富裕層、事業経営者向けの相続、節税などの富裕層向け金融サービスが信託銀行などから提供されています。
その中身は金融商品や保険を活用したり、事業承継スキームを活用したりとアウトプットは様々です。
そのような中、不動産仲介事業会社が富裕層向けに信託銀行が取り扱うようなサービスを不動産仲介の観点から行う流れが出てきました。
この記事では
・なぜ?不動産仲介業者の富裕層戦略
・各社の提供サービスの例
についてまとめていきたいと思います。
なぜ?不動産仲介業会社の富裕層戦略
なぜ不動産仲介業者が富裕層に向けたサービスを展開しているのでしょうか。
その理由は主に2つあります。
理由① 富裕層のニーズに合っている
理由② 継続した売買が見込め、手数料収入も反復して得られる
理由①富裕層のニーズに合っている
現在の予測不可能な時代に、増やすことは難しくても、せめて維持し続けたいと富裕層は考えています。
この富裕層のニーズとは大きく分けて「相続」「節税」「資産形成」の3つです。
日本の相続税は最大55%と、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で最も高い水準です。
海外に住むという手もありますが、年々国税当局による取り締まりは厳しくなっているという現状もあり、「エステートプランニング(資産承継計画)」は、相続税の負担を減らすと同時に資産をスムーズに承継するために富裕層が重要視するポイントとなっています。
また、近年においては所得税や相続税が増税されるなど、富裕層にとって受難の時代が続いており、いま富裕層に共通する課題としてはいかに所得税を節税するかというテーマが浮上しています。
給与所得の大きい富裕層ほど、所得税、相続税が増税され、税負担が増加していて、先行きの不透明感はますます強まっています。
こうしたなか、2020年の税制改正で個人の海外不動産投資の減価償却による節税は実質的にストップがかかりました。
そこで資産防衛の一つとして、国内の中古不動産を活用した短期減価償却による節税が注目されています。
富裕層はリスクヘッジのためにあらゆる形で資産を持っており、金融資産なら金融サービスを行っている信託銀行などに相談すればよいですが、”不動産”という形の資産の場合、専門的な知識も必要であることなどから、安心して相談できる窓口が求められています。
その点、不動産仲介事業会社は不動産についての確かな見識を蓄えているので、サービスとして「売る」「買う」ということ以外に、「不動産投資の相談」ということも可能になるのです。
理由②継続した売買が見込め、手数料収入も反復して得られる
先述の「不動産投資の相談に乗る」というサービスで、勿論購入した不動産に居住する場合もありますが、誰もがその不動産に居住するわけではありません。
一般層の不動産売買において、住宅購入は人生で最も高い買い物となり、仲介会社にとっても1度きりの取引になりがちです。
しかし富裕層の不動産投資における売買は、住み替えや相続などで定期的に売買が行われます。
したがって関係性を築くことができれば、継続した売買を見込むことができ、反復して手数料収入を得ることができるのです。
以上のことから、富裕層向けサービスを展開することは、不動産仲介業会社にとって非常に相性が良いということが分かります。
各社の提供サービスの例
それでは、富裕層向けにサービスを展開している企業をご紹介したいと思います。
①青山財産ネットワークス
②東急リバブル
③野村証券ソリューションズ
①青山財産ネットワーク
参照:青山財産ネットワークスHP
https://www.azn.co.jp/about/#about02
青山財産ネットワークスは、個人資産家と企業オーナーに対し、財産承継と事業承継コンサルティング、財産運用、管理の総合財産コンサルティングサービスを提供しています。
こちらの会社の強みはコンサルティング分野における数少ない上場企業として、約30年に渡りコンサルティングサービスを提供しています。
コンサルティング分野の企業ですが、長い年月で培った専門家集団(公認会計士、税理士、弁護士、司法書士、社会保険労務士、一級建築士、不動産鑑定士など)の知見と近年のテクノロジーを融合したコンサルティングの提供を強みとしています。
なかでも業界シェア6割を誇る「アドバンテージクラブ」という不動産小口化商品は青山財産ネットワークスの主要な商品のひとつです。
アドバンテージクラブのポイントを6つご紹介します。
参照:青山財産ネットワークスHP 「会社案内」
https://www.azn.co.jp/Portals/0/images/about/202208_company.pdf
①1口1,000万円からで投資しやすい
不動産小口化商品は、ひとつの不動産を複数の出資者で共同保有する金融商品です。
通常だと高額の投資が必要になる不動産でも、小口化することによって比較的気軽に投資が可能です。
②都心の優良不動産への集中投資
主に千代田区、中央区、港区の都心3区が中心となっており、中でも日本橋、京橋、銀座、新橋エリアや神田エリアで多くの対象不動産を選定しています。
