残置物の処理等に関するモデル契約条項と賃貸管理のポイント

賃貸住宅への入居を断られる経験をした高齢者は「4人に1人」という現実に対し、2021年6月、法務省は「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を公表しました。
目的は高齢者の入居を敬遠する賃貸人や管理会社が、賃借人が死亡した場合の契約解除や残置物問題のリスクを軽減し、入居促進を図ることを可能にするためです。

ここでは「残置物の処理等に関するモデル契約条項」にもとづき、高齢者入居時の契約関係の手続きについて解説します。

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モデル契約条項の目的と構成

残置物の処理等に関するモデル契約条項は、60歳以上の高齢者が賃貸住宅に入居しやすい環境を作るため、賃貸人がリスクと感じている賃借人の死亡による円滑な賃貸借契約の終了と、残置物の処理がトラブルなく行われることを目的とした契約条項です。

モデル契約条項は3つの条項から構成されています。

1. 解除関係事務委任契約に関する条項
2. 残置物関係事務委託契約に関する条項
3. 上記2つの契約条項に関し賃貸借契約に加える条項

賃借人が亡くなった場合に契約解除の事務処理を行う人と、賃借人が交わす委任契約が「解除関係事務委任契約」であり、残置物の処理を代理人としてやってもらう人と賃借人が交わす契約が「残置物関係事務委託契約」です。
解約事務と残置物処理を同じ人に依頼する場合は、1本の契約としてもかまいません。
3番目の契約条項は賃貸人と賃借人との間で交わす賃貸借契約書に付け加えて、賃借人が亡くなった場合の契約解除と残置物処理に関する取決め事項を定めておくものです。

解除関係事務委任契約の解説

解除関係事務委任契約には次の3か条をモデル条項として定めています。

第1条(本賃貸借契約の解除に係る代理権)
委任者は,受任者に対して,委任者を賃借人とする別紙賃貸借契約目録記載の賃貸借契約(以下「本賃貸借契約」という。)が終了するまでに賃借人である委任者が死亡したことを停止条件として,①本賃貸借契約を賃貸人との合意により解除する代理権及び②本賃貸借契約を解除する旨の賃貸人の意思表示を受領する代理権を授与する。

第2条(受任者の義務)
受任者は,本賃貸借契約の終了に関する委任者(委任者の地位を承継したその相続人を含む。以下この条において同じ。)の意向が知れているときはその内容,本賃貸借契約の継続を希望する委任者が目的建物の使用を必要とする事情その他一切の事情を考慮して,委任者の利益のために,本契約に基づく委任事務を処理する義務を負う。

第3条(本契約の終了)
以下の各号に掲げる場合には,本契約は終了する。
① 本賃貸借契約が終了した場合
② 受任者が委任者の死亡を知った時から【〇か月】が経過した場合

引用:国土交通省「残置物の処理等に関するモデル条項」

この条項での「委任者」とは賃借人であり、賃借人が代理人として契約解除に係る事務処理をおこなう人を指定して委任契約を締結します。
賃借権は相続される権利なので代理人として受任する人は、相続人のなかから人選するのが望ましいと言えます。
相続人が不明な場合は、居住支援法人や居住支援を行う社会福祉法人などの第三者を指定することを推奨しています。
相続人以外の人が受任した場合、委任者としての権限は相続人が相続しますので、受任者は相続人との意思疎通を図り解約事務を進める必要があります。

また管理会社が受任する方法については、ケースバイケースであり得ることと考えられますが、あまり望ましいことでないと言えるでしょう。
また賃借権が相続されて相続人が賃貸借契約を継続させることもあり、第2条にはその場合の受任者の義務についても明記しています。
第3条の契約終了時期について、ガイドラインでは『委任者の死亡を知った時から6か月』を推奨しています。

