4月になると住宅業界にも新入社員が入社してきます。
30人40人と大勢の入社を控える大規模な会社もあれば1人だけ採用する、もしくは4月とは限りませんが中途の社員を1人だけ採用するという会社もあるでしょう。
今回のコラムは、中途ではなく純粋な新卒社員をどのように育てれば良いのか?に的を絞って書いていきます。
私は23年間に渡って毎年必ずどこかの会社の新卒社員の研修を請け負ってきました。
2021年度は全部で4社に関わり、最も小規模な会社では2名の新卒者、最大の会社は40名の新卒者がいました。
2022年度も4月から早速新卒者の育成指導のプログラムが始まるのですが、規模の大小にかかわらず新卒者に対する教育は絶対に不可欠です。
注意すべきポイントは極めて多くありますが、今回は第1回目ということで基本的な知識の不足についての話をしていきましょう。
1年経っても基本的なことが想像以上に頭に入っていない
皆さんはこれに答えられるでしょうか。
色々な切り口はありますが、ものすごく簡単に説明すると次のようになります。
この他にも消防署や警察署が基本的にこの構造になっています、などといった説明ももちろん正解になります。
今年度の研修の事例でお話をしたいのですが、昨年の4月の段階で私は新卒社員に対して 【阪神淡路大震災の1.5倍の地震に耐えられる】のが耐震等級3と何度も教えました。
ところが2週間前におこなった研修でこれを新卒者に尋ねたところ40人の中で20人以上が答えられなかったのです。
こちらが期待したほど覚えていない
耐震等級の例を出しましたがこれは他のことでも同じです。
別の話をしましょう。
規模の大きな会社になると会社の説明や工法などを書いた綺麗なカタログが存在します。
中にはこのような経費がかかるものは極力削減し、全てをホームページに集約しているような会社もあるでしょう。
どちらでも構わないのですが、カタログやホームページに書いてある数字や仕様や細かな情報を新卒社員に聞いてみると、これまた驚くほどに正答率が低いのです。
経営者の方に言いたいのですが、何回教えても基本的なことが頭に入ってない可能性が高いとひとまずは考えた方が無難です。
新卒者が複数いればもちろん個人の能力の差や意欲の違いがありますので相当な差はあります。
しかしそのようなケースであっても、とりあえずは全員が覚えていないという仮定のもとに、何回も何回も同じことを繰り返し教え込んでください。
自社のホームページを見ていない
「関連会社の〇〇って何やってるの?」
「全国に展示場っていくつあるか知ってる?」
このような質問を新卒社員に投げかけてみてください。
入社仕立てではわかるわけありませんが、必ず目を通して覚えておくように、としっかり指示を出してしばらくした後に聞いてみるのです。
ところが、驚くほどに答えられないのが現実だと思ってください。
私は常々話すのですが、お客さんは具体的な検討に入れば会社のホームページをじっくり読み込んできます。
仮にお客さんが証券会社勤務だったとしましょうか。
そうすれば、あなたの会社の資本金や関連会社や株主構成なども含めた情報には、条件反射的に目を通してくるでしょう。
実際にあった話をします。
銀行勤務の方が展示場に足を運んだ際、新卒の女性営業が応対に出ました。
こちらの住宅会社は自己資本比率が極めて高いのですが、銀行員のお客さんはその情報を知った上で来場したのです。
展示場を見学して着座したのですが、その席でこんな会話がありました。
営 業「えーっと・・・自己・・・資本・・・?」
少し気の毒な話ではあります。
私も今だから偉そうに話をしていますが、積水ハウス入社時には会社の自己資本比率なんてことは全く知りませんでしたし、そもそも自己資本比率という言葉も知らなければ意味も全く知りませんでした。
しかし、私の時代と違って今はホームページが存在します。
会社概要をみれば 会社の財務状況や様々な資料が掲載されています。
この住宅会社は自己資本比率もホームページに掲載しているのですが、銀行勤務の方であれば真っ先にここに目が行くはずです。
自己資本比率は財務状況の目安の一つとなりますので、これが高ければ「この会社は良い経営をしているのだな」と判断するわけです。
この時はお客さんが女性営業の事を、新卒社員と認識していたので「新入社員だとそこまではわからないよね(笑)」で話は済みました。
このことで会社にダメだという烙印を押すと私も思いませんが、逆に言えば新卒社員が自社の自己資本比率を認識していて「弊社の財務状況は他社さんと比べて非常に堅牢なものです」と答えれば、お客さんの印象は随分と良くなるでしょう。
私はこうして訓練をします
会社にあるカタログと会社のホームページについて全部覚えなさい、と私は新卒社員に指示を出します。
その上で1ヶ月後にテストを行うので正答率100%を目指して勉強するように、とも伝えます。
これを1年間執拗に繰り返します。
これを最低限実行するとかなりの部分は頭に叩き込まれるからにほかなりません。
肝心なのはしつこく1年間やり続けることです。
前述した耐震等級3の件ですが、 この会社の研修は今年度に限っては全てズーム研修で行いました。
4月から開始したのですが5月に1度だけ「ホームページとカタログを徹底的に覚えるように」との指示を出し、その後はズーム研修の途中でちょくちょくと私が名指しをして「床材の使用は何種類あるの」「アフターメンテナンスのチェックの頻度は」「会社の資本金は」「会社の設立は何年」などとランダムな感じで聞きました。
リアル研修であれば毎月のように研修の開始に先立って問題用紙を配って確認できるのですが、ズーム研修だとなかなかこの方式が成り立ちません。
その結果がこれです。
やはり繰り返し同じ事を徹底的に確認する作業をすべきだと感じた1年でした。
当たり前で基本的なことを実際に喋らせるロープレの実施
営業「弊社はお引渡し後まず3ヶ月の点検を行います。そしてその次は6ヶ月になりまして・・・」
これはロールプレイング。
会社のアフターサービスについては基本中の基本となりますので、 新入社員はいの一番に覚えなくてはいけない項目の一つとなります。
こう指示を出して終わりとなるケースが圧倒的に多いのですが、これではなかなか彼らは覚えてくれません。
ロールプレイング形式にして実際の場面を再現する事が大事なのです。
目で見て覚えただけのことと、実際の場面を想定して口に出して説明するのでは雲泥の差があります。
どんな簡単な内容であっても、実際の場面を想定したロールプレイング形式でその内容を喋らせる場を作って下さい。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。