浄化槽・プロパンガス・井戸のある空き家の物件調査で気をつけること

地方都市では空き家が増加しています。

親が住んでいた実家が空き家になるので管理してほしいといった依頼や売却してほしいという依頼があった場合、頭を悩ませるのが、都市部に存在しない「浄化槽」「プロパンガス」「井戸」の扱いです。

この記事ではこれらの地方都市特有のインフラ設備の取り扱いについて解説をします。

空き家の管理や売却をする際の取り扱い

地方都市の物件は、売却を希望していても、すぐに買主が決まるということはなかなかありません。

多くの場合、長期の空き家状態を覚悟する必要があります。その際に、浄化槽、プロパンガス、井戸取り扱いはどのようにすればいいのかを解説していきましょう。

浄化槽は清掃が基本

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浄化槽は下水が整備されていない地域において、トイレやキッチン等の汚水を浄化して側溝に流す装置です。浄化槽の中に生息しているバクテリアが汚物を分解することで、側溝に流せるレベルまで汚水を浄化しています。

このバクテリアは、ブロアと呼ばれる機械が常時酸素を送り込むことで、生命を維持しています。

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まったくの空き家にして、電気も水道も使わないということであれば、電気で稼働しているブロアは使用できないので、やがてバクテリアは死滅します。この状態で放置していると、強烈な腐敗臭が周囲に漂います。腐敗臭は近所迷惑になるばかりか、購入希望者の購買意欲を削ぐことにもなりかねません。

こんな事態を招かないよう、電気を止める場合には、浄化槽清掃業者に依頼して内容物を全部バキュームカーで引き抜き、槽の洗浄や消毒を行ってもらいます。浄化槽清掃業者が分からない場合は、市町村の浄化槽担当部署で確認できます。

さらに役所への手続も必要です。浄化槽には浄化槽法で定められた法定検査があります。浄化槽の所有者は、県知事指定の検査機関による検査を受けなければならないとされており、毎年1回、保守点検や清掃が定期的に実施されます。浄化槽の機能が正常に維持されている事を検査するもので、これを怠ると罰則が適用されることがあります。

休止した浄化槽は法定点検の義務がないので、指定検査機関へ休止の連絡をしたうえで、市町村に使用休止届を提出して、使用していないことを明らかにしておきます。指定検査機関は都道府県のホームページで確認できます。

ただし、いったん休止した浄化槽は、買主が決まったからといって、すぐに再開できるわけではありません。

まず装置類の作動確認をしたうえで、ブロワを再稼働させます。次に汚水を浄化するための活性汚泥を投入してしばらくなじませ、水処理を行うといった事前準備が必要です。

こうした作業をしてもらうために、買主は早急に浄化槽保守点検業者及や清掃業者へ連絡する必要があります。合わせて市町村へ使用再開届出書を提出します。

井戸はいったん封鎖

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手押しポンプ式の井戸はそのままでも問題はありませんが、釣瓶で汲み取るタイプの井戸は、そのまま放置をして空き家にしておくと、生物や異物が落下したり、心無い人に不法投棄をされたりする可能性があるので、管理上の観点から蓋をした方が望ましいでしょう。

ただし井戸に蓋をすると、お祓いが必要だと主張する人もいます。科学的根拠はまったくありませんが、気持ちの問題ですから、家族や関係者が納得する方法を選択しましょう。

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なお井戸自体は、震災時の飲料水として有効に活用できるとして、その機能が見直される傾向がありますから、買主がいつでも使えるような状態で保存しておく方がいいでしょう。

買主が井戸を使用する場合、飲料水としても使用したいのであれば、井戸水をペットボトルに詰めて、保健所で水質検査をしてもらいます。飲料水に適していない水質であっても植物の水やりとして使用できます。

プロパンガスは回収してもらう

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空き家にプロパンガスボンベを放置しておくのは大変危険です。必ずガス会社に連絡をして引き取ってもらいましょう。

しばらく使用しない場合であっても、メーターは残したままになります。ここにガス会社の連絡先が記入されていますから、買主が入居した際にも容易に連絡先が分かります。

なお、プロパンガスは、一般的に新規加入時にガス機器までの配管をガス会社が施工しています。このときの費用は、ガス料金に上乗せされて支払う仕組みになっており、10年から15年で回収できることになっています。このため「最低契約期間」を設けており、この期間内に解約をすると、追加料金を請求されることがあります。

更地にする場合の取り扱い

空き家を売却する際に、老朽化が著しいと、更地にして売り出しを希望する売主もいます。更地にする場合、浄化槽、井戸、プロパンガスはどのように扱えばいいのかみていきましょう。

更地にするなら浄化槽は撤去

更地にする場合は、地中埋設物はすべて撤去されるのが原則です。このため、浄化槽も撤去する必要があります。撤去に際しては、浄化槽清掃業者に依頼して内容物を全部バキュームカーで引き抜いてもらった後に、浄化槽を撤去します。

浄化槽を撤去した際は、30日以内に浄化槽管理者である売主が市町村の浄化槽担当部署に「浄化槽使用廃止届出書」を提出します。

浄化槽の撤去費用は、一般的な家庭用の5~7人槽で5~7万円で、売主が負担します。また撤去前に行う清掃費用は約3万円です。

浄化槽の撤去に関して、業者が上部のみを撤去して埋め戻しをすれば費用が安くなると提案してくることがあります。しかし一部でも地中に残しておくと、地中埋設物として買主から瑕疵担保責任を問われることがありますので、浄化槽は必ず全部撤去しましょう。

更地にするなら井戸は埋め戻し

井戸は、購入者層の傾向から残すか埋めるかの判断をします。埋める場合は、下流の水質に影響がないよう。ボックスカルバートと呼ばれるコンクリート製箱形管を井戸底に設置して、その上に埋め戻しをします。

井戸の埋め戻し費用は6~8万円です。売主が埋め戻しで売却を希望した場合は、費用は売主の負担になります。

更地にするならプロパンガスはメーターごと回収

プロパンガスはガス会社に回収してもらいます。建物を解体する旨を伝えて、メーターも回収してもらいます。

プロパンガスボンベ及びメーターはガス会社の所有物です。一般的に回収費用は発生しませんが、撤去までのガス使用量に応じたガス料金を請求されます。また「最低契約期間」内の解約になれば、解約料が請求されます。

まとめ

下水道や都市ガスが整備されていない地方都市では、浄化槽やプロパンガスは生活になくてはならない必需品です。また井戸も水道よりも快適に使用できるという人が大勢います。

しかし空き家になった場合に、おざなりな管理をしていると、これらのインフラ設備が周囲の迷惑設備と化してしまいかねません。空家状態の間は適切な管理方法で機能を維持して、買主に気持ち良く引渡しましょう。

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