法人相手の賃貸借契約で注意すべきポイント

入居申込の際「法人契約」による入居希望者がいますが法人契約とはなんでしょうか?

賃貸借契約の賃借人が法人の場合は、どのような必要書類があり審査をどのようにおこなうのか、個人契約との違いや注意しなければならないポイントについて解説します。

個人契約と法人契約の違い

賃貸借契約における賃借人は、自然人である個人の場合と法人の場合があります。

一般的に賃貸物件の用途により次のように賃借人が分かれます。

・住居は個人契約が多く借上げ社宅などは法人契約になる
・店舗や事務所は法人が多く個人経営の事業の場合は個人契約になる

個人であっても法人であっても債権債務に変わりはありませんが、契約手続きにおいての添付書類や審査項目に違いがあります。

法人契約の添付書類

入居申込にあたって審査用の添付書類は、一般的に以下のような書類になります。

目的 書類名
本人確認 資格証明書(登記事項証明書)
法人印鑑証明書
代表者本人確認書類
法人概要確認 会社概要書
パンフレット
家賃支払い能力確認 決算報告書
法人納税証明書
入居者確認 運転免許証
健康保険証
従業員証明証(社員証)
源泉徴収票
住民票
連帯保証人確認 住民票
印鑑証明書
収入証明書

法人の種類や規模などにより必要としない書類もありますが、以上の書類にもとづいて賃借人として支障がないかを審査します。

法人契約の審査項目

法人契約の場合は次のようなポイントを審査します。

1. 法人の特定

法人は自然人と異なり外見上確認することができません。

法人が法人であることを証明するのが資格証明です。

一般的には商業登記事項証明書を提出してもらい、存在を確認します。

・商号
・本店所在地
・法人設立年月日
・代表者および役員の氏名と就任年月日

2. 事業内容の確認

会社概要書やパンフレットにもとづき、法人の事業内容や規模などを確認します。

違法な事業や反社会的な存在でないことを確認し、賃貸借契約を締結しようとする目的に合理性があるかを判断します。

3. 家賃支払い能力

家賃は法人の経費として支払われるものです。

売上や収益のなかから事業運営に必要な経費を支払いますが、設立間もない法人など収入面で不安定な場合もあります。

事業運営の実態が把握できない場合は、決算書や納税証明書で実態を確認する必要がでてきます。

4. 入居者の確認

居住用の賃貸借契約では入居者を特定しなければなりません。

実際に法人に勤務しているのかを確認するため、健康保険証や源泉徴収票の提出が望ましいです。

さらに本人確認のため運転免許証や住民票も提出してもらいます。

5. 連帯保証人の確認

連帯保証人については個人契約と同様に、連帯保証の意思確認と収入の確認は欠かせません。

また賃貸借契約書には実印による押印をしますので、印鑑証明書の提出が必要です。

法人契約を希望する法人の類型

法人契約を条件として賃貸物件の申込をするケースにはさまざまな類型があります。

もっともオーソドックスなのは、転勤によって移住する従業員の住宅確保の目的で、借上げ社宅として企業が賃借し従業員に転貸するパターンです。

規模の大きな企業に多く、上場企業やこれに類するような名の知られた企業であり、管理会社やオーナーにとっても安心できるケースになります。

賃貸管理において注意して審査しなければならないのは、上記のようなオーソドックスなケースにあてはまらない場合です。

・実態が把握できない小規模な会社
・実態は個人事業と変わらない法人成りした会社
・複数の会社を経営する者が経営破たんしダミー会社による申込
・入居者本人の申込では審査がとおらないため便宜上おこなう法人契約
・居住用として申込み実際には事務所や店舗利用を予定している
・実際には居住または使用しないにもかかわらず法人登記の都合上賃借する

例をあげるともっといろいろな類型があると思います。

申込みにあたっては法人契約に必要な書類が整っており、なんの問題もないと思われる契約であっても、物件引渡し後は管理会社が使用状況を確認することはむずかしいものです。