残置物関係事務委託契約の解説

解除関係事務委任契約には次の11か条をモデル条項として定めています。

第1条(定義)
本契約において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。
①「委任者」 【賃借人の氏名・名称】をいう。
②「受任者」 【受任者の氏名・名称】をいう。
③「非指定残置物」 委任者が死亡した時点で後記⑨の本物件内又はその敷地内に存した動産(金銭を除く。)であって,委任者が死亡した時点で所有しており,かつ,後記④の指定残置物に該当しないものをいう。
④「指定残置物」 委任者が死亡した時点で後記⑨の本物件内又はその敷地内に存した動産(金銭を除く。)であって,第4条第1項の規定に従い,委任者が廃棄してはならないものとして指定したものをいう。
⑤「指定残置物リスト」 委任者が廃棄してはならないものとして指定した物及びその取扱方法を記載した,別紙1のリストをいう。
⑥「委任者死亡時通知先」 【通知を希望する者の氏名・名称,住所等の連絡先】をいう。
⑦「本賃貸借契約」 賃貸人及び委任者の間の,別紙2賃貸借契約目録記載の賃貸借契約をいう(更新された場合は更新されたものを含む。)。
⑧「賃貸人」 【賃貸人の氏名・名称】をいう。
⑨「本物件」 本賃貸借契約の目的物である物件をいう。

第2条(残置物処分に係る事務の委託)
委任者は,受任者に対して,本賃貸借契約が終了するまでに委任者が死亡したことを停止条件として,次に掲げる事務を委託する。
① 第6条の規定に従い,非指定残置物を廃棄し,又は換価する事務
② 第7条の規定に従い,指定残置物を指定された送付先に送付し,換価し,又は廃棄する事務
③ 第8条の規定に従い,指定残置物又は非指定残置物の換価によって得た金銭及び本物件内に存した金銭を委任者の相続人に返還する事務

第3条(受任者の義務)
受任者は,残置物の処理に関する委任者(委任者の地位を承継したその相続人を含む。以下この条において同じ。)の意向が知れているときはその内容,指定残置物及び非指定残置物の性質,価値及び保存状況その他一切の事情を考慮して,委任者の利益のために,本契約に基づく委任事務を処理する義務を負う。

第4条(指定残置物の指定)
1 委任者は,次に掲げる方法により,指定残置物を指定するものとする。
① 指定残置物リストに掲載する方法
② 廃棄してはならない物であることを示す指標を貼付するなど,当該動産が指定残置物であることを示す適宜な措置を講ずる方法
2 指定残置物を指定するに当たっては,その物を特定し,かつ,その送付先の氏名又は名称,住所又は所在地を明らかにしなければならない。
3 本物件内に委任者以外の者が所有する物が存するに至ったときは,委任者は,第1項及び第2項の規定に従い,遅滞なく,これを指定残置物として指定しなければならない。
4 委任者が,本物件又はその敷地内に存する動産を遺贈し,特定財産承継遺言をし,又は委任者の死亡によって効力を生ずる贈与をしたときは,委任者は,第1項及び第2項の規定に従い,遅滞なく,その目的である動産を指定残置物として指定しなければならない。この場合において,委任者は,指定残置物の遺贈又は特定財産承継遺言について遺言執行者を指定し,又はその指定を第三者に委託したときは,その遺言執行者又は第三者をその指定残置物の送付先としなければならない。

第5条(委任者死亡時通知先への通知)
1 受任者は,委任者の死亡を知ったときは,直ちに,委任者死亡時通知先に対し,委任者が死亡した旨及び受任者が委任者から第2条各号に掲げる事務を受託している旨を通知しなければならない。
2 受任者は,廃棄(第6条第2項の規定に基づくものを除く。),送付若しくは換価のため又は第9条第3項に基づいて本物件内又はその敷地内の動産を本物件から搬出しようとするときは,2週間前までに,委任者死亡時通知先に対してその旨を通知しなければならない。
3 委任者は,いつでも,受任者に対して書面又は電磁的記録により通知することにより,委任者死亡時通知先を変更することができる。この場合,委任者死亡時通知先の変更の効力は,当該通知が受任者に到達した時に生ずる。

第6条(非指定残置物の取扱い)
1 受任者は,委任者の死亡から【〇か月】が経過し,かつ,本賃貸借契約が終了したときは,非指定残置物(保管に適しないものを除く。)を廃棄するものとする。ただし,受任者は,換価することができる非指定残置物については,できるだけ,換価するように努めるものとする。
2 受任者は,委任者が死亡したときは,非指定残置物(保管に適しないものに限る。)を廃棄するものとする。
3 受任者は,廃棄若しくは換価のため又は第9条第3項に基づき非指定残置物を本物件から搬出する場合は,搬出するに当たって,第三者(賃貸人,本物件に係る管理会社又は本物件に係る仲介業者等を含む。)の立会いの下,非指定残置物の状況を確認・記録しなければならない。

