住宅業界にも4月1日をもって新入社員が大勢入ってきました。
ある住宅会社は新卒社員を15名採用、そのうち6名が住宅営業として配属されました。
6名のうち3人が女性営業。
その中の一人であるU子さんとは今後1年間にわたって関わるのですが、4月1日の入社式が終わった後に直接顔を合わせて話をすることに。
ロングの髪を後ろに束ねた小柄な女性で、しっかりと前を見据え、物怖じをしない性格が眼光からにじみ出るような雰囲気が印象的でした。
住宅営業の現場実態を就活で十二分に知ったうえでの入社だったようで「退社時間が遅くなるのは仕方がない仕事ですよね(笑)」と一笑に付したのが印象的でした。
「入社選抜試験をすると女性の方が優秀なんだよね」
事前に社長と打合せをしたのですが、ここ最近の採用に関して興味深いこんなことを話してくれました。
実際にもこの会社は女性営業が目立ちます。
社長も話していたのですが、女性の比率を上げていることは、巷で色々言われているジェンダーがどうのこうのということは一切関係ありません。
世の中の動きを見てということではなく、本当に公平な選抜の結果がこうなるわけです。
様々な工務店などに顔を出す私ですが、採用の時期になると、新卒採用、中途採用を問わず社長や採用担当者とは「今年の新卒は・・・」「中途で営業を採用したんだけど・・・」という話になります。
ある大きな会社の話を少しだけしましょう。
社名は伏せますが、住宅業界の方であれば誰もが知っている有名企業です。
この会社の役員氏と年に何回もお会いする機会があるのですが、やはり全く同じことをおっしゃいます。
大きな会社ですので新卒だけでも相当な人数に上ります。
私はこの会社の新卒研修も依頼されているのですが、研修当日に会場に行くと見事なまでに半分が女性です。
役員氏にお伺いすると「平等に採用するとこうなる」ときっぱり。
他の会社でも同じような話を耳にするので、採用段階では女性の方が優秀だということで間違いないと私も思います。
もちろん、その後の離職問題や営業として優秀かどうかは別の話ですが。
U子さんは建築学科出身
まず初めに驚いたのがこの事実。
女性が住宅営業を目指すこと自体は珍しくありませんが、建築家出身で営業を目指すというのはあまり聞かない話です。
森 「〇〇大学の建築学科でしょ?とりあえず住宅営業経験してから設計に行きたいわけ?」U子さん「違います。私は住宅営業がやりたいんです」
森 「なかなか珍しいよね」
U子さん「親からは反対されました(笑)でも建築学科出身ですから知識は当然あるので、その上で住宅営業をやったら良い成績が取れるような気がしたからです」
なるほどと思いませんか。
私が在籍した積水ハウスもそうでしたが、確かに一級建築士の免許を持った営業マンは少なからずいました。
これは他メーカーでもそうですが、建築士の免許を持った営業マンはお客さんからの信頼が厚いのは言うまでもありませんし、実際腕利きの営業マンが多いのも事実です。
住友林業の営業兼一級建築士の方を知っていますが、彼の接客は見事。
文章では説明しようがないのですが、一般の営業マンが建物や仕様の説明をするのに対し、彼は全く違った視点で説明をするのです。
今回のコラムは趣旨が違うのでこれでやめておきますが、とにかく設計士が接客をすると純粋な営業マンとは明らかに違う何かがあります。
兄が大手メーカーの元設計士
兄が凄くつまらなそうに仕事をしていた
U子さんのお兄さんはある大手ハウスメーカーに設計士として勤務していました。
6、7年前に退社して今は小さな会社で設計士として働いているらしいのですが、そのお兄さんが話すには大手メーカーの設計士というのはものすごくつまらなかったらしいのです。
素人(営業)の営業が書いた図面を俺が清書している
この意味が分かりますか。
お兄さんは当時の仕事に大きな不満を持っていたらしいのですが、その理由がこれだったのです。
私は話を聞いた時に現役時代を思い出しました。
同期の設計士が全く同じことを話していたのです。
会社によってシステムは若干違いますが、当時の積水ハウスでは設計の知識などほとんどない営業マンである私が、お客さんの要望を聞いた上で手書きのラフプランを書きます。
それをお客様に提示して打ち合わせを軽くした後に、修正を加えて設計に提出すると、次回は設計が綺麗に書いた図面が出来上がるのです。
営業は気楽なものですから、お客さんから軽微な変更があるたびに「ここ少し直しておいて」などと修正依頼をかけていました。
同期の設計であったN君が「俺たちは朝から晩までお前みたいな設計のこと知らない人間が書いた図面の清書をやらされてるんだよな~(笑)」
半分冗談まじりではありますが、こう言われた時には「確かにおっしゃる通りです」と思いましたね。
営業の方が面白そう
これが住宅営業を目指したU子さんの動機。
ただ、話を少ししてみてわかったのですが、ものすごく前向きなことに加え、住宅営業の大変さや実態を十二分に知った上で入社したようです。
設計職に対する不満は多分にお兄さんの影響があるような気もしましたが、営業職については仕事の都合で午前様になることも厭わないと言っていましたし、お客さんからのクレームの実態も嫌というほどおにいさんから聞いていて納得しているとのこと。
また何と言っても営業職の方がお客さんとのやり取りができるし、契約を目標としたスリルのあるゲームだと、U子さんはとらえているのです。
結論としてはこうなるのですが、住宅営業のことを熟知しているのに加えて建築の知識もしっかりU子さんにはあります。
そんな彼女を最終面接した社長は、5分ほど話したところで採ることを決めたそうです。
入社式の直後にあっているので、実務は全くやっていない状態です。
もちろん今後どうなるか分かりません。
数ヶ月後には嫌気がさして退社するかもしれませんし、その頃には初契約を上げて意気揚々としてるかもしれません。
23年度の新卒採用予定企業の方へ
少し先の話になりますが、23年度の新卒を採用する予定のある住宅会社さんは、男女を意識せずに平等な採用を心がけてみてください。
また最終面接ではなく初期段階の会社説明などの機会があった時には、住宅営業の厳しさはもちろんですが、ワクワクするシーンが多く、独創性を求められ、しっかり勉強をしなくてはいけないということも伝えてください。
つまり、根性やガッツだけではやっていけない仕事ということです。
大学の4年間は陸上部で毎日走り込んでいたU子さん
そんな彼女はなんと陸上部で4年間毎日のように徹底的に走り込みをしていたそうです。
専門は400Mとのことでしたが、とにかく負けることが大嫌いで、県内では3位に入ったこともある脚力の持ち主でもあります。
建築家出身でありながらバリバリの体育会系。
そうした背景が住宅営業になることを後押ししたかもしれません。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
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