管理物件が相続される時に管理会社が行うべきことをわかりやすく紹介

管理している賃貸物件のオーナーが亡くなると、物件は誰かに相続されるのが普通です。

管理会社としては誰に相続されるか不明な場合であっても、賃貸物件には入居者がおり管理業務を引きつづきおこなわなければ、入居者の生活に支障がでることもあります。

家賃の支払いや新規入居者の契約など、戸惑うこともでてきます。

管理物件のオーナーが亡くなったとき、管理会社がしなければならないことについて解説します。

管理物件の相続とは

相続は法律により規定されており、相続の方法として3つあります。

1. 法定相続
2. 遺言書
3. 分割協議

法定相続人は亡くなった人の配偶者と子そして親さらに兄弟姉妹をいいますが、子や兄弟姉妹の子にあたる孫や甥・姪が代襲相続し、法定相続人になる場合もあります。

遺産分割を法定相続によらない場合は、法定相続人全員による分割協議をおこない分割方法を決めます。

法定相続は遺産を簡単に法定分で分割できる場合以外はむずかしく、分割協議が必要となるケースが多いと思われます。

遺言書がある場合はその内容が優先されますが、遺言書には3種類あり様式を満たしたものでなければ無効になる可能性があります。

1. 自筆証書
2. 公正証書
3. 秘密証書

相続による不動産の所有権移転登記に期限はありませんが、相続税の支払いがある場合や賃貸物件のように「準確定申告」が必要なケースでは申告期限があるので、熟慮期間中(3ヵ月)に相続をおこなうことが望ましいです。

相続した物件の管理は誰がするのか?

管理会社としては相続によって物件の管理がどうなるかが気になるところです。

賃貸借契約は賃貸人の地位は相続人に移るので、何の問題もなく継続されますが、管理委託契約は原則的に終了します。

ただし、委託契約書に相続時の特約があればそれに従うことができます。

賃貸人の死亡により委託契約が終了するとき、管理会社がすべきことはどのようなことでしょう。

収支報告書の提出

相続人は被相続人に代わって亡くなるまでの分の確定申告をしなければなりません。

これを「準確定申告」といい、相続開始から4ヶ月以内に税務署に申告をし、賃貸事業に係る事業所得税の確定と納税をしなければなりません。

そのためにはその年度の始期から亡くなった日までの、賃料収入と経費支出の明細が必要です。

管理会社は通常、年度末に年間収支を締めてオーナーに提出していますが、前オーナーが亡くなった日までの分の期間収支報告書をまとめて、相続人に提出します。

前オーナーは継続して収支報告書を受取っていたので、こまかな説明は不要かもしれませんが、相続人は初めてみる書類でもあり、不明な点がないよう細かな注釈も必要になります。

特に専門用語が使われている場合はわかりやすくしなければなりません。

管理業務報告書とレントロールの提出

修繕履歴や定期点検報告書などについては、前オーナーが保管してあるかもしれませんが、相続人には改めて写しを提出しておくことが望ましいです。

相続人が今後の管理について、継続して委託するのか別の会社に委託するか、あるいは自主管理という選択もあり、判断するにあたって物件の現状について正確に知っておくことは大切です。

また、これまでの管理業務の適正さをアピールする狙いもあります。

レントロールは非常に重要で、入居者の状況と賃貸事業の全体を把握するには、絶対に必要な書類といえます。

預かり金である「敷金」については、入居者が退去するときには返還するものであり、レントロール上の敷金残高と銀行口座の残高との照合が必要です。

相続時に相続人と管理会社との間で共有しておくことが大切です。

そのほか仲介会社へのADや空室対策としてこれまで実行した方法などについても、今後の経営戦略上の参考になるので資料として提出することが望ましいでしょう。

相続後の管理業務について

前オーナーとの管理委託契約は死亡により終了しますが、相続人が今後の管理について判断するまでには時間があります。

その間は引きつづき管理業務をおこなう必要があり、管理会社はこれまでと同様、入居者への対応は継続しなければなりません。

葬儀などひと通りの弔事が終わったところで相続人に連絡し、落ちつくまでは管理業務を引きつづきおこなうことを伝えておきましょう。

相続人はその後もなにかと忙しく手続きがあり、正式に相続に係る判断や相続物件について検討する時間はないはずです。

前述の報告書などは相続についてはっきり決定した時点で、相続人に提出するようにします。

ひと通り書類などの提出を終えると、前オーナーとの管理委託契約の終了と、今後の管理について協議する時間が取れるようになるでしょう。

今後の管理については相続人に対し、遠慮なく「引きつづき受託したい」旨を意思表示してかまわないでしょう。

そのときに管理委託するメリットを単刀直入にアピールすることが大切です。

相続登記前に入居申込があったらどうする?

正式に相続手続きがされる前に入居希望者がおり、賃貸借契約に至ることもあります。その時点では賃貸人は死亡しており契約締結ができません。

賃貸物件は遺産分割協議などにより管理物件の相続人が特定されるまでは、相続人全員による共同相続の状態になります。

新規の賃貸借契約は共同相続人の過半数の同意により可能になります。

したがって相続人の代表者に新規契約者の件を伝え、至急判断を仰ぐことにしましょう。

同意が得られると契約手続きに着手し、契約書記名押印は相続人代表者がおこない、相続手続き後に賃貸人の変更を文書で合意する方法になります。

次に家賃などの振込みに関して注意が必要です。

相続が決定すると賃料は相続人が取得しますが、相続が正式に決まるまでの賃料については、共同相続人が取得することになります。

前オーナーの銀行口座が凍結されていなければ振込入金は可能ですが、凍結されると入金できない場合があります。

この場合は既入居者の賃料も含め、相続人代表者の口座に変更するかなど確認したうえで、入居者への連絡も必要になるでしょう。

相続放棄や相続人が決まらない場合の対応

相続人が誰も相続しようとしないため賃貸人が明確にならず、遺産分割協議もまったく進まない場合、管理会社はどのような対応をすべきでしょうか。

前述したように「管理委託契約」は賃貸人の死亡により終了します。

したがって管理会社には契約終了後、なんの責任もなく管理業務を継続する義務はありません。

また管理業務に係る報酬についても契約終了により、請求権はなくなってしまいます。

報酬の請求ができない仕事を引きつづきおこなうことは、ボランティアに過ぎません。

前オーナーの遺族に対し、道義上において管理業務をおこなわなければならない事情がある場合を除き、無関係になるといっていいでしょう。

このような場合、困るのは入居者です。

1. 賃料の支払先がわからない
2. 借りている物件に不具合があり修繕が必要となった
3. 退去するので敷金を返還してほしい

管理会社として対応できることは、賃料の供託についてです。

賃料を供託するには理由が必要ですが、このような場合は「債務者が過失なく債権者が誰であるかを確知することができない場合」に該当し、供託方法を伝えるところまではできそうです。

ほか2点については法的な問題もあり、入居者の自己判断で対応してもらうしかないといえるでしょう。

まとめ

賃貸物件のオーナー死亡により、起こりそうな問題について解説しました。

ケースとしては頻繁にあることではありません。

しかし万が一あった場合には戸惑うこともあると思います。

一般的に考えられることについての説明でしたが、最後の「相続放棄など」の場合は、法的なことも考慮した対応が必要になります。

状況に応じて弁護士や司法書士に相談されることをお勧めします。

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