新卒住宅営業社員に対する教育方法シリーズ第3弾です。
今回は住宅展示場もしくは現場見学会などの接客能力を上げるための基本的な指導内容を話します。
宅展示場を訓練の場とするのが最も良いのですが、展示場を所有していない会社の場合は、新築現場見学会の会場や建売現場でも構いません。
さらには工事中の物件でお引渡し間近のものがあればそこを使っても問題ありません。
ロールプレイングの一種だと考えて欲しいのですが、お客さん目線に立って見学をさせる訓練をして頂きたいのです。
住宅購入は22歳23歳ではなかなか現実味のない話となりますので、30代で結婚していてお子さんが一人いるような当事者の気持ちになりきって展示場を見させるのです。
私はコンサル先で〇〇をさせます
展示場を客目線で見学させる
まずはじめに指導して欲しいのは展示場の見学です。
当たり前の話ですが、自社の展示場で接客するわけですから、お客さんの目から展示場はどう映るのだろうと考えることはとても大切なのです。
例えば玄関ホール。
自分が家を買おうと考えて来場したのであれば、どんな部分に目がいくのだろうか?どんな質問をするだろうか?またどんな部分に疑問を持つのだろうか?このようなことを考えながら見させて欲しいのです。
なんといっても自身が22歳23歳の独身であるわけですから、家族感などというものはほとんどありませんし、ましてや家を買おうなどと思ったことはないでしょう。
このような人間がマイホームを夢見てやってくるお客さんに対応するわけですから、おびただしいギャップが出るのが当然なのです。
「自分だったらどんな質問するかを考えてみなさい」
私でやればこう指示を出しますね。
展示場の玄関を開けて入ってくるところからスタートさせ、建物をお客さんの感覚で見学させます。
お客さんの目線で考えればこのような質問が湧いてくるはずです。
〇こんなに大きな家はいらない
〇コンセントをたくさんついているのか
〇何ヶ月くらいで建つのだろう
〇何台のエアコンがついているのだろうか
このような素朴な疑問です。
これを徹底的に考えさせるのです。
「主寝室では15点の質問を考えなさい」
こういった形で各部屋ごとにお客さんが質問するかもしれないという項目をあげさせます。
おそらくは相当苦戦するでしょう。
玄関ホールで10点の質問を考えろと言われても、そう簡単には頭に浮かばないと思います。
回答を自分で考えさせる
次はこれです。
展示場全体で100個の質問を考えたとしましょうか。
質問を出させたら、今度はそれに対する答えを100個考えさせるのです。
このように答えが簡単に出る質問もたくさんあると思います。
TOTO、サンウェーブ、LIXILなどと調べればすぐに分かるでしょう。
しかし、こんな初歩的なことであっても、このような手順を踏むと頭にしっかり叩き込まれるのです。
ただ難問も沢山出てくるでしょう。
こうした質問も十分に想定されますが、新入社員にとってはこの答えを出すのは容易ではありません。
でも、彼らに考えさせるのです。
実際の現場では、この種の質問は結構ポピュラーだと思います。
ですから、このような質問に対しても、当意即妙な返答ができるように訓練する必要があります。
宿泊体験展示場を持っているならば迷わず宿泊させる
これは実行すべきです。
宿泊体験棟を所有する住宅会社がたまにありますが、これこそ社員教育に使うべき最高の営業ツールです。
私の時代であれば定休日を使って宿泊させたと思いますが、今はそういう時代ではないので営業日を使って宿泊体験させましょう。
冒頭にも書きましたが、新卒はそんなにやることがないのです。
そうであれば、わざわざ事務所に張り付かせなくても二日間ぐらいは全く放置して「展示場に住んでみろ」で良いと思います。
ただし条件がひとつ。
基本的には家の中に入って必要以外で外に出るのは禁止。
これだけ守らせればOK。
食事も自炊です。
彼女、彼氏がいるのであれば、同伴させましょう。
私が社長であれば、この恋人に対して1万円のアルバイト代を払います。
その代わり1日住んでみて気がついたことを終了後にヒヤリングさせてもらうのです。
新卒だからこそのフレッシュな感性を参考にする
恋人の話をしましたが、肝心要のポイントは新卒者です。
男性であれ女性であれ、住宅営業の経験はおろか社会人としての経験もないわけですから、一軒家に一泊宿泊することによってえられた感想や疑問点は、3年4年と営業経験した人間とは全く違うものが出てくる可能性があります。
少しでもこの世界を経験した人間が見る展示場と、全くのお客さん状態の新人が見る展示場とでは見え方が大きく違うでしょう。
何の先入観もない状態の新入社員の意見は、ある意味貴重だと言えます。
そんな彼らもすぐに仕事に慣れてしまうわけですから、入社後すぐにこんな体験をさせて欲しいのです。
展示場のダメだしを徹底的にさせる
これは私が新卒の時に店長から指示されたことです。
今思い返してもこの指摘は実に正しく的を射ていたものだと確信しています。
その当時の私の答え
30年前の話ですがこの質問に対して私がどんな報告をしたか一部ご紹介しましょう。
玄関ホールのタイルが便所みたいに感じた
その当時の展示場は10 cm 角のタイルを使っていました。
何の予備知識もない私は、そのタイルをじっと見ていてトイレを思い出したのです。
感じたままに報告をしたのですが店長からは「お前がそう思ったということは、同じように感じるお客さんがいる可能性はあるわけだな。この場合お前だったらどう答える?」と質問。
その時どう答えたかは全く覚えていないのですが、少なくとも店長から言われた内容だけははっきり覚えています。
身長が140CM、150CMという小柄なおばあちゃんであれば上がり框の高さが合わないかもしれない
私は身長172CMです。
その私が、上がり框に座って靴を履いてみました。
私にとっては丁度良い高さだったのですが「ものすごく小柄なおばあちゃんが同じ態勢をとったら、この高さは合わないのではないか?」このようにふと思ったのです。
2階トイレ内のクロスが派手すぎる
私はこう感じたのです。
同じ展示場内のアシスタント女性に話をしたら「なんで?あれ可愛いじゃない」と突っ込まれたのですが、私は派手だと感じたのです。
これは男女の違いの可能性が十分に考えられるでしょう。
つまり、同じものを見てもご主人と奥さんでは見え方が異なる可能性があるということです。
接客している途中でご主人と奥さんの意見が割れるようなシーンというのは散見されるところでしょう。
そのような時に行司役の営業はどのような取り出し方をすれば良いのかを考えさせるのです。
質問を自分で考えさせその答えを自分に出させる
積水ハウスに入社直後の私は、このようにして100近い質問や疑問を書き出しました。
それを店長に報告したところ「同じような質問をお客さんからされたらどう答えたらいいのか、それを今のお前の意見で構わないから全部書き出せ」との指示。
今考えてもなるほどという指導だったのですが、この訓練は実際の接客で大いに役立ちましたし、それ以後私の営業力の助けになったと考えています。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。