コロナになってから、毎日のようにズームを使った個人面談やら打ち合わせを行っている私ですが、昨日行ったズーム面談での話を 取り上げましょう。
規模の大きい某住宅会社に入社した女性営業(Bさん)ですが、私とのやり取りの中でとても興味深い話をしてくれたのです。
この話は特に若手の住宅営業の方には、是非とも聞いて欲しい成功事例です。
そして、住宅会社の社長や幹部社員の方にも、営業マン指導の参考にしていただきたいと思います。
ちょっとしたことなのですが、少しだけ勇気を持って一歩前に出ると視界が一気に広がるという好事例です。
10月になっても受注は0棟
4月に入社して半年後の10月になっても、Bさんは残念ながらまだ契約をとれていません。
小規模な工務店では大問題になりますが、この会社は規模が相当あるので、この時期の受注0はまだまだ大目に見てもらえる環境が整っています。
とは言え、社長から指導が入り、成績を上げていない新卒がいるチームの上司は、これまでとは違い受注に対してのプレッシャーを新卒にかけ始めました。
展示場接客がうまくいかない Bさん
森 「4月に入社して展示場接客は何件ぐらいこなしたの?」
Bさん「全部で10件程度ですかね」
森 「その中でいいお客さんはいた?」
Bさん「う~ん・・・それなりに話は場は盛り上がるのですが・・・」
喋り出すと止まらないBさんですが、その様子から察するに展示場での接客では、お客さんと上手くコミュニケーションをとってよどみなくしゃべっていると感じました。
上司に聞いてもまったく同じ意見で、ほかの新卒と比べるとはるかにこなれた接客をして、お客さんとケタケタ笑いながら話をしているとのこと。
彼女もそのあたりは自信があるようなのですが、お客さんと楽しく話すだけで、そこから先が全く進まなくて悩んでいたのです。
森 「図面を書いてみませんか、ショールームに来ませんか、 などと突っ込んでいけばいいじゃない」
Bさん「店長からも同じことを言われるんですが、その一言を出ないんですよね。引っ込み思案な性格ではないのですけども、やはりそれが壁になっているのかな・・・と」
店長の指導でBさんは開眼する
そんなBさんですが、店長のある指導で完全に目が覚めました。
9月上旬の話ですが、展示場にBさんしかいなかったところ、あるお客さんが来場 しました。
お客さん自体も家を建てる気満々だったことが功を奏したのは事実ですが、新卒である彼女と展示場で90分にわたって話をしたそうです。
90分も話をすればアポイントが取れる確率もかなり高まるのですが、この時Bさんは、いつものようにアポ取りに失敗しました。
その夜、この顛末を店長に報告したらしいのですが、そのときのやり取りがこれ。
店長「このお客様とアポイント取れなかったんだ。90分も話をしているし内容も良さそうじゃない」
Bさん「確かにいい感じだったんですけども、最後は詰め切れませんでした」
店長「で、この後はどうするの?」
Bさん「定期的に電話をかけたりダイレクトメールを送ったり・・・ ですかね」
店長「それだと、今までと何も変わらないよね。私と一緒にお客さんの家に行ってみようか?」
店長の言葉を聞いたBさんはかなり面食らったとのこと。
「こんなことでいちいち驚くのは何故だろう」
私も最初は疑問に感じたのですが、これは彼女の問題ではなく、コロナの影響なのです。
20卒から22卒までの若手社員は、コロナの影響でお客さんの自宅へ訪問する経験をしていないどころか、そうした行為は論外との概念が刷り込まれているのです。
どうしようもならない社会事情があるわけですが、そんな彼女が 上司からいきなり訪問しろと言われれば、びっくりするのも仕方がないでしょう。
実際に行ってみたら意外な結果に
店長の業務命令ではしかたがありません。
腹をくくったBさんは、10月のとある夕方にお客さんが書き残した住所を頼りに、店長と一緒に自宅に向かいました。
ところがいざ自宅に着いてみると、該当する住所が無いとのこと。
