23年間にわたって新築を契約したお客さんを、私はビデオ取材してきました。
1999年に全国区ビルダーに対し「顧客取材をして研修題材にしませんか?」と提案をしたのがスタートですが、その後各地の住宅会社で200件を超える取材を行いました。
今月は再び1999年にお手伝いした会社か10件のまとまった取材依頼を受け現在実行中です。
今回のコラムはその取材の最新内容をかいつまんでお伝えしていきます。
細かい部分は開示できませんが、皆様に十分参考になるご報告をさせていただきます。
最近はメーカーを絞り込んでからやってくる
取材をした方をDさんとしましょう。
Dさんと私はこんな会話から話を始めました。
私 「家づくりの手始めはどんな動きをされましたか」
Dさん「まずはSUUMOカウンターですね。そこで何社か紹介してもらいましたが、それ以外の会社は接触していません」
SUUMOカウンターの評価はいろいろありますが、現状では大きな位置を占めているのは事実ですし、DさんのようにSUUMOカウンターである程度メーカーを絞り込んでそこの展示場だけに足を運ぶというケースが非常に増えています。
私 「最終的に何社見学されました」
Dさん 「4社ですね。この4社からすべて見積もりと図面を出してもらい徹底的に比較検討しました」
私 「最終的にはA社に決定したわけですが、A社の営業さんの良かったところはどこですかね?」
A社に決定した要因の一つが営業であることは間違いないので、最初にこのような質問をぶつけてみました。
親近感を感じた営業
これはお客さんの感覚になるので説明しようがありませんが、営業の対応でよく見かける、硬いというか丁寧すぎる営業は私から見ると「ちょっとな・・・」と思います。
今回のケースでも、弊社の営業は非常に親しみがあって、打ち合わせもリラックスしてできたと、Aさんは営業社員を大変評価していました。
真っ先に脱落した住宅会社は営業に難あり
A社の営業に親しみを感じたということは、裏返せば他の住宅会社の営業には親しみを持てなかったということでしょう。
そのあたりを伺ったところ、明快な答えが返ってきました。
「〇〇ホームの営業さんは良い方だったのですけども、ものすごく硬いのですよね(笑)」
硬いというか馬鹿丁寧な感じだったようです。
強いて言えばホテルマンのような対応というか、宝石を売る高級デパートの店員のような対応と言ってもよいでしょう。
その場限りの30分程度の商談であればこのような対応もありかもしれませんが、住宅の場合は自分たちの生活のすべてをさらけ出して話をする相手でもありますし、なんといっても付き合ってる時間が長時間に及ぶのです。
多少はフランクでないとこちらも、息が詰まってしまうでしょう。
知識あやふやな営業もいた
Dさん自身も細かい内容は忘れてしまったと話していましたが、2~3のことについて、あやふやな答えをする営業がいたとのこと。
この会社も早々に切ったらしいのですが、その時の対応にずっと不信感を持っていたようです。
知らないことは知らないと、きっぱりと言う態度が営業に必要だと改めて感じさせられました。
ちなみにこの住宅会社は、誰もが知る大手メーカーです。
収納提案力に魅力を感じた奥さん
収納提案力を全面的に出している住宅会社
住宅の提案において収納の話をすることが大事なことは、誰しもが理解されているでしょう。
しかし、会社の方針として収納提案に力点を置いていることを全面アピールしている会社は少ないでしょう。
A社はそこが違いました。
収納提案力がありますよ、とはどんな会社でもアピールしますが、 A社のアピール度は半端ないものがあったわけです。
これだけ力強くアピールするわけですから、ホームページを見れば 誰しもがすぐに気がつきますし、営業社員と具体的な折衝になれば彼らもそこを強烈にアピールするわけです。
今回もこれらのアピールに対して奥様が素直に好感を持ち、期待を寄せたという狙い通りの流れになっていたわけです。
私は経営者であれば 素直に真似をします
私の工務店経営者と仮定しましょう。
経営者の立場からこの顧客取材の情報を得れば、すぐに自分の会社でも真似をします。
真似とはこういうことです。
「弊社は収納提案を非常に得意としております」
このキャッチフレーズを、ホームページの全面に出すのと同時に、 社員教育の徹底してお客さんへの提案にあたらせます。
施工能力の問題もちろんありますが、基本的にはアイディアがどれだけ出るかにかかっていますので、工法がどうのこうのとか収めがどうのこうのという問題はあまり大きくありません。
ところで、収納提案のネタをどのように入手するかですが、これはネットを調べれば簡単に様々な収納のアイディアが手に入ります。
それらを精査した上で自らの会社に取り込み、ホームページ大きくアピールすればいいだけです。
私から見れば非常に簡単なことなのですが、手をつけない工務店がほとんどだと感じています。
メンテナンスが楽な外壁のアピールにも目がいった
ご夫婦共々この話を強調していました
A社の営業マンは外壁メンテナンスが極めて楽で、長持ちする外壁であるかをこれでもかとアピールしてきたそうです。
一般住宅のメンテナンス費用のシミュレーションを目の前で示し、 通常であれば10年ちょっとで150万円程度の外壁塗装が必要であると話していたことが印象に残ったとのこと。
我々の世界では10年ちょっとすればこの程度の外壁塗装が必要なことは常識ですが、一般のお客さんにとっては目が飛び出るほどびっくりするのです。
家を建ててローンを払っていくのは誰でもがわかりますが、まさか10年ちょっとで外壁を全て塗り替える必要があるなどとは普通は気付きません。
しかも、その費用が100万単位となれば、驚愕するのは当然でしょう。
Dさん夫婦がこの話に耳がダンボになるのも理解できます。
会社決定要因の一つとして、外壁塗装の150万円は強烈なインパクトがあったのは間違いないようです。
契約客取材は営業ノウハウが山のように入手できる
この他にもいろいろな話があったのですが、すべての詳細は語れませんのでこの程度にしておきます。
しかし、私が示した二つのポイントだけでも、受注力アップに大きな助けになるとは思いませんか?
一つ目は収納の話でした。
二つ目の外壁塗り替えの件は「うちでは簡単に対応できないよ」という会社も多いと思います。
しかし、 既にそのような外壁素材で施工している会社であれば、今以上にお客さんに対して積極的にアピールしてみてはどうでしょうか。
これまでのアピールが50だとすれば倍の100にするのです。
簡単なことですが、お客さんへの訴求力が大幅に増えることを私が断言します。
そして収納の件ですが、これについてはすべての工務店が真似できると言ってもいいでしょう。
後は皆さんが重い腰を上げて動くかどうかです。
まとめ
これまでたくさんの記事を書いてきましたが、今回取り上げた顧客取材はこれまでも数多く取り上げてきました。
取材をするために新たな発見があるのはもちろんですが、営業マンのへの信頼やスピード感のあるレスポンスなどを高く評価したことが理由で契約をしたお客さんの声は、昔も今も全く変わりません。
このような事実があるわけですから、経営者の皆さんは建物のデザインや性能向上はもちろんですが、営業のレスポンスがしっかりなされているかどうかに目を配ることも、会社の利益を上げる大きな要因の一つになるのです。
このような発想を持って、自社でもそれなりにできる顧客取材を積極的にどんどん行ってください。
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