新卒の住宅営業マン教育シリーズの第5弾ですが、ひとまず今回でこのシリーズを終了させたいと思います。
前回の第4弾(https://f-mikata.jp/mori-104/)では、新入社員に自主性を持たせて、様々な企画を任せてみようとの趣旨で書き進めました。
最終回は、新入社員がどんなことで悩んでいるかということを、私がコンサル現場で実際に見聞きしたことを中心に話していきます。
上の立場の人間は気楽にこのような指示を出しますが、これで報告が上がってくるとは思わないでください。
例えば、あなたが50歳の工務店経営者だとしましょう。
性格は明るく、しかも自ら起業したのでガッツもあり行動力もあります。
人間は誰しも同じなのですが、自分が平気なことに対しては「このぐらい誰だってできるだろう」と考えてしまうのです。
ですから「何かあったらすぐに言えよ」と指示を出されても、新入社員の性格にもよりますし、そもそもあなたと年齢がまったく違います。
22歳の若者から50歳の社長に対して思ったことを話すのは想像以上に難しいのです。
新入社員との個人面談で最もよく出てくる話
「所長が忙しそうにしているので聞きづらいです」
この2つは住宅会社の新卒や若手の営業マンと話しているとよく出てくる代表格の話です。
比較的小規模な会社であれば社長ということになりますし、規模が大きく住宅展示場を何店舗も構えてるような会社であれば、直属の上司は店長や所長ということになります。
2年前に新卒研修を行った大きな住宅会社であるT工務店の話をしましょう。
この会社では、4月に入社した新卒社員を1年間教育指導したのですが、梅雨に入った直後の6月に営業社員全員とZoomによる面談を行いました。
そこでのある会話を再現してみましょう。
新卒君「 そうですね・・・勉強はしていますけども実際に展示場で接客するとお客さんの質問に対して答えられなくて慌てることが多いです」
森 「わからなかったことをすぐ店長に聞いているよね?」
新卒君「 聞きたいのですが店長も忙しくてお店にいませんしたまに帰ってきても忙しそうにしているのでなんとな く聞きづらいんですよね」
これが実態です。
彼だけではありませんでした。
他の営業マンからも似たような声が複数上がってきたのです。
しばらくしてからこのことを営業本部長に報告しましたが、非常に驚いた様子だったのが印象的でした。
営業本部長としては新入社員が分からないことがあればすぐに店長に質問してその場で解決しているだろう、と当然のように考えていました。
しかし実態はまったく違ったのです。
経営者や幹部社員はこのことを肝に銘じよう
私から皆さんに伝えたいのは「実態はこうなので肝に銘じて細かく見てあげてください」ということ。
私が工務店の経営者だったとしましょう。
その立場でこの話を聞いたら愕然としますね。
先輩に質問をしろと指示しているのに、新卒くんが質問することをサボっているケースは一般的に考えられるでしょう。
ところが、先輩に聞きづらいという問題点が現場では頻発しているのです。
特に注意してほしいのは、忙しい会社や受注が絶好調で猫の手も借りたいぐらいに営業マンが走り回っている企業です。
同行依頼もとてもじゃないが頼めない
次の問題は同行依頼です。
新入社員は経験も知識も乏しいので、展示場接客なのでアポイントを取るところまではできても、次回の折衝は先輩社員に立ち会ってもらわないと話になりません。
私が新卒だったとしましょう。
そして、なんとか展示場接客をしてアポイントを取ったと仮定します。
アポイントを取ったものの、自分には知識がありませんので次回の折衝は一人ではこなせません。
もちろん先輩に同行依頼をして一緒に行ってもらう他ないのです。
これが入社間もない時期であれば、お客さんと具体的に商談をすることなどは不可能ですから、先輩がどんなに忙しくしていても声をかけてお願いします。
ところが、入社して半年も経った10月11月ぐらいになれば、それなりに折衝経験も積んでいますし、一通りの事はお客さんの前で話すこともできます。
こうなると、本来ならば先輩に同行を依頼すべき案件であっても
こういう判断をしてしまうわけです。
私もこういう行動をよくとりました。
上司からは「必ず同行依頼を俺にしろよ」 と言われてはいたのですが、頼みづらさに加えて「自分一人で行ってみたいな」 という欲も出てくるのです。
先輩がつかずに自分一人でやらせるという方針を取っている会社であればそれはそれでいいと思います。
ただ、私がここで指摘しているのは、失注しないためにも力のある先輩の同行を会社は指示しているのに、新卒くんがそれをないがしろにするケースなのです。
上司に対する教育は絶対にしてください
いわゆる管理職研修ということになるでしょうか。
外部の研修会社を使っても良いですし、社長が陣頭指揮をとって社内研修という形でももちろんかまいません。
ただ、新卒が入社する前に、この辺りの体制をしっかりと整えて準備することをお勧めします。
「先輩のやっていることを盗んで覚えろ」は通用しない
50歳以上の方であれば記憶にあると思いますが、昭和から平成に変わる頃に「24時間戦えますか?」の名キャッチコピーで一世を風靡した栄養ドリンクのコマーシャルがありました。
働き方改革が叫ばれる時代にこんなコマーシャルを流すのは不可能でしょう(笑)
しかし、私はまさにこのような時代に営業していました。
時代が違うのでどうしようもならないのですが、基本的には盗んで覚えるというのが指導方針でした。
入社して1ヶ月は缶詰研修が曲がりなりにもあったのですが、その当時の研修内容というのはかなりずさんであった記憶しかありません。
1か月の缶詰研修で「これは結構良かったな」コマは次の2つだけ。
②家相の基本
講師役として各地の営業課長レベルの社員がやってきたのですが、鞄の中に何を入れるかという研修は非常に面白かったですね。
ただ単純に何を入れるのかという説明だけではなく、それがどうして必要なのかということをしっかりと説明してくれました。
まだ営業フィールドに出ていないわけですから、三角スケールと言われてもそれがなんだかよくわからないのです。
でも、その使い方や使うシーンなどの説明がものすごく面白かったのです。
家相や風水に関する話も時間を忘れるぐらい集中して聴いていました。
全てが初めて聞く話ですし、裏鬼門表鬼門と言った言葉に加えてその歴史的な由来はもちろんのこと「自分が担当したお客さんで家相や風水に凝りまくった人がいてな」と実体験を面白おかしく話してくれたことも私の心を掴んだのでしょう。
話が少しそれましたが、新卒社員を迎えるにあたって必ずやってほしいポイントが以下になります。
②新入社員が気楽に上司に質問をできるように上司教育をする
少し前にホリエモンが Twitterで呟いたことが炎上したのを覚えているでしょうか?
これに対しては「職人をなめるな」「何にも知らないくせに」「なんて失礼な男だ」「偉そうに言うんだったらお前がやってみろ」などと大炎上しましたね。
しかし、私は彼に対して9割賛同します。
寿司屋とは限らないのですが、どう考えても教えることはしっかりと体系的に教えた方が、習得するスピードは圧倒的に早いですし、本人も嫌気がささないはずです。
そして何よりも重要なのは、お客さんに迷惑をかけないことでしょう。
住宅営業に関して「習うより慣れろ」方式でやったとすると、勘のいい人間はどんどん伸びますが、鈍い人間は取り残されます。
こういう声が聞こえてきそうですが、お客さんは営業を選べないのです。
たまたま接客に出た営業が担当者になるわけですから、お客さんから見れば、しっかりと教育をしてもらいどの営業マンに当たっても過不足ない体制にしてほしいと考えるのが普通ではないでしょうか。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。