転貸を承認した賃借人が家賃を滞納、転借人への家賃請求は正当か?

転貸を承認した賃借人が家賃を滞納、転借人への家賃請求は正当か?

賃借人からの申出により承諾した転貸により入居した転借人には、賃借人と同様の賃貸人に対する義務が生じます。

賃借人が家賃を滞納した場合に、転借人が家賃を支払うこともそのひとつです。

また賃貸借契約の終了によって転貸借契約も終了しますが、賃貸借契約の終了原因により転借人の法的な立場が変わります。

ここでは転貸を承諾した場合の契約関係において、管理会社が注意しておきたいポイントについて解説します。

賃貸人と転借人の関係

賃貸人と転借人との関係は、民法613条において『転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う』とされており、賃借人の債務は転借人の債務ともなると定めています。

1. 家賃の支払い
2. 契約終了時の原状回復と物件の返還

上の2つが主要な債務ですが賃貸人と転借人との間には、なんの契約関係もありません、しかし転借人には賃貸人に対する義務が生じることは重要なポイントです。

一方、賃貸人には転借人に対する義務はありません、ここは注意したい部分です。

賃借人が家賃を滞納すると、賃貸人は債務不履行による賃貸借契約の解除が可能になります。

解除されると賃借人と転借人との転貸借契約も終了し、転借人は退去を余儀なくされるわけです。

また賃貸人が転借人に家賃を請求しなければならないといった義務はありませんので、転借人が家賃滞納の事実を知らなかったとしても、契約解除の無効を主張することはできません。

賃借人が債務不履行をすると転借人は非常に弱い立場になってしまいます。

一方、賃貸人は転借人に対し家賃の請求をすることができるため、滞納家賃の支払いを求めることはもちろんですが、転借人が住みつづけることを可能にすることもでき、ここも重要なポイントです。

賃借人との契約解除と転借人との関係

賃貸人は賃借人と締結した賃貸借契約にもとづく債権債務があり、転借人は賃借人との転貸借契約にもとづく債権債務があります。

賃貸人と賃借人との契約が解除あるいは終了した場合、賃借人と転借人との転貸借契約はどのようになるのか、2つのケースについて考えてみましょう。

債務不履行による解除

賃借人の債務不履行により賃貸借契約が解除されるケースで、主な原因となるのは次のことです。

・家賃の滞納
・禁止事項に抵触

賃貸借契約は解除され消滅するので、賃貸借契約を根拠としていた転貸借契約は終了してしまいます。

この場合は前述したように転借人になんら通知することなく、転貸借契約は解除され退去しなければなりません。

また賃貸人は転借人にも家賃の請求が可能なので、転借人からの家賃を受領し新たに賃貸借契約を締結することも選択肢としてあります。

期間満了による契約終了または合意解約

期間が満了し正当な事由により賃貸人が賃貸借契約を終了する場合、あるいは期間途中ですが賃貸人と賃借人との間での合意により、賃貸借契約を解約する場合はすこし状況が変わります。

契約の終了や解約については転借人にも通知しなければなりません。

転借人の知らぬ間に賃貸借契約を終了させることは認められておらず、転借人が転貸借契約の終了に応じない場合も考えられるのです。

賃貸借契約の更新拒絶は賃貸人に厳しい制限があり、正当な事由そのものが認められることはなく、ほとんどは立退料の多寡により判断されるのが実態です。

そのため債務不履行による契約解除以外は、転借人との立退き交渉も必要になってきます。

つまり賃借人との合意解約で必要となる「立退き料」が、転借人との間でも必要になる可能性があるのです。

転借人との交渉手順

賃借人の債務不履行による契約解除や合意解約であっても、ポイントになるのは「転借人」であることがわかりました。

1. 契約解除の場合は家賃を転借人に請求し、居住を希望する場合は新規契約に移行する
2. 契約終了や合意解約の場合は、立退き交渉を賃借人と転借人と同時におこなう必要がある

実務上は転借人との話合いを先行するほうが合理的です。

「1」の場合は、賃借人との間で契約解除が成立するのと同時に、転借人が新たな賃借人として賃貸借契約が成立すると、家賃収入面での損害はなくオーナーにとってはメリットとなるでしょう。

「2」の場合は、先に転借人との退去交渉が成立すると、賃借人が解約に応じないという合理性がなくなります。

そのため賃借人は自身が賃貸物件を使用する予定がない場合は、期間満了による契約終了や途中解約に応じやすくなるのです。

転借人に原因のある債務不履行

賃借人が家賃を滞納する原因が転借人の滞納である場合、転借人への家賃請求は意味のないものとなってしまいます。

なぜなら転借人には家賃の支払い能力がないと考えられるからです。

賃貸人と賃借人との間では賃貸借契約の解除手続きがすすみ、転借人に対しては賃借人が転貸借契約の解除手続きをおこなうことになります。

しかし転借人が素直に退去請求に応じるかは不明なため、将来的に法的解決を必要とする可能性もあります。

そのため、転貸にもとづく家賃請求権を行使し、転借人に対して内容証明郵便による家賃支払い請求をしておかなければなりません。

賃貸人は賃借人と協力し、転借人の退去をトラブルなく実現できるよう努める必要もでてくるでしょう。

管理会社にとっても重要な役割を担わなければならないことになります。

サブリースにおける賃貸借契約の途中解除

サブリースによる賃貸経営も “転貸” の一類型です。

サブリース業者は賃借人かつ転貸人の立場になり、転借人との間で転貸借契約を締結し入居者を確保しています。

賃貸人からの申出あるいはサブリース業者からの申出により、賃貸借契約が途中解約または期間満了による契約終了となる場合があります。

このとき転借人にはサブリース業者から通知するのが当然ですが、賃貸人からも転借人に対して居住の継続を希望するか否かの確認が必要です。

仮に賃貸人からの賃貸借契約の終了または解約であっても、居住中の転借人には引きつづき居住してもらうことが賃貸人にとっては利益であり、退去を要求するケースはあり得ないことといっていいでしょう。

このようなケースに賃貸管理会社が関わる可能性は低くありません。

サブリースではサブリース業者が賃貸管理もおこなっていることがほとんどであり、サブリース契約の解約により管理会社に管理を委託する必要がでてくるからです。

場合によってはサブリース業者との解約手続き中から、転借人に対するフォロー業務を依頼されることも想像できます。

管理会社にはこれまで述べたような「転貸借契約」に関する、法律上の原則をしっかりと認識しておくことが必要でしょう。

まとめ

賃借人が転貸をおこなうには賃貸人の承諾が必要であり、承諾を得た転貸借契約については、居住する転借人への家賃請求権があることを解説しました。

しかし転貸のなかには無断でおこなわれているケースもあります。

その場合は違法行為であり、賃貸借契約の解除が可能です。

無断転貸は転借人に対する家賃請求権はないものの、家賃相当の損害賠償は可能となるので、立退き請求または転借人との新規賃貸借契約を視野に、交渉する必要があることを認識しておきましょう。

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