第7条(指定残置物の取扱い)
1 受任者は,本賃貸借契約が終了したときは,指定残置物を,指定された第三者に対して,受任者の選択する方法により,送付するものとする。ただし,指定された第三者の行方不明その他の理由により当該第三者に対して指定残置物を送付することが不可能又は困難である場合には,受任者が選択する者に売却する方法により当該指定残置物を換価することができ,当該指定残置物の性質その他の理由により換価が不可能又は困難である場合には,当該指定残置物を廃棄することができる。
2 第1項ただし書に基づく換価又は廃棄は,委任者の死亡から【〇か月】が経過し,かつ,賃貸借契約が終了した後でなければ,することができない。
3 受任者は,送付,換価若しくは廃棄のため又は第9条第3項に基づき指定残置物を本物件から搬出する場合は,搬出するに当たって,第三者(賃貸人,本物件に係る管理会社又は本物件に係る仲介業者等を含む。)の立会いの下,指定残置物の状況を確認・記録しなければならない。

第8条(金銭の取扱い)
受任者は,第6条第1項ただし書又は第7条第1項ただし書に基づいて指定残置物又は非指定残置物を換価したとき及び本物件内に金銭があったときは,第2条第1号及び第2号に掲げる事務の終了後遅滞なく,換価によって得た金銭及び本物件内にあった金銭を委任者の相続人に返還するものとする。

第9条(受任者の権限)
1 受任者は,委任者の死亡後,第2条各号に掲げる事務を処理するため,本物件内に立ち入ることができる。
2 受任者は,第1項に基づいて本物件内に立ち入るために必要があるときは,賃貸人に協力を求めることができる。
3 受任者は,第2条各号に掲げる事務の処理に当たって,本物件内又はその敷地内の動産を本物件又はその敷地から搬出し,本物件又はその敷地以外の場所に保管することができる。

第10条(委任事務処理費用)
1 受任者は,本契約に基づく委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは,委任者の相続人に対し,その費用及びその支出の日以後における利息の償還を請求することができる。
2 受任者は,指定残置物又は非指定残置物の換価を行った場合及び本物件内に金銭が存した場合にあっては,委任者の相続人に対し,換価によって得た額及び本物件内に存した金銭の合計額を第1項の費用及び利息に充当した上で残額を返還することができるものとする。

第11条(本契約の終了)
以下の各号に掲げる場合には,本契約は終了する。
① 本賃貸借契約が終了した時に委任者が死亡していない場合
② 受任者が委任者の死亡を知った時から【〇か月】が経過するまでに本賃貸借契約が終了しなかった場合

引用:国土交通省「残置物の処理等に関するモデル条項」

賃借人が亡くなった場合の残置物には次の3種類あります。

1. 賃借人の所有物
2. 賃借人以外の人が所有するモノ
3. 金銭類

賃借人以外の人が所有するモノが、室内あるいは敷地内にあることがあります。

・知人から借りていたモノ
・レンタルショップから借りていたモノ

これらは真の所有者に返却する必要があります。残置物処理を依頼された受任者は、所有者の区分けをして、賃借人が所有していたモノについて適切に処理をおこないます。
賃借人が所有していたモノのうち廃棄を希望しないモノを「指定残置物」といいます。指定残置物は賃借人が指定しますが、場合によっては賃借人の相続人が委任者となり指定するケースも考えられます。

また賃借人以外の人が所有するモノについても「指定残置物」となり、廃棄処分できないことは言うまでもありません。
指定の方法には次の2とおりの方法があります。

・リストを作成する
・張り紙などの指標を貼る

指定残置物には送付先の住所や氏名を明記しなければなりません。
金銭類に関しては相続人に返還します。もし相続人が不明な場合には「供託」する必要があります。
「指定残置物」以外のものは廃棄処分または換価処分します。廃棄処分には費用がかかりますが、換価できるものがあれば費用負担の軽減が図れます。条項では換価処分については「努力義務」としています。

また指定残置物のなかにも換価を指定するモノもあるので、注意が必要です。
換価により得た金銭も相続人に返還するのが当然ですが、残置物処理にかかる費用は一旦受任者が負担することになります。

