不動産業界が取組むSDGsの事例とその意義

2015年の国連総会で採択された『持続可能な開発のための2030アジェンダ』に書かれた持続可能な開発目標「SDGs」は、多くの企業でも取り組んでおり事業者にとっては社会的評価の1つの指標ともなっています。

不動産に関わる企業にとっても、無関心ではいられないテーマになってきました。

SDGsが目標とするものは、事業に直接関係する分野もあれば間接的な分野もあります。

また日常的に無意識ながらも実践している行動目標もあり、SDGsを意識することが企業活動をより創造的にする効果もあります。

ここでは不動産大手の取組みを知ることにより、明日から始められる身近なSDGs意識について学んでみたいと思います。

そもそもSDGsとは?

「SDGs(エスディージーズ)」とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。

2015年9月に国連で開かれたサミットで各国の代表によって採択され、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げられています。

そしてSDGsの内容は「17の目標」と「169のターゲット(具体目標)」で構成されています。

SDGs,17の目標
参考:外務省 国際協力局 地球規模課題総括課「SDGsの概要及び達成に向けた日本の取組」

17の目標は、「社会・経済・環境」の3側面から捉えることのできる目標を設定しており、社会面では貧困や飢餓、教育など、経済面ではエネルギーや資源の有効活用、経済成長など、環境面では地球環境や気候変動など地球規模で取り組むべき環境アジェンダを提起し、これらの問題を解決しながらより良い未来を築くことを目指しています。

そして169のターゲットは、17の目標に準ずる具体的な目標を掲げ、細かな目標数値や、どのようにゴールを解決していくかを説明しています。

SDGsに対する企業の意識

株式会社帝国データバンクは2021年6月に「SDGsに対する企業の意識調査」を行いました。
帝国データバンク,SDGsへの理解と取り組み
出典:株式会社帝国データバンク「SDGs に関する企業の意識調査(2021 年)」

その中で「SDGsへの理解と取り組み」については、前回調査(2020年6月)に比べるとSDDGsに積極的な回答が24.4%から39.7%へと大幅に増加しています。

ただそれに反して、SDGsの存在を知りつつも取り組めていない企業も多く、日本政府はこうした企業が意欲的に取り組めるよう、その価値や事例を示していく必要がありそうです。

帝国データバンク,SDGsに対する企業の意識調査

出典:株式会社帝国データバンク「SDGs に関する企業の意識調査(2021 年)」

一方、規模別の調査では小規模・中小企業に比べ、大手企業は55.1%と半数を上回り、SDGsに対してより積極的に取り組んでいることも分かりました。

不動産大手のSDGs

不動産業においても大手企業では目標を掲げる事業者が少なくありません。

国際社会におけるSDGs17の目標のうち、自社の企業目標に関係する分野について、それぞれの企業なりのやり方で目標に達成に向けて進んでいこうとしています。

ここでは不動産大手5社が取り組んでいるサステナビリティビジョンから、SDGsの目標をどのように設定しているのかを見ていきます。

三井不動産

三井不動産は17すべての目標にチャレンジしており、積極的な活動をおこなっています。

さらに細分化された項目を多数網羅し、専門部署を設けるなど取組み方に本気度がみられます。

三菱地所グループ

三菱地所グループは13の目標について活動をおこなっています。

取り組むべきマテリアリティを次の4つにし、SDGsの目標が位置づけられています。

1. Environment 気候変動や環境課題に積極的に取り組む持続可能なまちづくり
対応するSDGs目標は、11、3、7、13、14、15
2. Diversity & Inclusion 暮らし方の変化と人材の変化に対応しあらゆる方々がかつやくできるまちづくり
対応するSDGs目標は、11、3、5、8、10、17
3. Innovation 新たな世界を生む出し続ける革新的なまちづくり
対応するSDGs目標は、11、7、9、12
4. Resilience 安全安心に配慮し災害に対応する強靭でしなやかなまちづくり
対応するSDGs目標は、11、9、17

住友グループ

住友グループは8つのテーマに区分しそれぞれのテーマを担当するグループ企業があります。

住友不動産は「まちづくり」をテーマにしており、SDGsの目標は11、3、8、9、12、13、15、17と8目標の設定です。

東急不動産ホールディングス

東急不動産ホールディングスは以下の6つのマテリアリティを設定しており、SDGs目標は12の目標が設定されています。

1. 多彩なライフスタイルをつくる
対応するSDGs目標は、5、8、10、12
2. ウェルビーイングな街と暮らしをつくる
対応するSDGs目標は、3、11
3. サステナブルな環境をつくる
対応するSDGs目標は、7、13、15
4. デジタル時代の価値をつくる
対応するSDGs目標は、9、17
5. 多彩な人財が活きる組織風土をつくる
対応するSDGs目標は、5、8、10
6. 成長を加速するガバナンスをつくる
対応するSDGs目標は、16

