大手注文住宅会社のYouTube運用に見るトレンドとは

最近ではSNS(ソーシャルメディア)が社会にすっかり定着し、ネットワーク上での個人間の会話や交流に留まらず、企業が運営する「企業公式アカウント」を目にする光景も日常的になったのではないでしょうか?

どこの業界においても今やSNSは認知拡大、ロイヤルカスタマーの育成、企業ブランディングなどなど、様々な戦略を遂行する上で非常に重要なツールとして位置付けられています。

不動産業界も例外ではなく、SNSの大きな特徴として挙げられる「長期的に情報発信が行えコミュニケーションツールとしても有用」である点や、「知名度向上やブランディングに有効」である点、「写真や動画などを用いて視覚からの訴求が可能」である点などが非常に相性が良いため、SNSを活用する不動産企業が増えています。

前提として、今回取り上げるYouTubeは「果たしてそもそもSNSなのか?」疑問に思った人もいるかもしれませんが、結論から言えば、YoutubeはSNSに入ります。

YouTubeはオンライン動画共有プラットフォームとしての一面が強いですが、コメントやアンケート機能を使えば視聴者と交流を深めることができたり、Youtubeライブでは生配信をしながらユーザーのスパチャ(スーパーチャット)を読み上げたり、コミュニティ投稿でも視聴者と交流することが可能なため、SNSとしてカウントされます。

さて、今回の記事では動画の需要がますます高まっている昨今における大手注文住宅会社のYouTubeアカウントを参考に、不動産業界内のYouTubeトレンドについてご紹介します。

この記事では、

・不動産業界の企業がYouTubeを活用するメリット
・大手注文住宅会社のアカウントごとの特徴
・最近の不動産業界のYouTubeトレンド

についてまとめていきます。

不動産業界の企業がYouTubeを活用するメリット

冒頭でも触れたように、SNSは写真や動画といった「視覚的訴求」に長けている特長があり、実際に物件を決める時には「内見」をしたり、お家づくりでは「モデルハウス」を訪れて参考にしたりする傾向のある住宅・不動産業界とは相性が良いと言えます。

特にYouTubeの特性である動画の活用は不動産だけではなく、多様な業界で活用されるケースが増えています。

不動産の動画の場合、豊富な情報を短い時間で効率良く収集できるため、物件紹介や採用動画、お客様へのインタビュー動画など幅広いシーンで利用できます。

YouTubeを活用するメリットとしては

物件の特徴や魅力を分かりやすく伝えられる

物件紹介における動画は、文章や写真では伝えることが難しい各部屋の詳細や特徴を詳細に伝えられることで、ユーザーが物件に住むイメージを膨らませやすくなるほか外観や周辺環境なども伝えられるので、顧客満足度の向上に繋がります。

例えば、日当たり具合や部屋の雰囲気、隣の部屋との距離感や周辺にどんな建物が見えるのかなど、写真や文章では伝えきれない物件情報をよりリアルに伝えられます。

360度カメラを利用すれば、まるで自分がその現場にいるかのように感じられ、ユーザーにとっても入居後の想像がしやすく有益です。

また、入居者へのインタビュー動画や物件の案内付き動画など、カテゴリ分けにして作っておくことで、お客様に分かりやすく伝わります。

オンライン上で手軽に閲覧や訪問ができる

物件の詳細が分かる動画をYouTube上やホームページで公開しておくことで、海外在住の方や遠方の方でも時間や場所を問わずにオンライン上で手軽に閲覧や訪問ができます。

また、お客様の中には「直接足を運んで物件を見たいけれど、不動産屋に足を運ぶ時間がない」という方もいるため、潜在的なニーズにアプローチでき購入候補者の増加に繋がります。

さらにはユーザーが前もって動画で不動産の詳細を把握してもらうことで、後々スムーズに案内できたり、時間と手間をかけずコストを抑えたりできます。

企業ブランディングができる

不動産業界は競合他社と差別化できる強みを持っておくことが重要です。

動画を活用すれば自社の特徴や魅力などをアピールできるので、企業ブランディングに繋がります。

動画内で影響力のある企業のトップや実績のあるスタッフが出演することでお客様に安心感や信頼感を伝えることができたり、ユーザーに信頼感や透明性がある企業というイメージを与えることができたりとメリットが多いです。

若者を中心にInstagramたTiktokなどのSNS利用が増えていますが、30/40代が利用しているSNS状況について全体でみると、YouTube等の動画共有サイト(58.4%)が最も高く、次いでLINE(51.1%)、Twitter(37.1%)、Facebook(33.0%)、Instagram(22.2%)という順になっています。

参照:「30代・40代のSNS利用」に関する調査結果

InstagramやYouTubeといったSNSを使って情報収集や検索をするという行動が生活者の一般的になっている現代において、自社のマーケティング戦略に取り入れることはとても重要です。

大手注文住宅会社のアカウントごとの特徴

重要なマーケティング戦略の一旦を担うYouTube。

それは何となく分かっているから自社でも運用してはいる、または検討中ではあるけれど、一体どんな投稿をしたらいいのか分からない!