ここで万事休すかと思いきや、接客した時に建物の外観の話をしていたことを思いだし「表札もないけどおそらくここじゃないかな」と勇気を出してインターホンを押したのです。
故意ではなく、お客さんが間違えて住所を書いたらしいのですが、 結果的にはビンゴ。
しかし、立ち話で10分程度奥さんと話をしただけで、その時も雑談に終始してしまいアポイントは取れず。
意気消沈して事務所に帰ったのですが、翌日になんと店長の携帯にこの奥さんから電話が入りました。
「昨日は来てくださってありがとうございました。主人とも色々話したのですが、今お話をしている○○ハウスさんの値段が思ったよりも高いので、お宅からもう見積もりをもらおうか、という話になったんですよ」
こういうこともあるのですね。
この案件はまだ折衝中とのことでどちらに軍配が上がるかわかりませんが、Bさんに話を聞くと「かなりいけそうな雰囲気がする」とのことでした。
コロナによって 訪問力が落ちている
新型コロナウイルスが猛威を振るい出したのが2020年の2月でした。
ですから、20年、21年、22年、この3年間に入社した新卒の住宅営業は、お客さんの自宅に訪問した経験が少ないのです。
経験がないどころか、お客さんの自宅に行くこと自体が悪だと考えている節さえ感じられます。
それ以前の住宅営業社員であれば、展示場にお客さんが来た後、 住所を頼りにしてノーアポイントの訪問活動をする経験を、普通に皆さんしているはずでしょう。
この3年間の営業社員は、極めて特殊な環境で育った為に、こちらから積極的に前に出る営業が全く身についていないのです。
訪問することは悪ではない
「ノーアポイントでお客さんの家に訪問するなど迷惑千万な営業ではないか!」
こう考える工務店の社長も多いことでしょう。
ただ、これは考えが偏り過ぎていると私は考えています。
はっきりさせておきたいのは、積極的にアピールする訪問と迷惑訪問とは全く違うことです。
もちろん、その線引きは極めて難しいのですが、これだけは自信を持って断言できます。
私の研修ではよく使う資料の一つに、あるお客さんの取材映像があります。
森 「〇〇さんは結果的にこちらの工務店と契約されたわけですが、担当営業さんはどんな印象でしたか」
奥さん「すごく控えめな人で、最初に展示場に行って接客された後全くアプローチがなかったんですよね」
森 「自宅に来てほしくない、もしくはあまり積極的に来てほしくないというオーラを意図的に出したんですかね(笑)」
奥さん「確かにちょっと距離を取りましたね。しかし、それでも営業さんは絶対にアプローチしてくると思ったので、実は来るのを待っていたのですよ。ところが、結局は一回だけ電話があってそれっきりになってしまって・・・」
手元にある取材ビデオには、このような会話が残されています。
会話の続きはこんな感じの内容でした。
営業がアプローチしてこなかったので、他社営業と話を進めてしまったのですが、たまたまその営業の質が極めて低かったこともありそちらとの話は中止したそうです。
そして、そのタイミングで結果的に契約をしたこの会社から現場見学会の誘いのダイレクトメールが来たとのこと。
電話などの誘いは一切なかったと話をしていましたが、当日に奥さんとご主人二人で現場に出かけたところ、現場待機だったその担当営業マンと久しぶりの再会となりました。
これがきっかけで契約に至ったのですが、たまたま運が良かっただけで、相手の住宅営業がごく一般的なレベルであれば間違いなく契約は取られていたでしょう。
まとめ
【積極的に前に出よう!!】
これが今回のまとめになります。
コロナという複雑な事情が絡んでいるので、若手営業の皆さんは お客さんとリアルに接する経験が無いのと同時に、こちらから距離を詰めることに戸惑いがあるのが現実でしょう。
しかし、コロナも事実上の収束を迎えていますし、コロナに対する日本人の意識も、かなり変わってきたはずです。
接客をしたらそれっきりではなく、勇気を持って一歩前に出てください。
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