本企画、第2回は東急東横線の中目黒エリアを取り上げていきます。
※前回に引き続き、可読性を重視し各社の呼称には敬称を用いず表記させていただきます。
初回は渋谷エリアをご紹介し「やはり東急が強いがここ数年シェア率が下落傾向」「各社の富裕層施策が本格化しており競争が激化している」といったトピックに触れました。
筆者の印象としては、東横線も渋谷に似て「東急の影響力が強いエリア」というイメージですが実際のところはどうなのか、集計結果を見ていきましょう。
売出件数ランキングについて
- 集計期間:2021/1/1~2023/12/31の間に売出を開始した案件
- エリア:東横線(代官山駅~中目黒駅)
- 単位:各社法人単位ではなく支店ごとに計上
売出件数ランキング 中目黒エリア
まずは「中目黒エリア」についての捕捉ですが、各社の取扱件数や駅ごとのランキングの顔ぶれを加味して、代官山駅・中目黒駅・祐天寺駅の3駅をまとめて「中目黒エリア」として集計を行いました。
前回同様、まずは2021年~2023年までの3年間における売出件数ランキングの推移を御覧ください。
東急線沿線ですからやはり渋谷同様に東急リバブルが強く「東急リバブル 中目黒センター」が3年連続でランキング1位を獲得しています。
しかし、シェア率についても渋谷と同様の下落傾向で、2021年時点では8.05%あったものが、2022年 7.16%→2023年 5.76%と推移しています。
また、よく見ると2022年については「三井のリハウス 中目黒センター」が同率1位を獲得しているため、3年連続単独1位とはいきませんでした。
ちなみに2022年に同率1位を獲得したリハウス中目黒ですが、実は2023年3月31日に閉店しており業務を恵比寿センターに引き継いでいます。
その結果、2023年のランキングからリハウス中目黒は姿を消しており、リハウスについては代わりに両隣の支店「学芸大学」「恵比寿」が順位を上げています。
このあたりの順位の入れ替わり、各社の売出件数について、さらに細かく見ていくと「売仲介は大手の独壇場」という通説が揺らいできているのではないか?そんな可能性を感じる結果になっていますので、もう少し解説を続けます。
上位勢は弱含み、中堅層以下が盛り返している
まず、エリア全体の売出件数は「410→433→486」と毎年どんどん増加しています。
しかし、ランキング上位3社の売出件数については「総数と連動して増加」とはいかず、2023年はむしろ最低値を更新しています。
売出件数だけでなく独占率までみていくと、より顕著にエリア内での勢力の移り変わりが見えてきますので参考値として出しておきましょう。
2021年:18.78%(=8.05+5.61+5.12)
2022年:18.94%(=7.16+7.16+4.62)
2023年:12.76%(=5.76+4.12+2.88)
ここで閉店済のリハウス中目黒の数字に改めて注目してみます。
同率1位になった2022年時点の実績が「売出件数31件 / 独占率7.16%」でした。
しかし2023年には店舗がなくなっていますので、本来であればこの数字の多くは統合先である恵比寿、エリアによっては学芸大学の支店に引き継ぐのが理想です。実際はどうなったのか、両店舗の独占率について2022→2023年の推移を以下に示します。
▼三井のリハウス 恵比寿センター
2022年:1.39%
2023年:2.67%(+1.28)
▼三井のリハウス 学芸大学センター
2022年:1.62%
2023年:2.88%(+1.26)
恵比寿・学芸大学の2店舗の合計で、前年比+2.54%の独占率を獲得しています。
しかし、中目黒センターが握っていた独占率は7.16%でしたので、残りの4.62%は他社に流れてしまったということになります。
さらにいうと、最大のライバルである東急・住友の2社ともに2023年の独占率は下落傾向にありますので、他の上位勢がリハウス中目黒の数字を奪えたわけではなく、6位以下の各社に拡散してしまったと考えられます。
ここまでの内容を念頭において改めて2023年のランキングを御覧ください。
たしかに上位は御三家が独占していますが、以前に比べると御三家の独占率は下落傾向にあり、6位以下の各社の独占率はじわじわと上がっています。まさに群雄割拠といえる状況です。業界を牽引するのはやはり御三家の皆様だとは思いますが、今まで以上に中堅層以下の「独占率を上げている店舗」の動きに注意が必要な状況になったのではないでしょうか。
ただ、上位勢は独占率を落としているものの、売出件数だけをみれば2022→2023年の動きとしては「ほぼ横ばい」の拠点が多い印象です。
あくまで仮説の1つですが、配置された担当者の人数次第で対応可能な案件数には限界があるはずなので「この期間中には増員がなく、現場のキャパシティ限界までは対応できていた」という可能性も考えられます。
そもそもにエリア全体でこれだけ売出件数が増加する可能性を事前に予測して増員しておくことは難しいでしょう。急激な案件増加に対し、上位勢のキャパシティを超えた分が中堅層以下に流れていったという側面も少なからずあったと考えたほうが自然かもしれません。
となると、本ランキングにおいては集計していませんが「売出価格の総額に対する金額の独占率」などをみるとまた違った勢力図が見えてくるような気もしています。特に高価格帯の独占率などは個人的には非常に気になるところです。こちらについては次回以降の課題として検討していきたいと思います。
番外編
前回同様にランキングにのった各社が、直近3年間(2021~2023年)に売出開始および掲載終了した案件について、平均の値下率と売出期間を集計したデータを添えて終えたいと思います。
全ての売主様には個別事情がありますので、本データのみから読み取れることは非常に少ないですが参考までにご参照ください。
「平均値下率」
・売出開始時点の価格と掲載終了時点の価格の変動率
・売出価格2億以上は集計対象外(極端な価格変動事例を除外するため)
「平均売出期間」
・売出開始日を起点に掲載終了日までの日数
・売止、媒介業者の切り替え等による掲載終了等も含む