そんなお悩みをお持ちの担当者の方は大勢いるのではないでしょうか?

今回は、日本を代表する大手注文住宅会社9社のYouTubeアカウントを参考に、現在の不動産業界におけるYouTubeアカウントのトレンドを紐解いて行きたいと思います。

参考にする大手注文住宅会社は以下の9社です。

①パナソニック ホームズ株式会社
②旭化成ホームズ株式会社(ヘーベルハウス)
③積水ハウス株式会社
④大和ハウ工業株式会社(ダイワハウス)
⑤住友林業株式会社
⑥株式会社一条工務店
⑦三井ホーム株式会社
⑧積水化学工業株式会社(セキスイハイム)
⑨ミサワホーム株式会社

では、1つづつ見ていきましょう。

①パナソニック ホームズ株式会社

基本情報

アカウント チャンネル登録者数数 投稿数 登録日
https://www.youtube.com/channel/UCUGh-9ozJ9XuyNY2nnuUwMQ 3170人 49 2014年9月26日

直近の投稿

投稿内容と考察

パナソニック ホームズ社のアカウントでは企業CMや商品紹介動画中心に投稿しており、毎月1~3本程を配信しています。

採用目的の動画や住まいの機能性を伝える動画なども投稿していますが、視聴回数が多いのは商品紹介動画となっています。

Instagram等他のSNSに比べてYouTubeはそこまで注力して発信してはいないように思われます。

②旭化成ホームズ株式会社(ヘーベルハウス)

基本情報

アカウント チャンネル登録者数数 投稿数 登録日
https://www.youtube.com/channel/UCH9EjsvMpvyKwLq6UcfkHkA

 

3580人 33 2015年7月28日

直近の投稿

投稿内容と考察

パナソニック ホームズ同様、企業CMがメインの投稿内容で、2~3ヶ月に1本程を配信しています。

こちらもInstagram等他のSNSに比べてYouTubeにはそこまで注力していないように思われます。

③積水ハウス株式会社

基本情報

アカウント チャンネル登録者数数 投稿数 登録日
https://www.youtube.com/channel/UCB7BsyTa8st3MEcKGrWqNag

 

 

9560人 170 2018年5月24日

直近の投稿

投稿内容と考察

企業CMも投稿していますが、最近のメインの投稿は毎週月曜にBS-TBSで放送されている「住まいの参観日」の録画映像を使ったルームツアー動画です。

毎月5~10本程の動画を配信しており、ルームツアーの他にも、実施したWEBイベントのアーカイブ動画やブランディング戦略の一貫としての啓蒙メッセージなども投稿しており、1ヶ月で再生回数54万回を超える動画もあります。

④大和ハウス工業株式会社(ダイワハウス)

基本情報

アカウント チャンネル登録者数数 投稿数 登録日
https://www.youtube.com/user/Daiwahouse

 

 

6980人 208 2014年5月30日

直近の投稿

投稿内容と考察

企業CMや事例紹介の動画をメインに投稿しています。9アカウントの中では最も投稿数が多いのがダイワハウスです。

採用動画や土地活用に関する動画、また実施したセミナーの内容を5~10分ほどに細かく区切って大量に投稿している時期もありました。

⑤住友林業株式会社

基本情報

アカウント チャンネル登録者数数 投稿数 登録日
https://www.youtube.com/channel/UCFeFpjOd8mzz5vKCPqYIamQ 3180人 57 2015年3月18日

直近の投稿

投稿内容と考察

企業CM・広報動画や採用のための動画をメインに他には技術に関する説明動画や木、森に関する動画を毎月1本ほど投稿しています。

こちらもInstagram等他のSNSに比べてYouTubeにはそこまで注力していないように思われます。

⑥株式会社一条工務店

基本情報

アカウント チャンネル登録者数数 投稿数 登録日
https://www.youtube.com/channel/UCGiaiTXTbCWPkcvEWRw69VA

 

2.37万人 67 2020年3月23日

直近の投稿

投稿内容と考察

YouTubeに関して言うと、一条工務店のアカウントが一強状態です。

チャンネル登録者数は2万人を超えており、2番目に多い三井ホームの倍以上の数であることに加え、他社のチャンネル登録者数の増加は近年ほぼ横ばいなのに対し、一条工務店だけは右肩上がりを続けています。

