今回のテーマは売却案件の専任媒介を取得するために役立つ「簡易(かんい)インスペクション」について。
簡易インスペクションができるようになると、建物の状態が把握できるようになり、瑕疵保険の加入可否などおおよその判断ができるようになります。
結果として、お客様に対して正しいアドバイスができるようになるので信頼を得られる。
信頼を得られるので、訪問査定で専任媒介を取得できる確率が飛躍的に高まる。
また、買い側の仲介でも「建物に詳しい営業担当者」として信頼を勝ち取ることができます。
簡易インスペクションはどんなことをするのか
確認内容の例としては、レーザーレベルで床の傾き、壁の傾きを計測したり、クラックスケールで基礎のクラック(ひび割れ)を調べたりします。
▼参考▼
新築一戸建て内覧会同行
簡易インスペクションは、建築士によるインスペクション(建物状況調査)を行う前段階の予備調査的なイメージです。
ですから、調査にかける時間は専門家ほどではないです。
参考ちなみに「簡易インスペクション」という言葉は、私が考えた造語です。(建築用語ではありません)
簡易インスペクションとは、読んで字の如く、簡単なインスペクションのことです。
「簡易」とはいっても、「中途半端なインスペクション」という意味ではありません。
なぜ簡易インスペクションをつくったのか
私は一級建築士で建築知識を習得し、インスペクションも1000件以上実践した経験があります。インスペクション専門会社を立ち上げ、全国各地で一般の消費者からインスペクションの依頼を受けてきました。
また不動産会社から依頼を受けて、インスペクションの実施研修も行ってきました。
営業担当者は不動産取引に関しては詳しいのですが、建物の知識が不足していることが多い。
そのため、お客様から信頼が得られなかったり、建物について間違った回答をすることでトラブルになってしまうケースがあります。
具体例をあげると、
案内のときに買主さんから
「このひび割れ大丈夫でしょうか」と質問を受け、
「う~ん・・・・よくわかりません」とか
「築年数的にはこんなものです。大丈夫ですよ。」
と根拠もなく無責任に答えてしまい、
お客様を不安にさせてしまう。
ちなみに、弊社には、この無責任な回答に不安を抱いた消費者から問い合わせやご依頼を多くいただきます。
間違えた回答1つが大きなトラブルを引き起こす
あなたも経験があるのではないでしょうか。重要な局面でのいい加減なアドバイスは危険だということを。
営業担当者は取引の最前線にいます。
ですから、取引がスムーズに進められるか、トラブルを引き起こすのかは営業担当者次第といってもいいかもしれません。
私は営業担当者たちに対して、インスペクションの実践見学をしました。
既存一戸建てで実際に私がインスペクションをどんなふうに行っていくのかを最初から最後までみてもらうのです。
見学した営業担当者たちからは
- 「建物の不具合の基準を知ることができてよかった」
- 「今回、見学したことでインスペクションのことを実体験としてお客様に伝えられます」
- 「インスペクションについて詳しく学べる機会がまったくなかったので、勉強になりました」
などの感想をいただきました。
そこで私は気づいたのです。
「営業担当者で建物の専門的な知識を持っている人は少ない。
だからこそ、営業担当者が建物に詳しくなれば差別化につながるのではないか。」
それから建築士でない、不動産の営業担当者が行える簡易インスペクションという独自の手法を考案しました。
机上の空論にならないように不動産会社の売却査定に何度も同行させてもらい、実際の取引現場で簡易インスペクションを私自身で実践してきました。
簡易インスペクションについて
・最低限知っておくべき建物の基本知識
・どのような手順がよいか
・建物のどの部分をチェックしたらよいか
・どんなことを説明すればよいか
・お客様に言ってはいけないことはなにか
・何を伝えればお客様から信頼が得られるのか
などの営業担当者が簡易インスペクションを行うために必要な道具、説明ツールやマニュアルなどをまとめました。
そして、全国各地で簡易インスペクションを活用してもらったところ驚くべき効果につながりました。
その効果とは、「訪問査定での専任媒介の取得率が飛躍的にアップした」ことです。
簡易インスペクションが効果的な理由
なぜ専任媒介の取得率がアップしたのでしょうか。
答えは、「訪問査定のプロセスの違い」にあります。
ほとんどの会社は、訪問査定でお客様の建物の状態をきちんと見ていません。
査定の問合せを受けたときには「建物を見てみないと正確な査定額を出せません」と言っていたのに、訪問査定では建物を大して見ないのです。
対して、簡易インスペクションを実施する会社では、建物のことをしっかりチェックし、その上で査定額を提示する。
建物のことはあまり見ないA社 VS 簡易インスペクションで建物をしっかりチェックするB社
お客様から得られる信頼度は大きく異なります。
また査定のときにお客様から質問を受けたと想像してみてください。
訪問査定で建物をみたときに「きれいな状態ですね。全然問題ないです」というA社の担当者と、
「床の傾きは1000分6以下という瑕疵保険の基準があるのですが、こちらの建物は大丈夫そうですね」
というB社の担当者がいたとき、お客様はどちらを信頼するでしょうか。
建物のことをよくわかっていない担当者と、不具合の基準を知っている担当者。
お客様の気持ちになってみてください。あなたの大切な所有物件の売却を任せるのはどちらがよいか。
もちろん専任媒介の取得率が高くなる理由は、簡易インスペクションだけではないと思います。しかし、簡易インスペクションがお客様から選ばれるポイントのひとつになっていることは間違いありません。
お客様の信頼を得るポイント
簡易インスペクションを活用して、お客様に選ばれる担当者になろう
※簡易インスペクションを導入する上での注意点があります。
建築の知識はなく、インスペクションを見たことあるから、という状態で簡易インスペクションのようなことを行うとトラブルになってしまう可能性があります。
お客様から信頼を得るどころか、信頼を失うリスクもあります。
正しい方法を身に付けた上で実践することをおすすめします。
他の会社と違うことをやることが差別化につながります。差別化すれば、お客様に選ばれる確率を高めることができます。
仲介業務で差別化できるポイントは、他にも数多くあります。一つ一つは小さな差別化でも、積み重ねれば大きな違いになります。
このコラムがあなたの日々の仲介業務のヒントになればうれしいです。