場合によっては犯罪に使用されることもあり得ます。

特殊詐欺の実行グループが賃貸住宅を拠点にしていたという事例もあります。

法人契約だからといって安心できない実態を知っておく必要があるでしょう。

審査の過程で慎重な判断を要するケース

前述のオーソドックスではないケースでは、極端な類型をあげましたが、審査の過程では明確に問題があると判断できない場合もあります。

せっかくの申込に対して理由も無く断ることはできません、かといって入居後になにか問題が生じると、家賃が未納になり入居者が夜逃げ同然にいなくなり、肝心の賃借法人とは連絡が取れないなど最悪の結果になることもあります。

管理会社の審査に関わる判断のむずかしさは、法人の方が実はむずかしいものです。

仲介会社経由の案件では「法人契約で」などと、簡単に申込んでくることが多いものですが、個人よりも法人の方が安心だという先入観念は禁物といえるでしょう。

実態のわからない法人相手の場合は、できるだけ実態のわかる客観的な資料を集め、決算報告書と納税証明書の提出を要求し相手方の出方をみるのも方法です。

「審査が厳しい」と相手方が感じた場合、合理性のある入居申込であれば要求に応じてくれるでしょうし、もし合理性がないのであれば申込を撤回することもあります。

大事なことは安易な入居審査をしないことです。

法人契約における連帯保証人の取扱い

法人契約にはさまざまな類型があることは既に述べましたが、オーソドックスなタイプの大きな企業が相手では、借上げ社宅担当の部署や社宅管理代行会社が窓口になることが多いです。

連帯保証の目的は家賃滞納の場合に賃借人に代わって家賃を払ってもらうことと、それ以外の賃借人としての義務の履行を保証することです。

居住用の賃貸借契約では万が一賃借人である法人が倒産したとしても、入居者は住宅が必要であり継続して居住する可能性が高く、法人の倒産後の処理も法的におこなわれるのであまりトラブルになることは少ないといえます。

そのため大企業などが相手の賃貸借契約では、連帯保証人を立てることなく契約することが多いといえます。

事業規模の小さな会社など多少の不安がある場合は、次のような連帯保証人を立てる方法が考えられます。

1. 法人の代表者が個人で連帯保証人になる
2. 入居者が連帯保証人になる
3. 賃貸保証会社の保証つきとする

法人相手の場合、連帯保証人を立てることに難色を示す法人もありますが、管理会社が躊躇してはいけません。

遠慮なく連帯保証を条件として提示することが大切です。

社宅代行を使わない企業は賃貸保証会社を活用する

事業規模の小さな法人の場合には、賃貸保証会社との保証委託契約にもとづく、保証制度を積極的に利用したいものです。

費用はわずかですし経費で落とせる性格の費用です。

賃貸保証契約の社内手続きが面倒といったこともなく、大手企業のように賃貸保証契約締結ができないという理由もありません。

規模の小さな法人ほど、審査のために実効性のあるデータを集めることはむずかしく、安易な判断を下すよりは保証つき契約にする方がリスクは小さいといえるでしょう。

事業規模の小さな会社と安心できる会社をどのように区別するのか、という疑問が浮かびますがひとつの目安として「社宅管理代行サービス」を利用している企業は、信用力が高いといえます。

社宅管理代行サービスを利用していない場合でも、次のようなデータから信用力の高い企業と判断できる場合もあります。

・資本金
・年間売上高
・事業拠点数
・社員数
・事業内容

賃貸保証会社の利用率が高くになっている今日です。

賃貸保証の利用に理解を示す法人も多くなっていると言えるのではないでしょうか。

まとめ

賃貸借契約の法人契約について、注意すべき点などを解説しました。

管理会社の営業エリアによっては、法人契約の案件が少ない場合もあると思います。

「法人契約」となると、なんとなく安心感をもちがちですが、個人契約よりも慎重に判断しなければならないケースもあります。

とくに『法人契約を希望する法人の類型』で述べたような事例は、少なくありません。

法人契約こそ充分な注意をするよう心がけましょう。

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