投稿内容はフォトコンテストやルームツアー、耐水害住宅情報やイラストを用いて暮らしの悩みを解決すコンテンツ、など様々な内容を投稿しています。

また、1つ1つの動画の再生回数が1万~10万と平均して多いことも特徴です。

アカウント解説時期は2020年に入ってからと後発であり、また投稿数自体は他のアカウントとそれほど変わらず月に1~2本と多いわけではないので動画のコンテンツ設計の上手さが伺えます。

⑦三井ホーム株式会社

基本情報

アカウント チャンネル登録者数数 投稿数 登録日
https://www.youtube.com/channel/UCAZcChRExJy9UoezYmT5gPQ 9240人 42 2014年4月18日

直近の投稿

投稿内容と考察

ルームツアーの投稿をメインに企業CMや商品紹介の投稿を1ヶ月に1回ほどの頻度で行っています。

企業CMの再生回数は突出しており、1ヶ月で80万回再生されておりものや、1年前には1120万回再生しているものまであります。

あっちゃんことオリエンタルラジオの中田敦彦さんのYouTubeでも大体1投稿50万~100万回再生ほどなので、この1120万回再生がいかにすごいかが分かります。

⑧積水化学工業株式会社(セキスイハイム)

基本情報

アカウント チャンネル登録者数数 投稿数 登録日
https://www.youtube.com/user/SekisuiheimChannel

 

3240人 42 2012年5月14日

直近の投稿

投稿内容と考察

企業CMや広報動画をメインに商品や技術紹介の投稿を不定期で投稿しています。

あまりYouTubeは積極的に運用していないように見られます。

⑨ミサワホーム株式会社

基本情報

アカウント チャンネル登録者数数 投稿数 登録日
https://www.youtube.com/user/MISAWAhomesTV

 

3340人 84 2010年9月4日

直近の投稿

投稿内容と考察

登録日は9社のアカウントの中で最も早い2010年ですが、直近10ヶ月は投稿がなく、最近は注力していないようです。投稿内容としては企業CMや広報動画がメインです。

今年の4月からInstagramに注力し始めたので、SNS戦略としてはそっちをメインで運用しているのでしょう。

最近の不動産業界のYouTubeトレンド

ここまで大手注文住宅会社9社のYouTubeアカウントを見てきた中で特に多かった投稿は企業CMや商品紹介動画でした。

特に企業CMは一番生活者の目に触れている映像であることや、再生回数が多くなる傾向にあること、動画を使いまわせるという手軽さから多くの企業が投稿しています。

あとは、ルームツアー系の動画は実際住宅購入を検討しているユーザーにとっては一番興味関心を引くコンテンツであるため上手く活用することで実際に生活しているイメージや憧れを抱かせることができ、次のステップへの非常に効果的な入り口となります。

物件の雰囲気や日当たり、間取りや収納の使い勝手などの詳細情報を盛り込むなど、お客様が気になる情報を満遍なく伝えることで物件のイメージを掴みやすくすることができます。

例えば、物件紹介文と動画を組み合わせることで、立体的・臨場感のある情報を届けたり、360度の様々な角度から撮影するVR動画を作ることで生活のイメージに繋がったりと豊富な情報を提供できます。

また、最寄駅から物件までの実際に歩いたアクセスの動画や内覧する際の視点で撮影した動画など、ユーザーのお悩みを解決する様々な工夫を散りばめた動画コンテンツを作成するのがおすすめです。

「ユーザーのお悩み」という観点でみると、一条工務店のコンテンツ設計は非常に参考になると思います。

また、積水ハウスが投稿している「住まいの参観日」の動画のようにルームツアー内にオーナー様へのインタビュー動画を入れるのも効果的です。

「この家ではこんな暮らしができそうだな」という自分ごと化できる動画や「こんな家に住みたい」というマイホームへの憧れが湧き出てくる動画になっているかということを意識しながら投稿していくことで、とても効果的なマーケティングツールとなるでしょう。

まとめ

今回の記事では、不動産業界内のYouTubeアカウントのトレンドについて大手注文住宅会社のアカウントを参考にご紹介しました。

・企業CMや広報動画を投稿しているアカウントが多い
・Instagram等のSNSに比べ、注力しているアカウントが少ない
・物件の魅力や特徴が分かる動画やユーザーのお悩みを解決するコンテンツ動画のニーズが高い

以上3つが大きな特徴として見ることができました。

動画需要が高まっていますが、動画作成には工数がかかることもあり注力しているアカウントが少ないのが現状です。

自社のSNS活用の目的や動画の種類によって運用方法が異なってくるので、しっかりと吟味することが必要ですが、まだまだ不動産業界で専門チャンネルをきちんと運用しているアカウントは少ない分、チャンスも大きいです。

他の業務と並行して行うことが大変な場合は、外注することなども検討しながら今後のマーケティング戦略に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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