いていたとのことで、それに携われるような住宅会社を探していたのですが、大手企業では該当するところがなく、たまたまネットで見つけたこの小さな会社の採用面接を受けました。

この会社は設計が足りていないことは事実だったのですが、社長一人が営業活動を行っていたので、営業兼設計を探していたのです。

「面接ではかなり気を使って話をしたよ」と社長。

設計志望できている女性に「住宅営業もやらないか?」と勧めるわけですから、慎重になる気持ちはよくわかります。

面接でのやりとりはいろいろあったのでしょうが、最終的には設計をメイン業務としながら営業も同時に行う、との条件で採用に至ったとのこと。

社長が考えた育成方法は思いつきだった(笑)

入社後5年経過しているのですが、彼女の営業力は素晴らしく、今では会社全体の受注半分は、彼女の力によるものだと社長も認めるまでに成長しました。

これは、社長の育成方法が成功したことも多分にあるのですが、 彼女の育成方針は、ほぼ社長の思いつきだったそうです。

私 「会社に対しての彼女の貢献度は多大じゃないですか?」

社長「今ではあの子がいなかったら会社やばいよね。今思えば入社当時に私が彼女に言ったことが功を奏したんだと思うよ。要は役割分担ってやつかな」

ここから社長は、役割分担について長々と私に話をしてくれました。

お客さんの探客活動は、あくまで社長の役目ですが、家族構成によって社長が営業を担当するか、彼女が担当するかを明確に分けたそうです。

【お客さんに娘が一人でもいれば彼女が担当する】

いかがですか。

私もこれを聞いた時はびっくりしましたが、思いつきとはいえ社長にも考えがあってこの様な指示を出したんです。

お客さんの心をつかむには、新しく建てる住宅が子供の健やかな成長にも寄与することをアピールしなくてはならないと考えた社長は、女の子の気持ちは同じ女性である彼女のほうが理解できるはずだし、両親もそれで納得するのではないかと推論しました。

面白い仮説ですね。

推論とは書きましたが、これは理に適っています。

住宅展示場における接客や商談の様子を数多く観察しているので分かるのですが、女性営業や女性設計士が女のお子さんの話をするときにその威力を発揮します。

「大きくなると女の子はあっという間に服が増えるので、クローゼットは広めに設計した方が絶対いいですよ」

こんな言葉を投げかけた後の決めゼリフはこれ。

「私もそうでしたから」

これが効くのです。

男性営業でも通用する理屈ではありますが、女性営業の体験談として話すと説得力が十倍違います。

彼女のやる気を引き出したのは何だったのか?

「任せたぞ」が功を奏した

結論としてはこうでしょう。

実際にも社長はかなり煽り気味で彼女に話したそうです。

「君に社運を託す!」ぐらいの勢いで言ったと社長は笑ってましたが、それをこの彼女が意気に感じたというか、物凄く真剣に捉えたのでしょうね。

もちろん男性も女性も条件同じじゃないかと言われそうですが、私の経験で判断させてもらうと、女性の方がより響くと感じています。

ファーストリテイリングの柳井社長が、かつてBS放送でインタビューに答えていたシーンを見たことがあります。

ちょっと前の話ですが、ユニクロの日本最大店舗は渋谷店になり、 その当時この店舗の店長に女性を抜擢した、と述べていました。

そのインタビューの中で柳井社長は「プレッシャーを課すと女性は最大限の力を持って臨もうとします。私は確信があったので会社として最も重要な位置づけである渋谷店を彼女に任せたのです」と話していたのを、私ははっきり記憶しています。

業界は違いますが、住宅営業でも同じ理屈が通用すると考えています。

まとめ

女性営業の育成方法は、男性営業とは違うものが存在します。

皆さんにもいろいろな考えがあるかと思いますが、成功事例と失敗事例をそれぞれご紹介させていただきました。

最後はユニクロの話になってしまいましたが、柳井社長も女性と男性の特性をよく考えて仕事を任せているのです。

私たち住宅業界も、その視点を忘れてはならないでしょう。

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