今回取り上げるのは、中古戸建の買取再販というユニークなビジネスモデルのカチタス。
競合不在の中、今後どのような成長戦略を描いているのでしょうか?
自社の今後の事業展開と絡めてご覧いただければ幸いです。
カチタスの成り立ち
カチタスは群馬県桐生市にて、1978年9月石材業を営む株式会社やすらぎの設立からはじまります。
10年後の1988年12月に宅地建物取引業の免許を取得し不動産業に進出、その10年後には不動産競売物件を落札しリフォーム後に再販売するビジネスモデルを確立しました。
好調な業績により2004年には名古屋証券取引所セントレックス市場に上場しますが、8年後の2012年3月に株式非公開を目的とする会社のTOBにより子会社となり、7月には完全子会社化し上場廃止します。
このとき現代表取締役社長新井健資氏が就任しました。
翌年2013年7月株式会社カチタスへ商号変更し、2016年3月には三大都市圏と政令指定都市をマーケットとしている、同じ業態であった株式会社リプライスの全株式を取得し経営統合します。
2017年12月に東京証券取引所第一部に上場、中古住宅再生事業のトップを走っています。
創業時の株式会社やすらぎが創りあげたビジネスモデルは、投資会社が注目する優れたものであり、TOBにより経営主体が変わりさらに発展を遂げた「企業の成長理論」を地でいったものといえるのです。
*参考文献
https://katitas.jp/information/story.html
https://katitas.jp/recruit/career/sp/about/index.html
なお、カチタスの前身である株式会社やすらぎの創業者須田忠雄氏は、創業の地桐生市で同名の株式会社やすらぎを2014年に設立し、現在経営コンサルタントとして企業への投資再生事業をおこなっています。
カチタス全体の売上と利益
直近3期の売上高と営業利益は以下のとおりです。
2019期、2020期とも10%を超える順調な成長率であり、販売戸数は5,800棟に達し目標とする年間1万棟が遠くないことを予感させる勢いです。
四半期ごとの売上および営業利益にあまり波はなく、決算期に合わせる追込みをおこなっている様子もうかがえません。
2018期、2019期とも3Qの伸びが特徴で、買主の「新居で新年を迎えよう」とする需要の多さが影響していると思われます。
一方2020期3Qの落ち込みは消費税アップの影響がでています。
*参考文献
https://katitas.jp/information/ir/library.html
「カチタス」セグメントごとの売上
カチタスは買取再販事業を専業としており事業セグメントはありませんが、2016年に経営統合したリプライスとはマーケットが異なっており、カチタス本体とリプライスとの事業比率をみておきましょう。
カチタスは地方都市がマーケットであり、リプライスは三大都市圏と政令指定都市をマーケットとして展開しています。
マーケットの違いは両社の平均単価の違いとしても表われています。
カチタスの短期的な戦略
2021期1Qは前年同期比96.5%となり、新型コロナウィルス感染症の影響がわずかですがありました。
しかし売上よりも影響があったのは仕入です。
全国営業拠点および仲介会社における在宅勤務により、新規仕入物件の商談が進まず対前年比で82.6%の実績となっています。
仕入の減少は2021期下期の業績に反映します。
6月には勤務体制が通常勤務に復帰しており、仲介会社も6月よりは通常稼働が多くなり、仕入回復が期待されるところです。
2Q期間での仕入状況は11月の発表を待つことになります。
また住宅ローンの審査状況においても変化が顕われており、飲食業や旅行関連事業にかかわる買主の審査が厳格化している兆候があると、2021期第1四半期決算説明資料にて指摘されています。
新型コロナウィルス感染症による経済への影響は、これからデータとして明確になるはずで、終息まではまだまだ予断ができないといっていいのでしょう。
カチタスの長期的な戦略
カチタスの長期計画は年間販売件数を1万棟としており、その達成には商品となる中古住宅の仕入量に左右されます。
決算説明書では空き家供給増加による仕入れ機会が拡大すると見込んではいますが、一方で空き家増加率が2013年~2018年で0.1%アップにとどまった、という調査結果もあり楽観はできません。
仕入対象としている物件の築年数は、20~30年(同社平均値)としており、エリアは都心部と過疎地・観光地を除く737市町村(対象人口:8,530万人)を対象としています。
地価の高いエリアと需要の見込めないエリアを除いた、広範囲なマーケットを「地方はカチタス」「都市部はリプライス」と、明確に区分した経営戦略が特徴といえます。
さらにコンセプトとして掲げるのが
・前所有者の生活感が残る中古でもない
・地方では選択肢が少なくなる賃貸でもない
第4の選択肢の提供です。
その証左は、地方都市における新築戸建の平均価格2,842万円と、カチタスの平均価格1,465万円の差として表れています。
さらに返済額の比較を次のように例示しています。
・地方の賃貸住宅家賃(平均値):50,608円
・カチタス物件の月返済額(平均値):41,361円
第4の選択肢としての説得力を感じさせる戦略といえそうです。
長期的には仕入力の充実が課題であり、仲介会社としては、仕入面での協力関係構築を期待してもよいのではないでしょうか。