オープンハウス

オープンハウスは以下の6つのマテリアリティを設定しています。

11のSDGs目標が設定されています。

1. 環境保全
対応するSDGs目標は、7、15
2. 製品の安心安全、顧客度満足度
対応するSDGs目標は、11、12
3. 人材育成
対応するSDGs目標は、4、8
4. 働き方改革
対応するSDGs目標は、3、5
5. サプライチェーンマネジメント
対応するSDGs目標は、12、17
6. コンプライアンス
対応するSDGs目標は、10、16

SDGs17の目標

先ほども述べたようにSDGsには17の世界的な目標があり、各目標にはさらに細分化された項目があり総計169の達成基準があります。

17の目標の捉え方は企業により違いがあり多様な取り組みが為されています。

1~17の目標について上記5社は具体的にどのような取り組みをしているのか見ていきましょう。

SDGs1.貧困をなくそう
2030年までに貧困状態を半減させるための活動をおこなっています。
2008年より毎年春・秋に全国の三井アウトレットパークにて、衣料品を集めてNPO法人日本救援衣料センターを通して世界各地に寄贈しています。(三井不動産)

SDGs2.飢餓をゼロに
社内ベンチャー企業「株式会社GREENCOLLAR」を2020年に設立し、日本とニュージーランドで生食用ぶどうの生産と販売事業を開始しました。(三井不動産)

SDGs3.すべての人に健康と福祉を
一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワークジャパン(LINK-J)を設立し、ライフサイエンス領域におけるイノベーション創出のため、コミュニティ・場・資金の支援をおこなっています。(三井不動産)

SDGs4.質の高い教育をみんなに
やる気のある人材を受け入れて結果に報いる組織を目指しており、年齢に捉われない人材登用と将来の経営を担う人材教育に努めています。(オープンハウス)

SDGs5.ジェンダー平等を実現しよう
2020年10月より女性の活躍をサポートする「女性活躍推進法における株式会社オープンハウス行動計画」推進のため、女性活躍推進相談室を人事部直下に設置しました。さらにダイバーシティ推進のための行動計画策定と目標設定も行っていきます。(オープンハウス)

SDGs6.安全な水とトイレを世界中に
東京都水道局との連携により、多摩川上流の水道水源林保全活動を2017年6月からおこなっています。(三井不動産)

SDGs7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
全国5か所でメガソーラーによる太陽光発電が稼働中です。(三井不動産)

SDGs8.働きがいも経済成長も
住まい方・働き方・過ごし方を融合した「ライフスタイル創造3.0」の推進を図り、心身ともに活力ある生活を、不動産ビジネスをとおして実現します。(東急不動産ホールディングス)

SDGs9.産業と技術革新の基礎をつくろう
デジタル技術の活用を図ることにより変革されるビジネスモデルが、新しい顧客体験価値をつくり出します。
(東急不動産ホールディングス)

SDGs10.人や国の不平等をなくそう
三菱地所は2012年1月から日本政府観光局の委託により、外国人向け総合観光案内所「JNTOツーリスト・インフォメーション・センター」を丸の内エリアで運営しており、高齢者や障がいのある訪日外国人を含むすべての人を対象としたユニバーサルデザインに注力してきました。(三菱地所グループ)

SDGs11.住み続けられるまちづくりを
2019年経済産業省が立ち上げた「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース」に参画し、街づくりにおけるロボット実装の加速に向けた取り組みを推進しています。(三菱地所グループ)

SDGs12.つくる責任つかう責任
オープンハウスが提供する住宅には、地盤保証システム、耐震構造、アフターサービスと、マイホームを購入した後お客さまが安心して長く住める「3つの安心」を実践しています。(オープンハウス)

SDGs13.気候変動に具体的な対策を
都心の再開発にあたり災害に弱い街から強い街へ再生し、持続的な発展が促される都市の形成を図っています。(住友不動産)

SDGs14.海の豊かさを守ろう
海洋汚染を防ぐため日本橋川の再生事業に取り組んでいます。(三井不動産)

SDGs15.陸の豊かさも守ろう
北海道の31市町村に所有する森林(約5千ヘクタール)で計画的な植林と管理・育成を適切に実施しています。(三井不動産)

SDGs16.平和と公正をすべての人に
オープンハウスはコンプライアンス経営を最重要課題としており、汚職・贈収賄などの腐敗防止に努め従業員教育や通報制度の整備などに注力しています。(オープンハウス)

SDGs17.パートナーシップで目標を達成しよう
住友不動産が再開発事業を手掛けるにあたり大切にしているのが、地域の人々と共に街を創っていくという考え方です。各地権者と丁寧に話し合い課題と向き合いながら、ひとつずつ合意形成を図っていくよう努めています。(住友不動産)

まとめ

不動産大手の取組みをみるとSDGsは特別な概念ではありません。

持続可能な社会や環境を考えた場合、私たちは常識的に理解できることです。

そして身近なところにいくらでも取組める課題はありそうです。

しかも昨年からの新型コロナの感染拡大は、地球環境を考えるキッカケにもなりました。

SDGsが目標とするのは2030年ですが今からでも時間は十分あります。

地域の不動産会社として存在価値を高める活動をスタートさせましょう。

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