そこで換価して得た金銭から受任者が負担した処理費用と利息相当分を相殺して、残余分を相続人に返還することを規定したのが第10条です。
また換価できない場合や換価した金銭では費用に満たない場合もあり、費用請求を委任者の相続人にできる旨も規定しています。
このほか受任者には次の義務があるので注意が必要です。

1. 受任者は賃借人が亡くなったことを知った場合は、すみやかに指定されている「委任者死亡時通知先」に連絡しなければなりません
2. 残置物の搬出にさいしては第3者の立会いのもと、残置物の状況を記録しなければならない

*第6条と第7条の【〇か月】については3か月を推奨しています。また第11条の【〇か月】についてはか6か月を推奨しています。

賃貸借契約におけるモデル契約条項の扱い方と注意点

賃貸借契約書には次の条項を付け加えます。

第1条(残置物の処理に関する契約が解除された場合の措置)
1 別紙契約目録記載1の委任契約(以下「解除関係事務委任契約」という。)又は別紙契約目録記載2の準委任契約(以下「残置物関係事務委託契約」という。)が本契約の終了までに終了した場合には,賃借人は,速やかに,終了した解除関係事務委任契約又は残置物関係事務委託契約(以下この項において「終了した契約」という。)と同内容の契約を新たに締結するように努めるものとする。
ただし,既に賃借人が終了した契約と同内容の契約を締結しているときは,この限りでない。
2 賃借人は,解除関係事務委任契約又は残置物関係事務委託契約のいずれかが終了した場合及びこれらと同内容の契約を新たに締結したときは,賃貸人に対してその旨を書面又は電磁的記録により通知しなければならない。

第2条(賃借人の死亡等の場合の通知義務)
1 賃貸人は,賃借人が死亡したことを知ったときは,速やかに,解除関係事務委任契約の受任者(これと同内容の契約が後に締結された場合にあっては,当該契約の受任者)に対し,その旨を書面又は電磁的記録により通知しなければならない。
2 賃貸人は,本契約が終了したときは,速やかに,残置物関係事務委託契約の受任者(これと同内容の契約が後に締結された場合にあっては,当該契約の受任者)に対し,その旨を書面又は電磁的記録により通知しなければならない。

引用:国土交通省「残置物の処理等に関するモデル条項」

これらの条項は前述の「解除関係事務委任契約」「残置物関係事務委託契約」が何らかの都合で終了することもあります。
その場合は賃借人が新たに同一内容の契約を締結することを規定しています。
また契約の終了や新たな契約の締結について、賃貸人に通知することを義務づけています。

さらに賃借人が亡くなった場合は「解除関係事務委任契約」「残置物関係事務委託契約」の受任者に対し、賃借人死亡の事実を通知することを賃貸人に対して義務づけています。
賃貸借契約において連帯保証人を設けることが多く、その場合、家族や親族などの身内が保証人になることが一般的です。
連帯保証人は賃貸借契約における賃借人の債務を一切保証する立場にあるので、賃借人が亡くなった場合には、ここで述べた「解除関係事務」や「残置物関係事務」をおこなうことが求められます。
保証人が相続人の一人である場合は、これらの事務処理をおこなうについて拒絶されることは少ないと考えられます。

そのためこのような連帯保証人がいる賃貸借契約においては、別に残置物の処理等に関する契約を締結することは、民法第90条や消費者契約法第10条に違反する可能性もあり考慮する必要があります。
保証会社の保証委託を利用する場合や、連帯保証人がいないまたは親族以外の保証人である場合など、万が一のときに「解除関係事務」や「残置物関係事務」のリスクが懸念されるケースでの活用が考えられます。

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まとめ

高齢者などの住宅確保要配慮者に対する施策は、住宅セーフティネット法にもとづき一定のフォローがされていますが、認知度が少なくセーフティネット住宅として登録される物件はまだまだ少ない現状です。
「残置物の処理等に関するモデル契約条項」についても、実際の賃貸現場で運用しない限り意味のないものになってしまいます。
連帯保証人に代わる「残置物リスク」を担保する代行者選定のしくみ作りは、空室対策としても有効なものになります。
積極的な運用を図っていきたいものです。

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