最近の仕事の比重はすっかりズームに移動してしまったのですが、リアルの仕事も徐々に回復してきました。
工務店の営業マンと直接やり取りすることが多いのですが、工務店をお客さんとする業界の営業マンとのZoomによるやり取りも、私は積極的に行なっています。
建材、電力、水回り、照明、銀行といった業種の営業マンになるのですが、これらの業種は工務店を大事なお客さんとして日々の活動をしています。
こうした営業マンは、日々工務店などに顔を出しては営業活動に勤しんでいます。
もちろん自社が扱う商品を少しでも売ろうと必死に営業しているわけですが、そんな彼らの力を引き上げるお手伝いも、私の業務の一環なのです。
ある建材会社の営業マンが日報をグループLINEに上げ、私はそれを見ているのですが、彼らの先にいる工務店の社長が持っている現状認識に最近驚くことがあります。
もはや常識である新築着工数の激減予想
私がここで話すまでもありませんが、今後の新築着工予想は、じりじりと下がり続け2040年には50万戸を割り込むと想定されています。
この事実はどんな小規模工務店であっても耳にしたことがあるはずですし、逆に言うとそのような小さな工務店の方が切実な問題とも言えるのです。
野村総合研究所が発表しているデータを見てみましょう。
もはやお馴染みのデータですが、私が工務店経営者であれば、背筋が凍るような恐ろしい右肩下がりのグラフです。
振れ幅はあるものの、2030年には63万戸から68万戸の間に落ち着くと野村総合研究所は見ています。
私は国交省認定のリフォームの団体にも関わっていますが、新築着工数の激減を見据え、新築専門でやっている工務店の皆さんに対して、余力があるうちにリフォームの仕事も積極的にこなして定着させるよう啓蒙しています。
工務店社長から漏れ伝わる信じられない言葉
冒頭に書いたある建材会社の営業があげた日報に次のような内容が書かれていました。
要約すると、このような報告内容でした。
これが、極まれな報告なら問題ないのですが、一定数の小規模工務店の社長がこのような認識を持ってるような気がしてならないのです。
これは私が推測で話しているのではなく、このような形で報告が上がってくるものに加え、直接、間接に同じような内容をあちこちから耳にするからです。
動きの遅い工務店に私からあえて言わせていただきます
頭ではわかっていてもなかなか舵を切れない工務店社長が多いと思いますが、このコラムを読んだからには、是非ともその考え方をすぐに切り替えてほしいと私は強くアドバイスをします。
当面の受注は見えてるから安心しているかもしれませんが、新築激減がこれだけ明確に予測されているのですから、体力のあるうちに方向性をしっかり決める必要があるのではないでしょうか。
現在の住宅業界は、全国区の大手ハウスメーカーから一人親方まで無数の住宅会社が存在しています。
国交省はこれら全てを管理する立場にあるわけですが、これだけの膨大な数を、全て内容まで把握するなどということは到底できません。
そうなると、小さな規模の住宅会社はある程度整理された方が、把握する立場からすると楽だとも言えます。
あちらこちらからの情報を集約すると、新築着工数の激減に合わせるように住宅会社が淘汰されるのは既定路線です。
今の社長の代で工務店を終わらせるつもりならば問題ありませんが、今後30年40年と会社を存在させ発展させるのであれば、はやく目を覚まして動かなくては手遅れになります。
「今のところ集客には困ってないから」
中規模以上の住宅会社では集客が減ってきたという問題が如実に発生しています。
私は住宅FCの本部などとも連絡を取り合っていますが、某住宅FCの幹部と先日話していたところ「加盟店が軒並み集客に困っている」と漏らすのです。
しかし、極端に小さな工務店になると、場合によっては年間2棟しかやらないような住宅会社もあるでしょう。
その会社は2棟やれば十分に損益分岐点を超えるので、ここ数年間たまたま2棟ずつの成約ができていると「来年もこんな感じでいくだろう」と根拠のない自信を持ってしまうのです。
昨年度1,000組の住宅展示場来場者があった住宅会社が、今年の見込みが800組になったとします。
こうなると社長は深刻にこの数字をとらえるでしょうね。
ところが、毎年4組のお客さんと話をしてそのうち2組と契約するペースできた小規模工務店の場合、世の中の住宅市況は冷え込んでいるのに、またま4組のお客さんと、昨年と同じように商談ができると「集客はいつも通りで全然困っていないよ」と楽観視してしまうのです。
分母が1,000組もあると世の中の景気に敏感に反応して数字に表れるのですが、分母が4組しかないと景気が悪化していても、たまたま4組のお客さんと接点を持てただけかもしれないのです。
ところが、それになかなか気づきにくいのです。
それが冒頭にも書きました「今のところ集客には困っていないから」という社長の言葉になってしまうのです。
今のところ困っていないと言っても、それはたまたま4組のお客さんと接点を持ってただけと考えるほうが無難です。
それよりも、毎年毎年じりじりと下がり続けていく着工数に、もっと目を真剣に向けて欲しいと考えます。
毎年のように4組のお客さんと接点を持って2組と契約していた工務店がその数字にあぐらをかいていたら、翌年から3組としか接点を持てないようになったとしましょう。
すると、毎年2組と契約できていた実績が、ある年は1組としか契約できなかったということが発生します。
年間2棟で採算が取れている工務店が、2年連続で1棟しか取れなかったらどうなるでしょうか。
あっという間に破綻しても不思議ではありません。
「今のところ集客には困っていないから」
コラムをご覧の経営者の皆さんの中にも、これと全く同じような感覚を持っている方もいるのではないでしょうか。
しかし、着工数は着実に減っていくのです。
4組のお客さんを集客し2組と契約できている今だからこそ、次の一手を早急に打ってください。
正常性バイアス
結論はこれだと思います。
ウィキペディアで調べると次のように解説されています。
正常性バイアス(せいじょうせいバイアス、英: Normalcy bias)とは、認知バイアスの一種。
社会心理学、災害心理学などで使用されている心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりするという認知の特性のこと。
自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい[2]、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となる。
「正常化の偏見」、「恒常性バイアス」とも言う。
着工数はどんどん減っていくわけですから、工務店の数がそれに比例して減っていくのは自明の理でしょう。
それなのに「うちは大丈夫だろう」「おそらくなんとかなるよ」こう考えることは、まさに正常性バイアスと言えるのです。
これだけのデータがあらゆるところから出ているのに、工務店経営者から発せられる信じられない言葉。
まさに二極化です。
敏感に反応する工務店はすでに動き出していますが、正常性バイアスから抜け切れない工務店は、ただの一歩も動いていないのです。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
コンサルティング現場ではさまざまなことを行ないますが、今回の50分のビデオではコンサル現場で実際に行っていることも交えながら、3点にポイントをまとめて解説しています。机上の空論ではなく、すべてが 現場で実践してきた内容ですので、是非とも最後までご視聴ください。
今年度はひとり親方の 大工さんから、上は年間2000棟以上こなしているパワービルダーの社員研修まで幅広く行っていますが、規模の大小に関係なく、ある事を徹底的に忠実に実行すれば 受注が伸びていくのです。