東京都心部は不況からの回復力にも優れるため、資産価値を維持しやすく、比較的安定した運用投資が可能です。
③高い稼働率で安定した収益性
アドバンテージクラブの2020年の年間平均稼働率は、約99%と非常に高い実績を保っています。
分配金利回りはおおむね2~4%程度となっており、安定した収益を実現しています。
④不動産税制の適用
任意組合の場合、実質的には組合員が不動産を所有する仕組みであるため、相続発生時には現金としてではなく、不動産としての評価となります。
小規模宅地の特例が適用になる場合もあるため、税制面での優遇措置を受けられる可能性があります。
⑤相続時の遺産分割が容易
アドバンテージクラブでは、1口単位で相続人に分割ができるため、相続時の遺産分割が容易になります。
⑥管理運用の手間を大幅に削減
アドバンテージクラブでは、青山財産ネットワークスが管理運用などの業務のほとんどを行うため、投資家にとって大幅に手間を省いた運用が可能です。
②東急リバブル
参照:東急リバブル ウェルスアドバイザリー本部HP
https://www.livable.co.jp/wealth-advisory/
東急リバブルでは、個人資産家・企業オーナー向けの専門組織を設置し、不動産を活用したコンサルティングや独自性の高い不動産商品で、顧客のニーズに全面的に対応しています。
参照:東急リバブルHP「お客様からいただく課題(一例)」
https://www.livable.co.jp/wealth-advisory/service/
長年培ったノウハウをもとに、上記のような様々な顧客ニーズに応えることができます。
東急リバブルも専門組織「アセットコンサルティンググループ」を設置し、顧客一人一人に合うオーダーメイドな解決策を提案します。
不動産投資商品としては以下のような商品を提供しています。
参照:東急リバブルHP「事業内容のご紹介」
https://www.livable.co.jp/wealth-advisory/service/
東急リバブルの強みは不動産企業の大手として幅広い事業領域があること。
つまりそこから取得する不動産情報が非常に豊富であるということです。
それをもとに、自社で企画・開発する独自の不動産投資商品を販売しています。
また海外への分散投資のニーズにも応えられるよう、海外不動産商品も提供しています。
③野村証券ソリューションズ
参照:野村不動産ソリューションズHP 「パートナー営業本部」
https://www.nomura-solutions.co.jp/services/
野村不動産ソリューションズでは、パートナー営業本部を設置しています。
中堅・中小企業、企業オーナー、個人投資家の不動産売買のニーズを的確にサポートし、事業用・投資用不動産の売買仲介のほか、利害関係者の多い不動産の権利調整や融資清算のための最適な売却プランの策定、相続・事業承継を見据えた不動産戦略の立案など、複雑かつ難易度の高い案件に対応しています。
野村不動産ソリューションズの強みは、その背景に野村不動産グループがあり、多岐にわたる顧客の要望に、グループ内の総合力をもってワンストップで解決策の提案ができることにあります。
参照:野村不動産ソリューションズ 「私たちの強み」
https://www.nomu.com/consult_service/strength/group.html
実際にグループの総合力を活かした野村不動産ソリューションズの取引事例をご紹介します。
取引事例「不動産M&Aを提案し、売却資金の手残りを増やすことに成功。」
【相談内容】
長く経営されてきた、後継者不在に悩む法人代表者様からの不動産売却と事業承継に関するご相談。
不動産売却後の会社清算では、多額の税金がかかることがネックに。
顧問弁護士が当社と懇意にしているため、善後策をご相談いただきました。
【ご提案】
事業承継と税負担、その両面を回避する策として、不動産取得を目的とした法人の株式売買(不動産M&A)の提案を行いました。
当社が中心になり、弁護士・司法書士・税理士と連携した「ライセンサーチーム」を組成して事案に対応。
売主・買主・ライセンサーとの綿密な協議、調整の上、不動産M&Aを実施しました。
その結果、売主は、売却資金の手残りを増やすことができました。
参照:野村不動産ソリューションズHP「取引事例04」
https://www.nomu.com/consult_service/case/case04.html
このように、野村不動産ソリューションズが中心となって多方面と連携することで、課題解決を可能にしています。
まとめ
富裕層戦略といってもその手法は様々です。
それぞれの企業の強みを活かして幅広い顧客ニーズに応えられるように備えられています。
また、上記に述べたように、一般的な実需不動産売買では1度きりの取引となりやすいところ、富裕層向けサービスの場合、反復してサービスを提供することが見込めます。
中小の不動産業者としても、大手の動向から知見を得て自社に取り入れられることがあるかもしれません。
自社の強みを活かした戦略を見直してみてはいかがでしょうか。