2013年に設立以降、今や不動産テックのリーディングカンパニーとなった。
今回は、不動産テックの最先端を行く同社の決算をまとめてみました。
不動産テックの今後が少し透けて見えてくるかもしれません。
GAテクノロジーズの成り立ち
株式会社GA technologiesは2013年3月に設立します。
創業者であり代表者である樋口龍氏は、Jリーグ ジェフユナイテッド市原の育成選手でしたが、8年ほど前にプロをあきらめビジネスマンとして再出発をしていました。
GAテクノロジーズの設立により目差したものが、当時盛り上がりをみせていた「Fintech」に代わる「ReTech」であったと、ある対談で樋口氏は述べています。
設立後は宅地建物取引業者としての実績をあげながら、「ReTech」として開発した不動産プラットフォームが「RENOSY」です。
リリースしたのは2016年8月のことです。
ユーザーの物件探しから契約までを、インターネットで完結するサービスを開始、2017年10月期年間売上高96億円を達成します。
2018年8月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2018年10月期は200億円を達成します。
さらに2019年10月期には392億円を達成、前年比95%アップと成長をつづけています。
2019年12月には、累計会員数7万人を擁し高級賃貸メディアを運営する、株式会社Modern Standardを子会社化し、合計会員数を13万人へと飛躍的に拡大しました。
2020年5月には新型コロナ感染症拡大防止策として、全拠点にて不動産売買契約の完全非対面化を実現、不動産業界における「ReTech」のリーディングカンパニーともいえる存在になっています。
※参考文献
http://venturenavi.dreamincubator.co.jp/articles/interview/1931/
https://www.ga-tech.co.jp/company/history/
https://www.ga-tech.co.jp/news/5061/
GAテクノロジーズ全体の売上と利益
直近3期の売上高と営業利益は以下のとおりです。
売上高2018期は前期比210%、2019期は195%と上昇し、営業利益率も約3%の水準を保っています。
四半期ごとの売上高においても、下のようにQoQがほとんどの期でプラスとなっていることがわかります。
2020期の1Qは、賃貸管理部門の強化のため、主力の「RENOSY事業(iBuyer)」の事業体制を変更し、セール人員の部署異動により売上が減少しています。
四半期ごとの営業利益は次のように2020期1Qは、上記同様の原因で減少しますが、2Qおよび4Qに利益計上できる見込みであることが「2020.10 1Q決算説明資料」にて説明されています。
「GAテクノロジーズ」セグメントごとの売上
GAテクノロジーズは売上のほとんどが「RENOSY iBuyer事業」であり、セグメント情報は公開していません。
・RENOSY Living事業(中古マンション・高級賃貸マンションのWeb取引とリノベーション事業)
・ITANDI事業(賃貸仲介と賃貸BtoB事業)
メインの「RENOSY iBuyer事業」は、会員数の増加に伴い売買件数も増加する様子が確認できますが、2020期3Qは件数の微減がみられます。
すべての事業の入口はインターネットサイトであり、エンドユーザー向けのサイトは次の4つのカテゴリーがあります。
・投資する:RENOSY ASSET、OWNER by RENOSY
・売却する:RENOSY スマート売却
・買う:RENOSY 住まいの窓口
各カテゴリーには専用のサービスサイトがあり、「借りる、投資する、売却する、買う」の各顧客が会員登録し売上に結びついています。
GAテクノロジーズの短期的な戦略
2020期2Qおよび3Qにおいては、新型コロナウィルスにより次の影響がでていると決算説明書において指摘しています。
・Living事業では管理会社の営業停滞により内見可能物件減少
・ITANDI事業では仲介業界の冷えこみによる電子申込利用減
しかしすでに4Qに入った現在、新型コロナウィルスの影響は限定的であり2020期3Qの売上高進捗率は65%と、前年の71%と比較し微減となっています。
2020通期の業績予想550億円の達成が注目です。
また新型コロナウィルス感染拡大防止策の推進により、非対面販売体制などデジタルトランスフォーメーションの推進が加速し、2021期に向けたDX事業展開の期待が高くなったといえるでしょう。
さらに2019年12月におこなったModern Standard経営権取得により、その効果が2020年10月期決算においてどの程度のシナジー効果があったのかも注目しなければなりません。
GAテクノロジーズの長期的な戦略
現状はRENOSY iBuyer事業が先行しています。
RENOSY Living事業とITANDI事業は、投資フェーズにありますが、ITANDI事業はまもなく収益フェーズに入ると捉えられているようです。
RENOSY Living事業は2022期には収益フェーズに入るのではと予測できますが、現在2つの戦略にもとづき準備が進められています。
2. オンラインとオフラインを併合してすすめるマーケティングの確立
これまでは首都圏における投資用物件を主体に事業を展開してきました。
ある程度顧客層は限定的でしたが、RENOSY Living事業は幅の広い顧客層が予想され、実店舗を構える従来の仲介業との競合のなかで「ReTech」がどのような効果を生み出すのか注目されます。