ある急成長住宅会社の現場は大混乱

10年後には新築住宅の着工が激減すると言われていますが、そんな時代にあっても急成長の会社は存在します。

年間5棟の会社が翌年10棟やれば進捗率100%です。

年500棟の会社が同じく翌年に1,000棟やれば、これも進捗率が100%となるわけです。

具体的な着工棟数は伏せますが、ある中堅住宅会社(J社)の話を取り上げましょう。

J社は倍々ゲームとはいかないものの、毎年かなりの成長率を見せている会社です。

しかし、これだけ急成長すれば、現場はどうしても大混乱してしまいます。

この会社の問題というより、どの会社でも発生しうる構造的な問題といってもよいでしょう。

「現場に仮設トイレがないんだよ」

これはつい先日、長年の知人である大工から直接聞いた話です。

この大工はJ社が近年大攻勢をかけている営業エリアのど真ん中に事務所をかまえているのですが、その大工とこんな会話になりました。

大 工「J社って森先生知っている?」
森 「名前だけならよく知っているけども、たしか最近破竹の勢いの会社でしょ?」
大 工「そうだよ、ところがこの会社の現場に入っている職人に聞いたんだけど、なんだかむちゃくちゃみたいだね」
森 「販売があれだけ絶好調なので、現場は当然混乱するよね」
大 工「それはそうなんだけど、その職人が言うには現場にトイレがないらしいんだよ(笑)」
森 「トイレって仮設トイレのこと?」
大 工「そのとおり。仮設トイレがないから、トイレは近くの公園かショッピングセンターまで行くらしいよ」

にわかに信じられない話ですよね。

ところが事実なんですよ。

たまたまその現場だけの話かもしれませんが、工事がずいぶん進んでから、やっと仮設トイレが入ったらしいのです。

掲示板に書かれたらまずいことになる

この話を聞いてから、J社の名前を入れて検索をいろいろかけたところ、トイレの話は出ていませんでしたが、いろいろと現場の問題に関する書き込みがありました。

建築棟数が急増するステージにおいては、現場でのトラブルも多くなり、どうしても掲示板などに書き込みをされてしまうケースが出てきます。

J社ではありませんが、私が直接知っていたり、または間接的に耳にした評判の悪い会社をネットで検索すると、多かれ少なかれ掲示板に罵詈雑言とも言える内容が書かれているのを目にします。

「掲示板なんて便所の落書きだから信用しない」

このように肯定的に取ってくれる方ばかりではありません。

一件や二件の落書きぐらいであれば、この私であっても気にしませんが、その数が膨大になると、さすがにおかしいと誰しもが思うでしょう。

「現場監督なんて見たことがない」

引き続きJ社の話を知人の大工から聞き込みました。

現場監督の担当現場があまりにも多いのでしょう。

複数の職人に聞いたところ「現場監督の顔なんか憶えていないよ。そもそも現場に来ないんだからさ(笑)」という驚愕の内容すらありました。

これもこの会社に限ったことではなく、受注先行型の住宅会社には必ず起きる現象といってもよいでしょう。

私は営業系のコンサルタントをしていますが、経営陣によく聞かれるのは「現場監督の知り合い知らない?」です。

とにかく足りないのは現場監督や設計などの職種の人々。

もともと数が足りていないという状況にある中、急成長で現場数がどんどん増える状態であれば、現場管理に問題が起こるのは時間の問題です。

施工もだんだん粗くなる

家,建設

施工が粗くなるのも当然の成り行きです。

J社の現場に入っている職人さんの話の続きですが、最も顕著に表れるのが資材の搬入とその管理だといいます。

ご存知のように、住宅現場はその工程に沿ってさまざまな部材や建材が搬入されるのが本来あるべき姿です。

基礎の打設と同時にユニットバスが現場に搬入されるようなことはあってはならないことだとすぐにわかりますが、その他の建材などについても、予定よりかなり早く入ったり大幅にずれることが日常茶飯事になっているようです。

雨の日の現場は悲惨

意識の低い工務店やJ社のような急成長住宅会社に見られるのが、現場に保管された建材や資材が雨に打たれて、たっぷりと水分を含んでいる状態でしょう。

資材を屋根のないところに保管せざるを得ない状況は発生するのですが、その際にはこれでもかというぐらいに養生するのが業界では常識です。

ところが、上からブルーシートをかぶせて四隅に石を置いただけならまだしも、横から水が入り込んだり地面の泥と一体化してくしゃくしゃになっているような現場がよくあるとのこと。

現場監督も分かっているはずですが、分かってはいるものの、現場監督の能力を完全にオーバーしているということでしょう。

野晒現場にクレーム入れたお客さんがいた

当然でしょうね。

J社のお客さんが、たまたま自分の現場がこのような状況になっているのを見て現場監督に抗議をしたことがあったそうです。

ただ、このお客さんはとても優しい性格だったらしく、現場監督にまんまと丸め込まれてしまったようです。

「こういうことはよくあることで、しっかり乾かせば大丈夫ですから対応しておきますね」

どうやらこんなことを現場監督に早口でまくし立てられて、納得してしまったようです。

くだんの職人さんがこのやりとりを、真横で耳をダンボにして聞いたいたそうで、心の中で「これさすがにやばいだろう・・・」と思っていたと話をしていたそうです。

営業と現場の意思疎通もほぼなし

この手の会社にありがちなのですが、受注能力だけはやたらめったら強いので、どんどんと契約を上げていきます。

本来であれば、現場でトラブルが起こらないように営業マンは気を配るよう上から教育を受けるものですが、上層部にはおそらくそのような発想そのものがないのでしょう。

「営業担当者の顔なんて見たことない」

現場監督の顔すら記憶が曖昧になる程度ですから、これが営業マンとなると言うまでもありません。

営業担当者も現場に顔を出すことなど教えてもらっていないので、 足を運ばないのはある意味当然のことです。

営業マン、現場監督、職人、そしてお施主さん、全てのやり取りが疎遠になっているので、現場が始まると同時にトラブルが噴出するのは当たり前でしょう。

私が営業コンサルタントだけに言いづらいのですが、営業一本やりの住宅会社は必ず破綻を起こしますし、日本社会のことを考えても良くないことだと思います。

私の現役当時は些細な事でも現場監督に報告

私がよくやっていたということではなく、これは会社の決まりだったのでそれに従っていたまでです。

例えば自分のお客さんが「サッシの色は白にしたけどやっぱりちょっとどうかななんて思うんだよね」と言ったとします。

お客さんも今更変えられないことは分っていますし、私もそう思っているのですが、このような会話ですら現場監督に必ず報告していました。

現場にお客さんが行くと、現場監督が何気なくこの話を振るわけです。

お客さんから見れば営業マンと現場監督がつながっているのが分かりますので、何かあると私に対して連絡をしてくるのです。

現場監督よりは営業マンの方がお客さんにとっては連絡しやすいですからね。

このように密に連絡を取り合っているので、トラブルも少ないですし、仮に問題が発生したとしてもその芽が小さなうちに摘み取れるのです。

まとめ

いかにして新築契約を取るかに皆が頭を抱える中、J社はどんどん受注をとっているわけですから、それはすごいことだと思います。

営利企業ですから、営業を止めるわけにはいかないのもよくわかります。

しかし、過去の歴史を振り返ればわかるように、異常な進捗率を見せる会社は途中でおかしくなることが往々にしてあります。

こうなって迷惑を被るのはお施主さん。

J社には何とか今の状況を立て直して、苦境乗り切ってほしいと願っています。

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